長崎五島列島「7弦ライアー」制作の旅~その2~ | 矢野絢子オフィシャルブログ「矢野絢子の生態系観察所(仮)」Powered by アメブロ

長崎五島列島「7弦ライアー」制作の旅~その2~

★ライアー制作2日目
 

 普段しない動作をあれだけの長時間やると、腱鞘炎か筋肉痛になるのではと心配したが、師匠が「手首にこれを塗って寝てね」という植物のクリームをつけて寝たら、全く痛くもかゆくもなくて感動。

 快晴で春の様にうららかな日だったので、外に机を出して海を見ながらひたすら彫り作業。天国!
 日光によるひび割れを防ぐために、板の横側をマスキングテープをグルリと貼る。師匠はひたすら工房の修繕作業。時々私の所へ様子を見に来ては、「研ぐね~」と言って、刃物を研いでくれたり、板を叩いて、音の響きを確認して「ここはもう少し深く、ここはもう彫らない方がいいよー」とアドバイスをくれる。





●ピンの位置とブリッジの位置を決める


 これは師匠が計って決めて、鉛筆で印をつけてくれ、ピンの位置には借り穴を、ブリッジの所は削ってくれる。それに合わせて内側をどの位置までどの深さで彫るか調整。

●とにかく彫る。


 板の薄い所から低音が、厚く硬いところから高音が、よく響くらしい。
 中央に向けての薄いところと厚いところの差はなめらかに。カクカクしないように。
 細かいデザインの所は、彫りながらベリっと取れてしまったりして難しい。
師匠に言うと「センダンはやわらかいから彫りやすいけど、繊維がはっきりしてるからね、あまり深入りしないように。繊細なデザインというより、おおらかなデザインをゴールにした方がいいよ」とのこと。「木の繊維の流れに沿って彫ること。鱗を逆なでするんじゃなくて、鱗に沿って彫るとなめらかな木肌が現れるよ」とも。
 「木の流れを見るんだよ、これが一番大事だよ」と何時間も彫り続けてから師匠が教えてくれた。
「はよ言うてや」と思いながらも、確かに、繊維の流れを意識してみると、センダンはあちこちに向けて流れていて、彫りながら「ん?」と引っ掛かりを感じたら、逆側から彫ると大抵すんなりゆく。それが面白い。
 細かい部分は彫刻刀を使う。(彫刻刀なんて小学生ぶり!)


●割れた箇所の修正


 マステの予防もむなしく、お天道様の力で、板が2か所ひび割れてしまったので、師匠が修繕してくれる。なんかリボン形の可愛い小さな木辺を、ひび割れの途中にばんそうこうみたいに埋める。かわいい。これ以上割れたらこわいので、工房の中に移動して彫る。


●全体を丸く削る


 デザインした内側だけでなく、ピンの周り、側面にも裏側にも全て刃物を入れてゆく。彫ってない部分、平らな部分がどこにもないように。そうして全体の丸みをデザインしてゆく。
 細かな凹凸が全体にあることで、より繊細な音が響くらしい。側面を彫るのが難しかった!


 鍋に五島のうどんを入れて食べる。細麺でコシが強くて美味しい!外に机を出して、満天の星空を見ながら食べる。遥か海の彼方に不思議な平べったい光が浮かんでいて「ユーフォーかも!」などとはしゃぎながら、私は夕べワインを呑みほしたので、師匠の日本酒を呑む。
 「今夜は気が済むまで彫る!」と宣言をすると「おお~!俺は寝るね!」と師匠はさっさと寝てしまった。静かな夜。海の音と風の音、森の木々の音を聴きながら、夢中で彫り続ける。結局10時間以上彫っていた。手首と腰と肩にもクリームを塗って就寝。またしても10時間も寝てしまった。