2016年8月6日(土)

新宿レッドクロスで、夜のストレンジャーズ。

火傷しそうなほどに熱いブギやロックンロールから泥臭いブルーズに沁みるバラッドまで、緩急つけながらも休みなしで駆け抜けた真夏の夜のワンマンショー。ほやほやの新曲とかなり久々の旧曲織り交ぜ、それは実に3時間以上に及んだのだった。

なにしろ序盤から「サム・クックで踊ろう」や「ブギ大臣」といったキラーチューンを立て続けに演奏するんだから、いまやりたい曲、いま聴かせたい曲は全部やるんだといった意気がガツンと感じられたし。マキ子さんもこの夜は3曲を歌唱。いやぁ、絶好調ですな、いまの夜ストは。いかにいい状態にあるかは、バンドアンサンブルのみならずミウラさんのMCの明るいトーンからも伝わってきたし、珍しくたくさん話してたテツオさんや、マキ子さんの「レッドクロス、イエイ!」ってな煽りからも伝わってきた。

信頼に値するロックンロール。弱さをわかっているからこそ強くて優しいその歌声。まったくもって生き様がダイレクトに表れた剥き出しのライブで、魂震えました、オレ。新曲もまたどれもグッとくるんだ、これが。ああ、この夜のようなライブを、いつか僕は苗場食堂で観てみたい。


2016年8月3日(水)

下北沢leteで、倉品翔。

GOOD BYE APRILのフロントマン、倉品翔くんの弾き語りライブをleteにて。欧州の田舎町にある小さな家のような空間に映える透明感のある歌声。とても親密。じわっと思いの伝わるいいライブだった。

僕の大好きな「start over」では間奏で林田順平さんのチェロの音が自然に脳内再生されたり。昨日歌詞をつけたという1分ちょうどの短い新曲には彼の素直な思いがそのまま表れていて新鮮だったり。観に来られていた湯川トーベンさんのカヴァー「雨の日と金曜日は」を聴きながら“優しい気持ち”について考えてみたり。吉田拓郎のカヴァー「夏休み」を聴きながら懐かしさについて思ってみたり。中島みゆきのカヴァー「糸」を聴いて言葉の意味が別の形で心に響いたり。

GLIDERのカヴァー「グライダー」もとてもよかったな。Aメロは倉品くんが歌うと倉品くんが作った曲のようにも感じられるのだけど、マイナーコードに展開するあたりの感じが栗田兄弟独特のもので、何しろ改めて「いい曲だなぁ」と。

あと、後半のエイプリル楽曲では観に来てたドラムのつのけんくんもコーラスで飛び入り参加。そして、どの歌も夏の匂いがした。

倉品くん、26歳の誕生日おめでとう!!


2016年8月1日(月)

新宿ピカデリーで、『64-ロクヨン 後編』。

*多少ネタバレを含むのでご注意を。

前編を観てから2ヶ月と10日あまり。前編を観終えたあとはすぐにでも後編を観たいと思ったものだが、間をあけすぎて最早観なくてもいいかという気持ちにすらなっていた。が、夜に時間ができたので、やはり観ておくかと劇場へ。

前編の内容を最早忘れていたが、初めにざっくりと話の起こりを振り返ってくれているので、そこはまあ問題なし。が、その親切さはしかし、続けて観たひとにはむしろ鬱陶しく感じられたかもしれない。因みに緊迫した前編ラストからの繋ぎ方は、あまりうまいとは言えないものだった。このあたり、やはり前後編に分けることの難しさでもあるだろう。

前編はよかった。が、後編にはがっかり。重厚だった前編に対して、ずいぶんと甘い作りに感じられた。じっくり描いていた前編から、後編に入って一気に話が動くのだろうと期待していたのだが、そうでもなく、わりとスローテンポ。前編の繰り返しのようなところもあって、引き込まれづらい。犯人を追いつめるシーンなどは野原という場面設定もあってかスリルもなく、佐藤浩市がどうしたいのかも伝わってこない。とりわけ自分の生理に合わないなと感じたのが終盤で、前編で嫌~な感じがよく出ていた瑛太はヘンにいいやつに落ち着き、頼りなさげだった綾野剛は立派に成長し、佐藤浩市と敵対していた仲村トオルは理解者となり……。なんだか普通のいいお話にまとまってしまい、最後に小田和正の優しい歌で片付けてるみたいな。というか、もしかしてこれ、小田さんの歌が先に決まったので、そのトーンに合わせた終わらせ方に無理くりもってったんじゃないか、とすら思えてしまった。

これはでもあれだ、先頃『葛城事件』という恐ろしく後味が悪いのだがそれ故に大傑作になっている凄まじいパワーの作品を観たばかりということもあって、余計にキレイなまとめ方に対してイチャモンつけたい気持ちになっているってところも僕のなかにあるのかもしれないが。うーむ。

しかしね。前編・後編合わせて約4時間の長さだが、つまめるところはいくらでもある。やはり1本で一気に観たかった。前後編に分けて作る日本映画界のこのブーム、これで終わりになるといいなぁ。


2016年7月29日(金)

渋谷タワレコでたをやめオルケスタを観たあと、渋谷TOHOシネマズで『シン・ゴジラ』。

面白かった!!  庵野監督のある意味集大成。氏の映研イズムが爆発していた。使徒としてのゴジラを通して日本政府を皮肉りまくる、という。確かに実写版エヴァみたいなとこもあって、エヴァ好きにはたまらんものがあるね、これ。一方でドラマ版『日本沈没』を想起させる感じもあったりして。昭和っぽさは意図的だろうけど。もちろん音楽にも萌えたな。ああ、やっぱゴジラは偉大。終わって拍手が起きてましたね。前後編とかにしないできっちり2時間で描き切ったのも見事。國村隼が巨人になったりしなくてよかった…。
2016年7月29日(金)

渋谷タワーレコードで、たをやめオルケスタのインストアライブ。暑い夏日のアツいビッグバンド。目をつぶってああいう音を聴いてると自分がまだ苗場にいるような気がしたり……。たをやめの演奏のアツさと同じくらい、(タワー渋谷店の店員さん)によるカツオさんの前説がまたアツかった。



2016年7月28日(木)

ペギーズのワンマンライブを渋谷Club Asiaで。

初めてソールドアウトした公演だそうで、会場は満杯。サポートメンバーはおらず、3人だけでガッツリ1時間40分以上。新旧の曲を取り交ぜて。たくさんの人の前で演奏できる喜びと自信の両方が感じられるライブだった。ペギーズは「カワイイ」以上に「カッコイイ」。

12月には渋谷クアトロでのワンマンも決定とのこと。ペギーズ、いまが飛翔のとき。


2016年7月26日(火)

渋谷O-EASTで、ステレオフォニックス。

フジでは(リオン・ブリッジズを始めから観たかっため)最後まで観れなかったんだが、この日は約1時間50分、素晴らしい歌と演奏を心ゆくまで堪能した。フジも最高だったが、決定的な違いは、昨夜は昔からの熱心なファンが集まっていたため多くの曲でシンガロングが起きていたこと。それ、日本のファンとバンドとの間に確かな信頼関係があることが見て取れ、なんか感動した。

彼らは今、迷いなど1ミリもなく、最高の状態にあるのだということがよくわかるライブだった。初期の曲が思いのほか多かったのも嬉しかったが、それらと新作曲との間に(いい意味で)温度差がなく、いずれも今のバンドの音としてガツンと鳴り響いていたところが本当に素晴らしいと思った。

ああ、それにしてもいいバンドだなぁ、と改めて実感。ソングライティング力においてもライブヂカラにおいてもオアシスなんかよりよっぽど上だと僕はずっと思ってるんだけど、日本でそこまで人気がないのは「華」や「不良性」に欠けるからなのかどうなのか。本来なら昨夜のようなショーは武道館でこそ映えそうなものだが、でもO-EASTぐらいのハコであれを体感できる幸せってのもあるわけで、そこ、ちと複雑な思い。僕的には約1ヶ月前のユーロにおけるウェールズの闘いっぷりの感動が残ってたこともあって、尚更今の彼らに思い入れたってところもあるやもしれぬが。

それにしてもケリー・ジョーンズは不思議なくらい老けないねぇ。デビュー当時と印象がほとんど変わらない。それがいいことなのかよくないことなのかはわからないけど、渋み売りする必要性は今のところまだないなと、今回観てそう思いました。



2016年7月24日(土)

フジロック3日目。観たのは以下の通り。

山崎彩音(木道亭)→STEREOPHONICS(グリーン)→LEON BRIDGES(ヘブン)→ERNEST RANGLIN&FRIENDS(ヘブン)→BIM BAM BOOM(アヴァロン)→KAMASI WASHINGTON(ヘブン)→RED HOT CHILI PEPPERS(グリーン。3曲のみ)→BATTLES(ホワイト)→電気グルーヴ(グリーン。15分だけ)→blues the butcher(苗場食堂)。午前2時頃帰宿。約13時間。そして午前6時に帰宅。

最終日は木道亭に直行。山崎彩音さんでスタート。17歳にしてフジ初登場。普段は都内のライブハウスで歌っている彼女にとってフジは大舞台のはずだがしかし、緊張している様子は少しも見られず、実に堂々とした歌いっぷり&ギターの弾きっぷり。その芯のある歌声が林に広がり、緑と溶け合い、ふと見上げると葉が揺れていた。葉も歌を聴いて喜んでいる。そんな気がした。以前「ロック魔女」なんていう紹介のされ方を目にしたが、そんな雰囲気は少しもなく、僕にはとても素直でまっすぐ思いを伝える女性に感じられた。少なくともこの日聴くことができたのは、そういう歌たちだった。似ているコード進行のスロー曲が多く、まだ楽曲の幅はないようだが、自身のスタイルといったものはもう築けている。これからいろんな音楽を吸収して作曲の幅を広げていけば、今あるスケール感がさらに増すことだろう。それにしても17歳にしてフジに立つ、その気持ちはどんなだろう。歌手としてやっていこうとしている若いひとにとって、それはどれだけ素晴らしい経験であることだろう。可能性は無限大。最後に歌われた曲(新曲だと言っていた)が特によかった。

グリーンでステレオフォニックス。最高だった。迷いが1ミリもない。だだっ広いグリーンステージでこそ映える正統的なロック。僕が何度か取材させてもらっていた初期(1stアルバムと2ndアルバム)の曲もバンバンやってくれて昂った。この二日後の単独公演も観たのだが、いまの彼らは過去最高の状態にあるなと、ハッキリそう思った。

ヘブンでリオン・ブリッジズ。今回のフジで僕がもっとも楽しみにしていたひとりだが、想像のはるか上を行った。弾かれるように軽いステップを踏んで彼がステージに登場した瞬間から一気に引きこまれた。歌がソウルフルで素晴らしいのはもちろんのこと、自由で軽やかなダンスに気持ちが高まる。最高の楽しさ。まるで60年代にタイムスリップした感覚だ。といってもレトロとかそういうことではなく、リオン自身がその時代を生きて、そのままそこにいるといった感じ。モダンなのである。バンドもグッドで、わけてもサックスが効いていた。黒いワンピのコーラス女性もクール(ずっとサングラスしていたけど、最後にとったら、あら美人さん!)。曲順には物語性も感じられ、ラストに「リヴァー」を弾き語るというそこにもグッときた。ジャズクラブのような場所のほうが似合うタイプかと思っていたが、その開放的なパフォーマンスをヘブンで体感できて本当によかったと、そう思った。

そのままヘブンでアーネスト・ラングリン。80歳のラングリン爺が弾くギターの瑞々しさにもしびれたが、コートニー・パインの吹奏っぷりのスケール感にぶっとばされた。

アヴァロンでBIM BAM BOOM。初アルバムが出たばかりというグッド・タイミングでフジ初登場。全員がいつにも増して気合い入った演奏っぷり。わけてもサックスの前田サラさんとギターの岡愛子さんが前に出てきてソロをぶちかます、その攻め具合に凄まじい爆発力があって盛り上がりまくった。なんといっても彼女たちには実力と華の両方がある。ここでのライブによって一気にファンが増えたことだろう。いやホント、まったくもって最高だった。

ヘブンでカマシ・ワシントン。いろんな意味で別次元。極太の音とうねりがとてつもなく、神々しくさえあった。前衛性は思いのほか前に出てなくて、ジャズとか聴かないひとでも楽しめるあり方はちょっと意外でもあったけど、そこが素晴らしい。ちゃんと観客に寄り添いながら、でもとんでもなく凄いことをやっている。そんなことやれるひとは多くない。曲順も練られていてドラマ性があるように感じられた。「ああ、これこそフジロック。だからフジは最高なんだよ」と心底思えた時間だった。

それに比べて、グリーンに動いて観たレッチリの音のまあしょぼいこと。まずグリーンに足を踏み入れた瞬間、出音の小ささに驚いた。埋め尽くされた客の中にズンズカ踏み入ってわりと前のほうにも行ってみたけど、音の小ささは変わらず。加えてアンソニーの歌がヘロヘロで、ピッチも狂いまくり。誰かがカラオケで真似して歌ってるみたい。あまりの迫力のなさに唖然となり、3曲程度聴いて僕はホワイトに動くことを決めた。これまで僕が3~4回観たレッチリのライブはどれも音響的に満足できないものばかりで、とりわけ東京ドームで観たあれは酷かったが、今回もそれと変わらないレベル。どうして彼らはあんなにいい演奏をするバンドなのにダメなPAスタッフを使い続けているのだろう。謎だ。プリンスとかミック・ジャガーだったら即座にクビにしているだろうに。また、最後にアンソニーがモニターの調子の悪さにぶちキレてマイクを叩きつけたそうだけど、チェックを怠ってる自分も悪いのに、いい歳して何やってんだかと呆れずにいられない。SNSではその行為に対して「歳とってもロックだね」などと褒めてるひともいたけど、そんなもん全然ロックじゃないよ。新作の音がよかっただけに、ほんとガッカリした。

で、ホワイトに動いてバトルズの音を聴くと……。ほらね。こんなにカラダにビリビリくるような音がそこでは出ている。その音のよさと迫力たるや、レッチリの10倍くらい。なのでたちまち引き込まれた。音がカタマリになって響いてくる、のに、一音一音もとてもクリアでビシっビシッとくる。展開のさせ方も完璧で、ああ、これが正真正銘のライブバンドだよと、ダメだったレッチリのあとだけに尚更強くそう思えた。

グリーンに戻って電気グルーヴ。グリーンでもしっかり上等な音響。映像も凄い。そして瀧も卓球もすごく楽しそう。ずっと踊っていたかったけど、どうしても苗場食堂のblues the butcherを観たかったので、後ろ髪ひかれつつ15分ほどで移動。

blues the butcherは最高だった。佐藤タイジや山岸潤史がゲストで出た一昨年の苗場食堂も最高だったけど、ゲストなしの今回もまた最高に盛り上がった。全員揃って黒のスーツにタイというブルース・ブラザーズのような衣装もかっこよし。ホトケさんの渋い声とギターもコテツさんの高い歌とブルーズハープも、夜の苗場食堂に本当にハマる。できることなら毎年出てほしい。前夜祭を含めてフジロック4日間の、これが最後に観たアクトだったが、自分にとっては理想的な締め。心残りなし!

で、この日のベストアクトは……ステフォもカマシもBIM BAM BOOMもバトルズもblues the butcherもよかったんだけど、うん、やっぱりリオン・ブリッジズ。僕はこういう音楽が心底大好きだーと、そう思えたライブだった故。


2016年7月23日(土)

フジロック2日目。観たのは以下の通り。

THE ALBUM LEAF(レッド)→ROVO(ヘブン)→臼井ミトン with 中條卓+沼澤尚(アヴァロン)→ザ・たこさん(カフェドパリ)→WILCO(グリーン)→BECK(グリーン)→SQUAREPUSHER(ホワイト)→KILL THE NOISE(レッド)→MOROHA(苗場食堂)→THE ILLUSIVE MAN(パレスオブミステリー)→TODD TERRY(レッド)→NST&THE SOUL SAUCE(パレステント)。午前5時頃帰宿。約14時間。

*全部の感想書くと長くなるので、印象に残ったものだけさくっと書きます。

2~3年前にレッドマーキーで観たトム・オデールが素晴らしかったので今回も絶対観ようと思っていたのだが、宿でグズグズしていて間に合わず。非常に残念。というわけで13時20分からのアルバム・リーフでこの日はスタート。ポストロック~アンビエントの核心といったような音を、溜めて溜めてじわぁ~っと聴かせる感じ。映像もよかった。これはクアトロとかリキッドあたりでもう一度落ち着いて味わいたい。

臼井ミトン with 中條卓+沼澤尚。3者の人間味、または人間力といったものが溢れた心に響く歌と演奏にうっとり。ミトンさんの音楽にはアメリカのルーツミュージックを根っこにしている故の土臭さもあるけど、決して太陽燦燦の炎天下で聴くのが似合うものではなく、涼しくて爽やかな風が吹いてる感覚もそこにあるから、ジプシーアヴァロンというステージはこの上なくピッタリだ、と聴きながら思った。ピアノ、またはギターを弾いて歌うあたたかなミトンさんの声と、中條さん&沼澤さんの力強くも安定したリズム。あまりに胸に沁みたので、終演後、並んでサインもいただき、お話もできた。因みに「内本さん、絶対好きだと思うから観てください」とミトンさんのライブを僕に勧めてくれたのは、シンガーの高宮マキさんと、フジ前日にランチしたmaaayoさん(彼女の新作『WOMAN』のプロデュースをミトンさんが手掛けている)。ふたりに感謝。

ザ・たこさん。前日の苗場食堂に続き、今回2ステージめ。キング・オブ・苗場食堂がカフェドパリという洒落た場所へと大進出。で、超満杯。万歳!。セットリストは苗場食堂のそれとは大きく変えたもので、どっちもやったのは(繋ぎのインストを別にすると)女風呂のみ。ナイスミドルやケンタッキーなど定番曲が多かったが、秋に出る新作からの新曲「あんたはギビトゥミ」も初めて聴けて大満足。とりわけ「愛の讃歌」はカフェドパリで歌われるためにこれまでライブで続けてきたんじゃないかと思えるほどのドハマリ具合。それ、楽屋でローリーさんにも褒められたそうな。

ウィルコ。派手さも仕掛けもなんもなく、ただただその演奏力・バンド力でグイグイと引き込んでいく。静かなスローにいきなり轟音ドラムがどしゃばしゃと入ってまた静かに…といった押し引きと強弱のつけ方の巧さがハンパない。恐ろしいほど見事なアンサンブル。生演奏音楽の底力。これは夕方のグリーンステージのあり方の、ひとつの理想形でもあるな、とも思った。

そしてお久しぶりのベック。錚々たるバックメンバーを従えて初期曲やりまくりのエンターテインメント・ロック・ショー。ぐるっと一回りしてベックはもっともみんなが求めているベックのあり方を引き受けたのだなと、そんな印象。歳を重ねるとみんなが自分に何を求めているかがわかるようになるのだろう。いや、わかるからこそ「それだけが僕じゃないんだ」といろんな方向に行きたくなった時期もあるわけだけど、そういう時期を経て、今は素直にそれに応えたいという気持ち、あるいはそれを自分も楽しみたいという気持ちになったのだろう、きっと。しかも昔の曲でもしっかり今のモードで鳴らされてるから、懐かしさなどは皆無。メンバー紹介タイムにはボウイの「チャイナガール」、プリンスの「1999」なんかも追悼っぽく歌ったりして、その圧倒的に開かれた行き方に盛り上がらずにはいられなかった。秋頃出る新作もこういうモードになるのかどうか。ここからのベックの動きが俄然楽しみになった。

ホワイトのスクエアプッシャーは、結論から書くとこの日のベストアクト。「どこがそんなによかったの?」と訊かれて答えるには時間を要するが、カラダの節々にまで響く暴力的な電気轟音でありながらも、巧みな映像演出で飽きさせないその展開のさせ方は考え尽くされたものなんだなと。こういうのは屋内で聴いたほうがいいだろと思いがちだが、ホワイトの100%の音響も手伝い、野外だからこその昂揚があって最高だった。このへんから自分の理性も徐々に失われ……。

スクエアプッシャーでやられた頭とカラダに、次のレッドのキル・ザ・ノイズがこれまた毒キノコのようにバッキバキに効いてヤバかった。音も映像も激しく暴力的で、ここにサブリミナルぶっこんでたら絶対やられてたなっていう。このあたりの自分はもう何がなんだかわからないけど踊ってないと死んじゃうみたいな状態に。

この日の締めはパレステントでNST&THE SOUL SAUCE。韓国の実力あるレゲエバンドで、ダブがかったレゲエもよいのだが、僕はアフロビートの曲がよりかっこよく聴こえた。翌日の昼間、メンバーにばったり会ってカセットをもらったのだが、リコ・ロドリゲスに捧げた曲とかとてもよいです。

というわけで、この日のベストアクトはやっぱスクエアプッシャーってことで。




2016年7月22日(金)

フジロック1日目。観たのは以下の通り。

BOREDOMS(グリーン)→LA GOSSA SORDA(ホワイト)→金佑龍(木道亭)→LlTTLE CREATURES(ヘブン)→UA(ヘブン)→THE lNTERNET(ホワイト)→ROUTE 17 Rock'n Roll ORCHESTRA(グリーン。八代亜紀から)→JAMES BLAKE(グリーン)→The Birthday(レッド)→SIGUR ROS(グリーン)→ザ・たこさん(苗場食堂)→D.A.N.(レッド)→三宅伸治BAND(苗場食堂)→MURA MASA(レッド)→CON BRLO(パレステント)→ROLANDO BRUNO(パレステント)→LA GOSSA SORDA(パレステント)。で、午前5時頃帰宿。15時間。

ボアダムスは初っ端だけに何か派手なことやってくれるんじゃないかと期待したが、最後まで禁欲的なまでに我が道を。わかりやすい盛り上がり場面はなく、そこが「らしい」とも言えるがしかし、20周年のフジなのだからTAICO CLUBで見せたようなドラム数台でのアレみたいな特別な昂揚が欲しかったという思いも(今回はドラムは1台のみだった)。音の振動とスケール感は凄かったけど、後半もさほど変化がない様子だったので、ホワイトに移動。

そこで観たラ・ゴッサ・ソルダは99年にスペインのバレンシアで結成されたバンドで、マヌ・チャオとかに影響受けながら活動。今年で結成17年目だそうだが、今回のフジロックのステージを最後に解散するという。ロック、パンク、レゲエ、スカに、バレンシアの民謡や地中海のビートを混ぜながら攻撃的に演奏するその様に引き込まれ、僕はどんどん前のほうへ。圧倒的に力強く、歌と演奏に魂がこもっているのがビンビン伝わってくる。最後の曲が終わると、どうやら泣いてるメンバーも。ホワイトステージのあんなに大勢の観客の前で解散ライブを全力でやり通したのだ。そりゃあいろんな思いがグルグルまわってたことだろう。メンバーのひとりは「フジロック、ありがとう」と書かれた紙を観客に見せてたりも。その光景を見ながら僕も思わずもらい泣き。美しかった。グッときた。

木道亭での金佑龍くんは、弾き語りで始まり、1曲目(ナイトクルージング!)の途中からトリオで。ギターの弦が切れるなどのハプニングもあって本人は力を出しきれなかったという思いが残ったようだが、なになに、そこでの臨機応変な即興演奏はむしろタフなパフォーマーぶりを印象付けるもの。何の問題もない。すごくいいライブだった。

LlTTLE CREATURESは出たばかりの新作の曲を次々に。ただ演奏だけがそこにある、といったふう。3人だけなのにグルーヴがとてつもなくて、引き込まれまくる。ちょっとケイクを思わせるヘンテコなビート感もたまらない。このままずっと終わらないでほしいと僕は思った。

そしてそのクリーチャーズの青柳さんと鈴木さんを含むバンドがバックを務めるUAのステージ。今年、僕はCIRCLEとグリーンルームで既にUAのライブを2回観ていて、この日も恐らく同じセトリだろうと思っていたら、なんと1曲目に(CIRCLEとグリーンルームでは後半のここぞというところで歌われた)「情熱」を持ってくるという大胆な構成チェンジ。過去曲を始めに続けてやり、そこから新作の曲へと進み、ピンクレディーのカヴァー「モンスター」を挿んだりしながら展開して、最後は聴きたかった「ミルクティー」で締めた。CIRCLEのときよりもグリーンルームのときよりもUAは何やら歌う喜びが全身から溢れだしてる感じで、コーラス女性ふたりと揃ってのアフリカンダンスの様も含め、(UA自身が)実に開放的。彼女はフィールドオブヘブンというステージが大好きなんだなと思った。ヘブンとUA、確かに抜群の相性のよさだ。

できればここからコートニー・バーネットへと動きたかったところだが、彼女のステージは前回の単独で観てることもあり、潔く諦めてホワイトで初観のTHE lNTERNET。よかったはよかったが、これは屋内で観たほうがベターだったかも。

そしてグリーンに動くと、まさかの八代亜紀「舟唄」。フジでこの曲を聴く日がこようとは。次に出たチャボも「八代亜紀と友達になれたぜ、イエ~い」と喜んでましたw。で、ROUTE 17の演奏時間が終わってバンドがハケると、横のスクリーンにプリンスが映し出され、ステージ全体の照明が紫色に。「パープルレイン」が流れたのだった。そう、プリンス・トリビュート。いつかフジでプリンスを観ることができたら…とかつて僕は夢想し、それは叶わなかったわけだがしかし、短い時間でもグリーンにプリンスの曲が確かに流れたそのことは記憶に残りそうだ。

ジェイムス・ブレイクは言うまでもなく素晴らしかった。まず音の深度が圧倒的。そして最新作のテーマの深度に呼応してか、ヴォーカルのエモーショナル度数がさらなるものになっていた。その歌ヂカラに今回は特に震えた。とはいえ初めて名古屋のクアトロで観たときの衝撃はさすがになく…。それはまあ観ている自分がよくない意味で「慣れて」しまったからではあるのだろうけど。グリーンでも堂々たるステージではあったけど、でもやっぱり完全に暗くなった時間帯に前回同様ホワイトで観たかったというのが正直な気持ち。

久々に観たThe Birthdayは文句なく最高。特に終盤、大好きな「カレンダーガール」が聴けた上にアンコールで「涙がこぼれそう」も聴けて、僕、大興奮。チバのゴキゲンな様子は「フジは楽しいね~」といったMCからも伝わってきたし、彼は珍しく何度も笑顔を浮かべて、本当にずっと楽しそうだった。久々に単独公演にも行きたいな。

シガー・ロスは光と映像の演出にただただ圧倒された……けど、後ろのほうで座って聴いてたため、急に疲れがきてウトウト。あの音と相まって夢の中にいる感覚だった。

“キング・オブ・苗場食堂”こと我らがザ・たこさんは、今回が5度目の苗場食堂。もちろん僕は全て観てきたが、なんと今回、最後の「監獄ロック」でザ・たこさん史上初めてのモッシュが起きた。とてつもない盛り上がり。ひとも後ろのほうまでビッシリ。どーだ!  これがザ・たこさんだ! と、10年ちょっと追いかけてきた僕も誇らしい気持ちになった。

深夜のマーキーのD.A.N.は海外のバンドのようとも言える音のセンスで、映像表現もこれまたハイセンス。サポートで加わった小林うてなさん(マリンバ、スティールパン奏者)、存在感あったなー。僕、彼女ばっか観てました。

三宅伸治BANDは苗場食堂でも安定感あり。「毎日がブランニューデイ」など清志郎の曲で盛り上がったりも。「月がかっこいい」はあの場によく映えるな。

MURA MASAは音響がズンズン凄くて、ああこれは最新型のビートミュージックだなぁと思いつつ前半観てると、途中でエキゾチックな女性ヴォーカルが加わったり、はけたり、また加わったり。で、R&Bっぽくもなったりして、なんかいろいろ面白かった。また観たい。

深夜のパレスのコン・ブリオは、前夜祭で観たときよりソウルとしての深みがあった。いろんな面を持ってるなぁと感心。そしてそのままパレステントにい続け(飲み続け)、ROLANDO BRUNO、からの昼間ホワイトでも観たラ・ゴッサ・ソルダ。これが彼らの正真正銘のラストライブ。それだけに気持ちの入りようがハンパなく、とてつもないノリを巻き起こした。終わって抱き合うメンバーたち。感動。昼間に続いてまた泣いてしまったよ。

というわけで、この日のベストアクト…というか最も強く印象に残って、きっとずっと忘れないだろうと思えたのは、ラ・ゴッサ・ソルダ。あの場に立ちあえて本当によかった!