小学2年の時かな?同じクラスに土井君(仮名)って男の子がいたんです。
ちょっと同年代より頭が劣っている子でした。
なかよし学級に入らなかったのは両親の希望。
同じ世代の子と触れ合わせてあげたいという理由でした。
土井君は気に入らない事があるとツバを吐き、廊下でジタバタ暴れるもんだから同級生からはからかわれたりバカにされたりイラつかれたりしてました。
そんな土井君なのだけど僕は土井君が嫌いではなくむしろ好きでした。関われと言われたら嫌なんですよ。でも好きみたいな。
遠くから土井君を観察するのが好きでした。
土井君の荷物にはいつも綺麗な文字で名前が書かれていて、その文字を見る度に「両親から大切にされてるんだなぁ」って思いました小学2年のくせに。
この世で生活するには辛いものを背負っているんだけど、そんなの関係ねぇって感じに自由に見えて羨ましかったです。
土井君が転校する最後の日に土井君のお母さんが来てました。
先生が土井君が今日で最後だからみんなでお別れを言いましょうって言ったらクラス中のみんなが集まって寄せ書きしたり声かけたり、みんな最後だから優しくしてました。
当の土井君は相変わらず無表情で、でも不思議なものを見るような目をしてました。
土井君のお母さんは横で泣いていて、僕はそれをぼんやり見てました。
あれからすごく長い年月が流れましたが時々思い出していた土井君のこと。
元気かなあとか、就職出来たのかなぁとかね。
1年に数回は思い出してたんだけど所在はもう分かりませんでした。
それが今日、突然の兄からのLINEで発覚。
「土井君って覚えてる?さっき遠出して電気屋行ったら土井君とお父さんがいた。土井君、顔が変わらなくてすぐ分かったよ。小学生のまま変わらない人 初めて見たわ」
顔が変わらないのはそういう障害を持っているからなんだけど、僕はそのLINE見た時ちょっと泣きそうになりました。
ずっと気になっていた土井君の所在が分かり、元気でいて良かったという安堵。
たまたま偶然、僕の兄が見つけてくれた奇跡。なんか超嬉しい。
土井君はお父さんといた。僕と同級生だからいい歳なんだけど、お父さんは今も土井君を1人に出来ない。だから心配して一緒にいる。そして今もご両親は土井君を大切にしてる。
心配って愛情です。
だから、土井君はたくさん愛されてきたんだなって思った。
小学生だったあの頃から今に至るまでたくさん心配されてきたんだな。
土井君も「親に心配かけたくない」なんて気を使うことはせず、親を心配させてきたんだな。
愛を出すほうも愛を受け取るほうも、ただただ愛を流し、ただただ愛を受け取る。
こんな単純で自然な流れが存在している事が僕はとても嬉しいのです。