さよなら歌小屋の2階
2018年12月22日、高知の劇場歌小屋の2階での最後のライヴを終えた。
結論から言うと、さいこうに満ち足りた時間だった。
12月やのに昼からぬくうてポカポカで、空には満ちる直前の月がボカーン!
お、景気がえいねえと眺めてからの本番。
満席の客席には大切な歌仲間、いつもの顔ぶれ、懐かしい顔、全国から来てくれた顔、顔、顔。
12月テーマの「クロスロード」大好きな歌たち22曲を、最後まで丁寧に演奏して歌えた。
照れくさいけど、身体中から「ありがとうございました」が自然にあふれて、
「最後だから」という気負いなく、ひとつひとつの歌たちの中にちゃんと私はいた。
かなしみも、さみしさも、私の中には欠片もなく、むしろ清々しいくらいだったが、
ふと、あ、このピアノ(歌小屋の)を弾くのはこれで最後なんだ
ということに気が付いたとき、少しだけ切なかった。
思い返せばこのピアノは、生ピアノにあこがれ続けていた17歳の私が初めて手に入れた自分のピアノで、
19歳で歌小屋の2階を立ち上げたとき一緒に歌小屋入りして、それからずっとこのステージで
私の音楽を一緒に培ってきた相方だった。
今まで、何度も弦を切ったり、ハンマーを壊したり、足で弾いたり、肘で弾いたり、
撮影でロウソク100個くらい並べられたり、
相当に私に虐げられながらも、どんな時でも一番近くで支えてくれたのは、確かにこのピアノ。
そう思い返しながら、ピアノへのありがとうを込めて弾いた。
そのせいなのか、今まで聞いたことがないくらいの素敵な音で返してくれた。
あまりにも強い結びつきだったので、
これからここでこのピアノを弾く人が、ちゃんとその人の音を気持ちよく出せるように、
私の想いをぜんぶゼロにする魔法をかけて終えた。最後の曲は「ナイルの一滴」。
最後を見届けてくれたみんなからも、そこに居なかった仲間からも、
勝手にエールをもらってるつもりでやりました。
22年間ありがとうございました。
ほんとうにほんとうに、さようなら。
ミュージシャン矢野絢子にとっての歌小屋の2階。
さて、これからの矢野絢子、あたらしい幕開けです。
さらに、いい歌、歌うき、覚悟しちょきよ!