長崎五島列島「7弦ライアー」制作の旅~その3~遂に完成! | 矢野絢子オフィシャルブログ「矢野絢子の生態系観察所(仮)」Powered by アメブロ

長崎五島列島「7弦ライアー」制作の旅~その3~遂に完成!

★ライアー制作3日目(最終日)
 師匠に「君は本当によく眠るねえ」と感心されながら、伸びてしまったラーメンを外で立って海を見ながら食べる。昨日気が済むまで彫ったので、今日はその修正を細かくしながらいよいよ最終工程に進む。

●ヤスリがけ


 全体にヤスリをかけて、滑らかにしてゆく。最初は粗目の、仕上げは細かめのヤスリで。細かい葉っぱのデザイン部分のところが難しかったけど、ミクロの気持ちになってかけ続けると、まるで鍾乳洞のツララのようななめらかさを帯びてきて、美しい。


●オイルを塗る


 表面に薄くオイルを塗りこむ。「こんな感じね~」という見本をもとに、師匠の目を離した隙に塗りたくっていたら、「あ!!塗りすぎだよう!もう~これ高いんだよう」と嘆く師匠。仕方ないので、余った分を「椅子の脚と壁にでも塗り込んでおいて~」と言われたので、座っていた椅子の脚と、適当にその辺の壁に擦り込む。ライアーを壁に吊り下げて、乾いたら2度塗り。(2回目はちゃんと薄塗りした!)

●石を準備


 天然石をはめ込みたいなと思ったが持ってきてなかったので、師匠のコレクションの中からきれいな水色の大小の石をふたつ(ソーダライトというらしい)と、私がいつも身につけているペンダントの水晶をいい具合の形に砕くことにする。
 粉々になったら怖いなーと思い「どうやって好きな大きさに砕くの?」と聞くと「知らないよ~、やったことないもん。こないだの人はなんかうまくいってたよ~」と師匠。こわごわ手ぬぐいに水晶を包んで「エイヤ!」と木槌をおろす。一発で大成功!
 石たちのとがった部分をざっくり丸く金属のヤスリで削ってゆく。

 


●石をはめる穴を掘る


 ざっくり石の大きさを記して、穴を掘る。水晶は裏側まで貫通させて光に透けるようにしたかったので、師匠が穴を貫通させてくれる。「入り口は狭く、中は広く掘るんだよ~。あと、水に浸した綿棒で穴の中を膨張させながら掘るんだよ~、穴を掘りすぎちゃだめだよ~」と師匠。「入り口は狭く、中は広くって。一体どうやって掘るんだ?」と思いながら「まあいいか、とりあえず掘ろう」ともう慣れ親しんだノミと彫刻刀で掘る。表面を広げすぎないように深く掘ってゆくのはとても難しかった!「ひねり掘るって感じ?」と師匠にきくと「そうそう、繊維に沿ってね~」と。

●石をはめる


 穴が出来たら、穴→石→布→柔らかい木の棒→木槌の順番で重ねて、優しくトントンと叩き入れてゆく(接着剤を使わないんだ!と驚いた)。水晶の先端はとがっていて割れやすいので注意して、ひと叩きごとに確認しながら慎重に!


 大成功!うまくはまった!あとは柔らかなセンダンの木がしっかり石を包み込んで抱いてくれるから大丈夫。※もし外れた場合は接着剤で止めなおすらしい。
 残りの小さな2つの石は、貫通させずに浅く掘って、同じ様に埋め込んだ。


 なんて素敵!可愛い!


●ブリッジを入れる

 柔らかい銅の棒を曲げて、ブリッジの溝の長さに切る。それを滑らかになるまでヤスリで擦る。※弦が当たる場所なので、念入りに。仕上がったらトントンと溝にはめる。(これは師匠がやってくれる)


●弦を張るためのピンを差し込む

 師匠が綿密に計ったピンの位置にピンを埋め込んでゆく。(これも師匠がやってくれる)

●弦を張る

 ギターの弦を替えたことがある人は簡単に理解できるが、ライアー特有のコツがあるので師匠の張りかたを動画で撮りながら覚える。弦はアコースティックのダダリオを使用。弦の太さや種類、音程については師匠が長年研究してきたデータをもとに、私のライアーにぴったりの弦を選んでくれる。メモメモ。

●チューニングする


 ライアーのチューニングは専用の器具を使ってやる。ものすごく繊細で1ミリでも1音以上変わるので、これは慣れが必要だなと思う。
 私が感じたライアーの最大の魅力が、この「チューニング」だった。周波数(ヘルツ)も音階も、色んな種類があって、ひとつひとつの調音に個性があるところ。好きな調音をその都度チョイスできる所も楽しい!私が普段使ってる楽器「ピアノ」は調律師さんがチューニングしてくれて、大抵「440ヘルツ」とか「441ヘルツ」とかでやってもらうんだけど、ライアーは「432ヘルツ」や「444ヘルツ」でチューニングする。(一般的には432ヘルツでのシュタイナー音階というのを使うそうだ)ライアーが「癒しの楽器」といわれる所以はここにあると思った。あと「平均律」や「純正率」云々の話もすごく素敵だったけど、長くなるので割愛。
 私が使っている携帯のチューニングアプリでは「432ヘルツ」はできなかったので、師匠のチューナーを借りてチューニング。
「シュタイナー音階」432ヘルツで、高音からE/D/B/A/G/E/D。
「今回はまずこれでやって、色々試してみるといいよ、それで私はこの音階を使う!と決めた音階があれば、そのチューニングに最適な弦選びができるから、その時はまた言ってくれたら選んであげるよ」と師匠。


●完成!!!試奏!!!



感動!!!なんと繊細で美しい音色なんだろう!!!音が身体に染み込んでゆく感覚。小さな音ほど、浸透度が高いように感じる。
「オイルが完全に乾くまで1週間はかかるから、その間にまた徐々に音は変化してゆくよ」と師匠。それもまた楽しみである。
隅から隅まで自分の手を入れて作った生まれて初めての楽器!!!もう愛しくて嬉しくて仕方ない!!ピアノに次ぐ、これから広がる私の新しい世界の相棒。

※今回私が制作したのはライアーの中でも一番シンプルな「7弦ライアー」。他にももっと沢山弦のついたライアーがあるので、いつかそれにも挑戦したい。
師匠は車に道具を積んで全国各地をワークショップで回っているので、次回は高知にも呼んで、高知の仲間とみんなで作ろうと思う。もし興味がある方はぜひ挑戦してみてね。詳細はこちらから。鬼塚聖貴-Seiki Onizuka|ライアー制作指導・木工指導・ライアー演奏 (onizukaseiki.com)


 この日たまたま師匠の家にキビナゴ猟師でありギタリストの方が、山ほどの獲れたてのキビナゴを差し入れしてくださり、「完成祝いじゃ~」と3人で刺身にしたり煮たり焼いたりして、新鮮なキビナゴをおなか一杯食べて、みんなで歌ったり演奏したりしながら、幸福な夜。師匠の日本酒は全部空っぽに(笑)。



 5日間の滞在で、初日と最終日は移動日だったので、中3日で制作できた。その間工房の敷地から一歩も出なかったなーと思い、翌朝、荷造りをして旅立つ前に、朝陽に照らされた浜辺に降りてライアー演奏を海に奉納。ありがとうございました!


 空港まで送ってもらう途中「ほら、あれがセンダンだよ」と師匠が教えてくれる。「センダン」は比較的樹齢が短く(長くても500年くらいとかっていってたかな)深い森の中ではなく、川沿いや、その辺にポンと生えている。季節ごとに花や実をたわわにつける。調べると「高知市の木」でもあるそうな。高知のセンダンを探して、このライアーを奉納しようとおもう。五島のセンダンにご挨拶して、空港で五島うどん、椿油や椿茶、かんころ餅などを土産に買う。


 鬼塚師匠、本当に5日間最高に面白い日々でした!ありがとうございました!このライアーを世界中で響かせてくるね!と告げて、お別れ。

 


 福岡行きの飛行機の窓から、くっきりと機体の影が虹色の丸い光に包まれているのを見て「うん、幸先良好」と思う。この先の私の世界を思うとワクワクが止まらないなーと思いながら爆睡。
 やー、楽しい日々だった!