8月下旬、創業1615年山形県十四代高木酒造訪問。
新しい蔵を建設され、現在もさらに新たな高みの為の工事中…貴重なお時間をいただき、高木顕統15代目蔵元杜氏に蔵をご案内いただきました。
ご一緒させていただいたのは、福岡県三井の寿の井上宰継蔵元と島根県出雲富士の今岡稔晶杜氏です。新幹線の中でも、酒造りや日本酒についての疑問になんでも応えてくださいました。つくりのプロとご一緒させていただける幸せも噛み締めながら山形へ。
山形からさらに電車で1時間くらい先にある村山市の風光明媚な環境の中、大きな青空に真っすぐにそびえたつ壮大な敷地に、歴史的な風情に加え、未来への進化も醸し出す高木酒造がありました。
つくりのお蔵では、スーツ姿の正装でいらした井上さんと今岡さんが、高木さんに投げかける一挙手一投足に、半端ない真摯さと熱量が伝わってきました。私は一層、心が燃え、でも、なるべく頭は冷静に。
驚きも発見も、本当に沢山あったのですが、高木さんの理想をすべて具現化していらっしゃって、例えば、麹室。もろみは①初添え→②踊り→③仲添え→④留め添え→⑤完成となりますが、それぞれの工程で使うための麹用の部屋や麹蓋が別々に存在しているではありませんか。(←ここまで緻密な工程や姿勢を、初めて観ました)高木さんの両手で持ちやすい重さに改良した麹蓋や、日本酒のもとになる酒母(しゅぼ)は古い蔵で作り、わざわざ新しい蔵に運んできて使うなど、理想とする日本酒の為の、ありとあらゆる究極の姿勢がカタチになっていました。
そして、床も壁も窓も高い天井も、ピッカピカに光っていました。廊下も部屋の角や隅の方でさえ、とにかく美しいのです。つくりをしていない時期でも、部屋をカビさせないように温度や湿度の調整を徹底しているのだそうです。ラベル張り機材の工具の整理整頓、研究室の棚に並べられているメスシリンダーの向き、ビーカーの一個一個のそろえ方までデザインのようにこのうえなく美しい。
見学中、蔵内を移動しながら各部屋でスリッパを脱いだり、履いたりします。スリッパを脱いで部屋に入り、見学後、その扉を開けて履こうとすると、そのスリッパはいつのまにか綺麗に整理整頓されています。蔵見学の際には、蔵人さんが後ろからこっそり着いてきて、スリッパの向きをそろえてくださるというご配慮も。
白壁、格子戸に障子などの趣ある江戸建築の中には、総大理石の椅子テーブルや絵画、クラシカルな置物やお人形など数々の貴重品などが飾られていました。その昔、ニュース23の筑紫キャスターと草野キャスターが、この伝統建物をスタジオにしてニュース特番を放送されていたこともあるそうです。
そもそもは高木酒造400周年パーティーの司会がご縁で、巡り巡ってこのような機会をいただき、感謝しかありません…ひとつひとつ、一瞬一瞬のこだわりを、どんなときも精一杯つづけていく精神力にも感動しました。
私が専門的な会話についていけないと一瞬でも思っていると、高木さんはすぐに察して言葉を変えて再度、説明してくださいます。知識不足が恥ずかしく、再説明や会話の流れを変えてしまうことが申し訳なかったです。ただ、そういう人の心模様などに対しても、とても繊細にキャッチしてくだいます。
夜は、地鶏割烹かわしまへ。十四代スペシャルと、一皿一皿の旬のこの日限りのオリジナルコースに舌鼓を打ちつつ、素晴らしいおもてなしでした。会食には、奥様の若菜さんも駆けつけてくださり、山形で久しぶりにゆっくり語ることができたのも嬉しかったです。
十四代を身体に染み込ませるたびに、幸せしか感じませんでした。秘められたお話に感動して、涙を流してしまう場面、お腹をかかえて大笑いする場面…心がどんどん澄みきっていくような楽しいひとときとなりました。
この度、得た経験は私にとって大きな財産です。
心よりありがとうございました‼️