《微微一笑很傾城》 第46章 「満点」の夏休み | Silent Separation

Silent Separation

作者:顧漫

中国小説「何以笙箫默」(マイ・サンシャイン)の
日本語解釈文です。
ドラマとは若干異なっています。

Part 46 「満点」の夏休み


2日後、北京空港では反感を買う一幕が見られた。見目麗しく妖艶なスタイルの美女がふうふう息を切らして(これは衆人の勝手な解釈) 大きなトランクを引っ張りながら前へと進むのに対し、彼女の隣りでは垢抜けてすらっとした男が手ぶらでゆっくり歩いている。

シャオ・ナイは数限りない軽蔑の視線にさらされた。

しかし、シャオ・ナイはどんな人間か。我関せずとしたその態度が、牛馬の如く働かされている大勢の男たちの嫉妬心に火をつけた。

ウェイウェイは嬉しそうに飛行機の座席に座って、意外と美味しい機内食を食べている。

しかし、やはりこの世の中、只で食べられる昼食なんかないのだ。

飛行機がまもなく西安空港に着陸しようとする頃、シャオ・ナイは新聞を折り畳みながら無頓着に告げる。 「そうだ。うちの親も西安にいるんだけど、こっちに来たついでに会ってみるかい?」

ウェイウェイが目をぱちくり、重ねてぱちくりさせる……

ウェイウェイはこれまで飛行機に酔ったことなどなかったのに、ほとんど降下しきったこの瞬間にも関わらず、めまいを感じ始めた。

ウェイウェイは恐怖に駆られる中で、数日間を過ごした。

西安の絶品料理も彼女を救えないし、華山の絶景も彼女を救えない。大雁塔の壮観さも彼女を救えなかった。あらゆる恐怖の原因は最終日に発する。その日に大神の両親と会うことになっているせいだ。

「ご両親がどうして私をご存知なの?」 ウェイウェイはストレスを感じる。

「同僚が教えたらしい」

「……何故うちの学校は先生までそんなにゴシップ好きなのかしらね」 ウェイウェイはさらにストレスを感じる。

「打ち身?」

「……T__T」

万策尽きた。大神の寒いジョークすら彼女を救うことができない。

シャオ・ナイの両親は西安のとある県で全国民が注目する巨大プロジェクトと称される発掘作業中だった。どうにか週末だけ西安に戻って休暇を取れるため、それまでは仮にウェイウェイとシャオ・ナイがその県に遊びに行ったとしても、彼らには会えない。

しかし、早い時期に会うに越したことはないT___T

顔合わせの前日にはウェイウェイの恐怖心がピークに達した。そのため衝動的な行動に走り、大神を引っ張って洋服を買いに行く。

実を言うと、ウェイウェイはB市に戻る前、 「インターンはオフィシャルな場にいるからフォーマルな服装が不可欠」と吹っかけて、半ば強引に母親からスカート数枚を奪い取って来ていた。しかし、これらのスカートは西安に持って来ていない。

単なる観光旅行だと思い、持参した洋服は七分丈パンツにTシャツといった比較的ラフなものばかりだった。そんな恰好で大神の両親に会いに行ったら、あまりにもカジュアルすぎるだろう。

「お母さんはどんな服がお好きなの?」

「何で父親について訊かない?」

「……」

ウェイウェイは答える気にもならず、彼をじろりと見る。当然、姑の好みの方が重要に決まってるでしょ!

違う違う、姑ではない……ウェイウェイは慌てて心の中で自ら訂正するが、すぐさま気付く。これだって姑に会うことと大差ない……

どうして20才そこそこの若い身空で、舅や姑と会う気分を味わわなければなければならないの?T___T

「こんなのはどう?」

「地味だな」 疑いの目を向けられて、誰かさんは付け加える。 「母さんの視点に立てばね」

……

「これは?」

「シンプルすぎる」

……

「これは?」

頭を振る……

「じゃあ、これは?」

「……母さんが好きそうだ」

ウェイウェイは顔を俯けて手にしたスカートを見る。彼女が無作為に取ったもので、実際に見ると、このスカートには少なくとも百匹の蝶がいる……噂によれば、大神のお母さんのセンスは名声や物欲にとらわれず、知識もなかなかのものだというのに、こんな洋服が好きなんてあり得ない。

「また私をからかってるのね= =」

シャオ・ナイが笑った。 「突然思い出したよ。俺と初めて会った時も、こんな風に服を買ったんじゃないか?」

「……いいえ、適当に麻袋を羽織って行ったのよ= =」

ウェイウェイはもう少しで重々しい麻袋色のスカートを買うところだったが、幸いにもシャオ・ナイが止めた。再三にわたり、自分の両親は考古学関連の仕事に従事しているけれど、決して土に似た色が好きなわけではないと断言する。だが結局、ウェイウェイはとても保守的なベージュ色のワンピースを着て、大神の両親を訪ねて行った。

しかし、大神も今回に限ってはからかっていなかった。

 


翌日、大神の両親と一緒に食事をしている時、大神の母親がこの上なく優しくウェイウェイに強調して言う。 「若い娘さんがそんな質素な恰好をする必要ないのよ」

……大神のお母さんが身に着けているものは、明らかにとてもシンプルでエレガントだ。さすが美学者だけのことはある= =

しかし、大神の母親の人並み優れた美学以上に、殊更ウェイウェイにとって予想外だったことは、彼らが思いのほか非常に優しく穏やかだということ。言われているような独立独歩の激しい気性では決してない。本当にただ気軽に顔を合わせて食事をするだけなのだ。何ひとつ彼女に尋ねたりしないし、むしろ彼らが遺跡を発掘している最中にあった面白い出来事をしきりにしゃべっている。

ウェイウェイは不思議に感じた。2人してこんなにも性格の良い父母からどうやって大神みたいな息子が生まれたのか……

しかし、彼女は想像もしなかったが、親というものは遂に息子の心を動かした対象に向けて不満顔を見せることだってできるのだ。

長い時間が経った後、ウェイウェイは大神の母親であるリン教授が何故自分のことをここまで気に入ってくれたのか、ようやく知った。

聞くところによると、大神と彼女が行動を共にするようになって日を置かず、リン教授は同僚から息子が恋愛中だと知らされた。相手の女子学生もコンピューター学部にいると聞いたので、リン教授は隣接するコンピューター学部主任の所へ行き、ウェイウェイの情報を入手した。

A大コンピューター学部の主任は有能な女性であり、学部の管理運営を一手に引き受けている。しかし、ひとつ問題があり、風紀に関してかなり手厳しい。しばしば度が過ぎて、A大生たちは‘絶滅師匠’というニックネームを彼女に贈った。

しかし、リン教授が尋ねたところ、学部主任は思いもかけずウェイウェイをしきりに褒めちぎる。リン教授は喜ぶ反面、心配にもなる。喜ばしい点は彼女が悪い娘ではないとはっきりしたこと。心配な点は絶滅師匠でさえ味方につけるなんて、まさか息子の彼女って案外‘絶滅娘’とか?

今、とても自然体で質素な装いであるにも関わらず、心憎い着こなしを見せるウェイウェイに対して、リン教授は予想以上に喜び、安心し、満足した。

西安のごく普通のレストランでは、ウェイウェイと大神の両親との初めての顔合わせが徐々に終わりに近づいていた。しかし、すっかりリラックスしきっていたウェイウェイ、最後の最後に思い知る——リン教授、あなたはやっぱりシャオ・ナイの母親です。

彼らはどちらとも最後の瞬間に肝心な話をすることに長けていた——リン教授はニコニコして言う。 「あなたたち、明日の飛行機なんでしょ。私たちもそうなんだけど、ちょうどいいから一緒に帰りましょ」

というわけで、ウェイウェイは大神の父母と一緒に飛行機に乗って帰る。何故なら間もなく授業が始まるため、彼らも学校に戻って講義計画を立てなくてはならないから。

もっと悲劇的なのは、機内に同校の教授が他にも何人かおり、道中ずっと慈しみに溢れた目で彼女を観察していること……

何はともあれ、「駆け落ち」で始まり、「舅姑との面会」で終わったウェイウェイの夏休みインターンシップは、これ以上ないというくらい満点だった。後に夏休みのインターンシップレポートでもらう「優秀」という2文字に文句なく相応しい。

 


B市へ戻って早々に学校が始まった。最初の一週間はバタバタと多忙を極めた後、やっと時間が空いたウェイウェイが夢游江湖にログインすると大量のメッセージを受信した。

最初は8月末、雷神妮妮。

「私が何日か来ないうちにね、小雨青青がなんとギルドから脱退したんだよ。ハハハ、理由はわかんないけど、気分がいいや」

同じ日、数時間後。

「チッ、何があったかわかったわ。何やってんだかね。あの子ってさ、マジうざい。道理で小雨妖妖も何も言えないはずよ。今じゃギルドの人がみんな彼女に愛想を尽かしてるもん」

「何で微微も集まりに参加したの?みんなあなたが絶世の美女だと言ってるんだけど。その上、あなたの彼氏も半端なくイケメンだったってO(∩_∩)O~すごく見てみたいな!」

次のメッセージは9月上旬、刻みタバコ。

「君はうちの学校の生徒じゃないんだろ?僕さ、聞きに行ったんだ。ハハ、僕が言ったじゃん。仮にも君ほどの超ド級の美人がいるのに、どうして僕が知らないのかって」

「べっぴんさん、心配しなくていい。君のために必ず秘密は守るから」

次の数件は再び雷神妮妮からのもので、送信日時は2日前。

「微微、どういうこと。ギルドの中にあなたが大学生だと偽ってるって言う人がいるの」

「あなたがX大生のふりをしてるって言うのよ。刻みタバコは自分と同じ学校じゃないって言ってるし、どうなってるの。何か思い違いしてるんだよね。微微、私はあなたを信じるわ」

ウェイウェイは刻みタバコから来ていた誓いのメッセージを思い出し、絶句した。

雷神妮妮はこの時点でもオンライン中で、ウェイウェイがアクセスしたと見るやいなや、メッセージを送って来る。

「微微、私 もう我慢できない。ギルドのことよ。メチャメチャムカつく」

「どうしたの?」

「真水と小雨妖妖のことだってば。毎日夫婦で行き来し合って、やれマウントだ、やれ洋服だと送ってるんだもん。自分たちのラブラブぶりを周りが知らないんじゃないかって気にしてるのかも。今までもムカついたけど、これほどひどくなかったよね」

雷神妮妮の愚痴はとどまる所を知らない。 「その上、小雨妖妖はお勉強のできる大学に在学中なんて言うんだから。何なのさ。うちの学校だって彼女のとこよりまあまあいい方だけど、あんな風に自慢したりしないのに」

雷神妮妮がひとしきり愚痴った後。

「微微……」

「えっ?」

「あなたってホントに絶世の美女なの?彼女たちが言うには、彼氏はこの世のものじゃないくらいイケメンだって……」

大神は確かにわりと非人間的……

ウェイウェイは囧囧照れくさくて、‘恥ずかしい’の顔文字を送る。すると雷神妮妮も囧当惑したが、その幸せオーラから突然ピンと閃いて言う。 「ああ!もしかして一笑奈何が彼氏だったりして!」

ウェイウェイ 「……」

これには何ら認め難い点はなく、ウェイウェイは言う。 「そうよ^_^」

「わあああああああああああああああああああ!」 雷神妮妮が発狂した。 「あなたたち、いつ始めたの!!ネットからリアルに発展したってこと?あああ、まさか一笑奈何がリアルでもそんな男前だとは思ってもみなかった!!!」

メッセージが機関銃並みに送信されて、ウェイウェイは「次のページ」をクリックするだけでも手が痛かった。彼女の好奇心を満たすために、話せることを選り抜いて答えると、雷神妮妮はようやく落ち着いた。

雷神妮妮が転げ回る絵文字を送って来た。 「小雨青青が一笑奈何の前で2人の仲を裂こうとしてたって考えると、超ウケる。ハハハハハハ、あの子がもし事の顛末を知ったら、壁に頭を打ちつけてるんじゃない!」

雷神妮妮 「微微、一笑奈何があなたの彼氏だって言いふらしてもいいかな?(祈りの絵文字)」

そんなことはどうでもよい。いずれにしろ大神は大義を重んじているから、ウェイウェイは言う。 「どうぞご自由に……」

「ハハハ、よかった。必ず絶好のチャンスを狙って話してやらなきゃ」 雷神妮妮は長いこと興奮した後、ふと思い出して尋ねる。 「X大の件はどういうこと?」

ウェイウェイはちょっと考えて返答する。 「言語学者キ・センリン先生はかつてこうおっしゃったわ。嘘はまったく述べていないが、真実だけを述べているとは限らない」

雷神妮妮は少しの間ぽかんとした。 「うーん、なんかちょっぴりわかるような、わかんないような……でも、大学生に成りすましてると言われて、腹が立たない?」

「どうだっていいわ^_^」

ゲームでのそういうデマより、ゲームの中の好きではない人や事柄に実生活の邪魔をさせないことの方が重要だ。

どっち道、現実の世界では単なる見知らぬ人にすぎない。

彼らは私が誰かすら知らないし、そもそも私に何ら影響をもたらすこともできない。もう二度と会うこともないだろう。それなのにどうして陰で言われる悪口を気にする必要があろうか。