Part.74 【ウェイウェイ X シャンシャン 番外5】 ウェイウェイ X シャンシャン 連合番外5
ツォンツォンはインターネットを禁止された。
ゲームの中でツォンツォンの可愛い小さな姿を見られなくなって、シャンシャンはいやがうえにも寂しさを感じる――今では私が死んでも、誰も引っ張り起こしてくれない。ウェイウェイは攻撃キャラだから人を起こす能力がない。シャオ・ナイは私みたいに無能な助っ人なんか起こす気にもならない。フォン・トンはと言うと……うーん、私が死んだ後に笑みを漏らす、そういう類いの人間よ。そして、ついでに付け加えるはず――「また死んじまったのか?じゃあ、先にベッドに入って暖かい布団にもぐり込んでろ」 そんな恥知らず野郎……
つまり!ツォンツォンがいないというのに、ゲームをしてどんな意味があるの?
でも、オンラインゲームでは会えないけど、実物に会うことはできる!そこでシャンシャンは、ツォンツォン一家に熱烈な招待状を送った。
シャオ・ナイの会社は、ちょうど風騰科学技術と新たな提携を結んでプロジェクトを繰り広げようとしている真っ最中で、当然双方のトップが相互訪問をしなければならないと考えていた。そこで、シャオ・ナイは喜んで招待に応じ、妻と子供を連れて再びS市にやって来ることとなった。
シュエ・シャンシャンは大興奮して、ウェイウェイ一家を迎える準備を始める。
まず第一に、何を食べるか。
「四川料理」 フォン・トンはソファーに座ったまま、金融財政誌をひっくり返して、頭も上げず即断即決する。
ぐるぐる回っていたシャンシャンが止まる。 「皆さん辛いものが好きなの?」
「ああ」 フォン・トンはクールに言う。 「パートナーについてリサーチを進めた結果、うん、とりわけシャオ代表の好物だ」
「フフフ、じゃあいいわ。ひとまず3日間、四川料理にしましょう。それも激辛ね!」 シャンシャンは勇ましく手を叩いて決定を示す。
次に、どんなイベントを準備しようか。
「俺はこいつの段取りをつける」 フォン・トンは目を細めて自分が得意とするスポーツをリストアップした。水泳、テニス、ビリヤード……
オンラインゲームで敵わないのに、まさかリアルのPKでも負けるわけにいくか!
フォン社長は心の中で失笑すると、寝刃を合わす。
最後に、且つ最も肝心な問題だ。シャンシャンはフォン・トンの足元で絨毯の上を這い這いしている2人の子供を心配そうに見つめ、リボンをつけているほうの子を無造作につかまえる。
「ツォンシンがツォンツォンと会う時、どんな格好がいいと思う?」
フォン家の双子の兄妹、名前はそれぞれフォン・ツォンリュエ(封從略)とフォン・ツォンシン(封從星)といい、目下のところまだ爬虫類に属している段階だ。
シャンシャンはツォンツォンへ向けた計略を決して捨ててはいない。初めてのお見合い……違う、顔合わせって、すごく重要だもん。娘はまだ直立歩行できないけど、だけど……そんなことは重要ではない……
たとえ今はまだ爬虫類だとしても、この先10年間ツォンツォンに深い印象を残しておかねばならない!
そこで客を迎える日、シャンシャンは朝早くから起きて娘をいじくり回し始める。
兎のコスチューム?媚びてるのがあからさますぎるかしら?
虎のコスチューム?ダメダメ。まるでこの先、雌虎になるって示唆しているみたいだもの。
ならば、亀のコスチューム?やや俗人の域を超越している感が……
終いにはフォン・トンが見るに見かねて、まだ準備半ばの可哀想な愛娘を連れ去り、適当に小さなスカートを着せてやると、手を引いて玄関を出て行った。
パートナーへの厚遇ぶりを示そうと、今回フォン・トンは自ら運転して空港まで迎えに来た。しかし、なんと空気の読めない飛行機が遅れて着くというので、結局フォン・トンは妻や子供といっしょに喫茶店で待たざるを得ない。
シャンシャンはミルクティーを両手で持ち、郷愁に駆られてこの喫茶店を眺める。
「思い出したわ。ある時、私はここであなたを待ってたんだけど、眠っちゃって。目が覚めたら、あなたが向かい側でコーヒーを飲んでたのよね」
フォン・トンは今、向かい側でコーヒーを飲んでいる。その姿は今以って切れ者でエレガントで、数年前と比べても遜色なく、話していない時の彼はもっと威厳が漂って見える……もしも膝の上に指しゃぶりしている丸々と太った子供が座っていなければの話だが……
「うん」 フォン・トンがコーヒーカップを置き、手を少しだけ持ち上げると、白いワイシャツの袖口に留めた黒い宝石のカフスボタンがチラリと見える。 「君のカフスボタンだ。今日、ちょうどこいつを使ってた」
シャンシャンは彼に向かってあかんべえをした。
フォン・トンはついでに腕時計に目をやり、何か言おうとするが、突然顔色が変わる。頭を下げると、愛息子が指を噛んで無邪気な顔で彼を見ている。
2時間後、ついにシャオ・ナイ一家がたいへん遅れてやって来た。
「フォン社長」 シャオ・ナイは相変わらず洗練されており、片手に子供1人抱いて、友情の手を伸ばした。
「シャオ代表」 フォン・トンの表情は硬く、手に子供を1人引き連れて、礼儀正しく握り返す。
もう一方では、シャンシャンが一目散にツォンツォンに駆け寄っていた。 「ツォンツォン」
「シャンシャンおばちゃん」 ツォンツォンは礼儀正しく呼ぶ。
「ツォンツォンはまだおばちゃんのこと、覚えてる?」 いつもオンラインゲームではいっしょにプレイしているとは言え、実際にはかなり長期間 顔を合わせていない。
「覚えてるよ」 小さな顔が真剣にうなずく。
シャンシャンはたちまち萌え萌えになってしまった。 「さあさあ、いらっしゃい。おばちゃんと帰りましょ」
シャンシャンは迷うことなく自分の娘をウェイウェイに押しつけ、ツォンツォンの小さな手をつないで歩く。
家に帰る道中、フォン社長が運転して、シャオ・ナイは助手席に座る。ウェイウェイとシャンシャンは後ろに座っている。
ウェイウェイが声をひそめてシャンシャンに訊く。 「お宅のボス、どうかしたの?ずっと様子がおかしいみたいだけど?」
シャンシャンがくすくす笑う。 「リュエリュエのオムツがずれてたもんだから、息子をトイレに連れて行って替えようとしたんだけど、結果はリュエリュエがパパの体中におしっこをかけて……」
ウェイウェイは 「ふっ」 と一笑した。
前にいるフォン運転手が間髪入れず1つ咳をした。
シャンシャンは他人の不幸を喜んでニヤニヤしていたが一瞬で真顔になり、自分の夫の面目を取り戻すため体を真っ直ぐに起こすと、ウェイウェイにケチをつけるふりをする。 「何がおかしいのよ。まさか、お宅の大神は僕たちにおしっこをかけられたことがないとでも?」
ウェイウェイはたいへん残念そうに言う。 「ないわ」
シャンシャンはかなりショックを受ける。 「ウソ、どうやって替えてるの!」
その感服したような口ぶりはいったい何なんだ?もし運転していなかったら、フォン・トンは自分の女房を引っ捕まえて、こんこんと説教したい気分だった。隣に座っているシャオ・ナイは彼をチラリと見やると、微かに笑って後部座席へ言う。 「ウェイウェイ、程々にしとけ」
「まっ!」 ウェイウェイはすかさず素直に言うことを聞く。
車内にひとしきりの静寂が訪れた後、フォン・トンがおもむろに口を開く。 「やはりシャオ代表は技術者というだけあって、オムツ交換にも長けているんだね」
「それはたいへん光栄です」 シャオ・ナイは淡々と言う。 「僕はフォン社長より若いですが、父親になったのは数年早かったんですから、どうしたって一日の長がありますよ」
フォン・トン 「……」
ウェイウェイ あなたが程々にしとけって言ったんじゃなかったっけ……
ウェイウェイ家の大神の言葉って、どうしていつも人にぐうの音も出なくさせるの……
シャンシャンは同情して話題を変え、嬉しそうにウェイウェイと今後の計画について話し始める。
「フォン・トンがあなたたちは辛いものがお好きだって言うから、私、四川料理専門のシェフを特別に招いたのよ。これから数日、四川料理を堪能しましょうね。新感覚の辛さを保証するわ!」
ウェイウェイ 「……えっ?」
……しかし、大神は辛いものをまったく食べることができない。
シャオ・ナイが咳をした。 「フォン社長?」
フォン社長はあたふたせず答える。 「シャオ代表、遠慮する必要はない。ホストとしての務めを最大限果たすつもりなんだから。食後、少し休憩して、その後一局いかがかな?まだ時間があれば、テニスに興じるもよし、あるいは我が家のプールも悪くないぞ」
シャオ・ナイは直ちに理解し、微笑んだ。 「フォン社長の気が乗ってらっしゃるなら、僕ももちろんお供しますよ」
2人の舌鋒の鋭さを感じ取っているウェイウェイは言葉がまったく出ない。感じ取れないシャンシャンは非常に困惑する。 「午後にテニスをするってことは、コートに行かなきゃならないんでしょ。子供たちはどうしましょ。誰かシッターさんを探さなくちゃ」
「それもそうね」 ウェイウェイが言葉を継ぐ。 「うちの子は2人とも自分のことは自分でできるようになったけど、お宅のこの2人は……」
「人の手を煩わせる必要はないでしょう」 シャオ・ナイが声を大きくする。 「ツォンツォン」
母親とシャンシャンおばさんの間に座り、弟の哺乳瓶を握っていたツォンツォンが呼ばれて頭を上げ、父親に目を向ける。
彼の父親が穏やかに言いつける。 「これから数日、おじさん家のおチビちゃんたちの面倒を見てやりなさい」
シュエ・シャンシャンは自分の世界観、人生観、価値観の三観すべてが崩壊するのを感じた。
「本当にそれでも大丈夫なの?」
コートでは、シャンシャンがテニスラケットを持って、芝生の上に敷いた美しいレジャーシートを見る。レジャーシートの上には赤ん坊2人がきちんと並べられており、そのそばにベビー用品が様々置いてある。
哺乳瓶、粉ミルク、オムツ等等等等……
「本当に全部ツォンツォンに任せて、私たちは遊び呆けるの?」
「あの子は6歳になった」 そう言ったのはもちろん大神だ。そして、ラケットを持って立ち去った。
ウェイウェイがツォンツォンの頭を撫でた。 「ママはすぐに戻って来るから」
ツォンツォンはこくんこくんとうなずく。
フォン・トンはツォンツォンをちらっと見やり、突然安堵したようにコートへ向かう。 「シャンシャン、行くぞ」
えっ?あの人たち、本当に行っちゃうんだ!
シャンシャンは振り返りもしない3人を見る。ウェイウェイ、あなたまで大神について行って、本当にいいの?
「ツォンツォン、本当にかまわない?」
ツォンツォンはレジャーシートの上にいる大小3人の赤ん坊をちょっと見た。丸々と太った瓜二つの赤ん坊が大きな目をぱちぱちさせて彼を見ている。さらに隣で哺乳瓶を握り不機嫌そうにしている弟のユエリャンを見る。突然、不安の種が芽吹く――いっぺんに3人監督しなきゃなんないのか……
彼はつらい思いでシャンシャンに向かって小さな手を振る。 「おばちゃん、いってらっしゃい」
「……じゃあね」
シャンシャンは断腸の思いでラケットを引きずって立ち去った。
5日後、数ラウンドのPKの結果、フォン・トンとシャオ・ナイの戦況は以下の通り。
テニスのシングルス、ボスが勝った。妻と組んだダブルス、ボスの惨敗。
水泳……レース前、次のような会話が交わされた。
シャオ・ナイ 「フォン社長、この試合でもしも僕が勝ったら、明日の料理を変更してもいいでしょうか?」
フォン・トン 「気の毒だが、シャオ代表は変えられないと思うがね」
数分後、シャオ・ナイがプールから上がって来る。タオルを手に取り、体の水滴を拭きながら端的に言う。 「広東料理」
バスケットボール、大神が勝った。
ゴルフ、ボスが勝った。
囲碁、痛み分け。
妻と組んだテニスで大敗したという惨たんたる事実はさておき、総じて言えば、フォン・トンの感触としてやはり自分のほうがより多く勝った気がする。そして6日目、ビジネスの話をする暇が全くなかったフォン社長は満足と不満足半々の思いを胸に、シャオ・ナイ一家を空港まで見送った。
一家4人が保安検査場へ入って行く後ろ姿を見ながら、フォン・トンが突然口を開く。
「君の考えは悪くないな」
シャンシャンはわけがわからず彼を見る。 「どんな考え?」
「彼らを婿入りさせること。俺の見立てでは、シャオ・ミンツォンのほうだ」 フォン・トンは自らたどり着いた結論にこの上なく満足する。
作者のメッセージ : 大ボスは大神家のツォンツォンを気に入って娘婿にしようとしていますが、作者はすでにイメージを膨らませています。かりに20年後の次世代のストーリーを書くとしたら、当然タイトルは 《明月從星》 となるでしょう→_→