2018年11月24日(土)
高円寺のJIROKICHIで、ザ・たこさんの『ザ・タコサンアワー番外編~独占! タコの120分~』。
『ザ・タコサンアワー』はいつも年の瀬に行なわれる2時間越えの長尺ライブ。だが今回は11月の「番外編」。言い換えるなら「特別バージョン」。いつもと何が違うのかというと……そう、ザ・たこさんを柱に地元・大阪の“愉快な仲間たち”が揃って出演するものだったのだ。やってきたのは、あうんさん・すうじぃ、キチュウ、キタバヤシ、桜川春子(a.k.a.レディ・ババ。ザ・たこさん安藤のヨメ)、ドスタコス(元ザ・たこさんのベースで、ザ・たこさん初作品からのエンジニアでもあるマツケンこと松田健のトリオ)。つまりは一座あげての総力戦。これ、大阪でもやったことがなく、今回のJIROKICHIがお披露目公演だったわけだが、いやもう想像を遥かに超えた楽しさ面白さ。オープニングタイムアクトから全員揃ってのエンディングまで、全てが見どころのソウルレビュー(あるいは大忘年会!)。爆笑しながらも音楽そのものの強度にやられっぱなしで、これぞタコサンアワーと言えるものだった。恐るべし、たこさん一座。こんなにも濃厚なレビューを見せることのできるバンド、関東にはおらんでしょ。
DJと司会はあうんさん・すうじぃ。ブルース・ブラザースに敬意を表して黒のスーツでキメた彼がソウルの7インチをまわしながら喋って場をあたためたあと、オープニングタイムアクトはレディ・ババこと桜川春子の弾き語り。言語化の難しい強烈インパクトと話芸歌芸でたちまちみんなが爆笑の渦に巻き込まれる。
続いて主役のザ・たこさんオンステージ。「ネギ畑」に続いてまずは先代MCのキチュウが「キチュペクト」(オーティス「リスペクト」のキチュウ版)を熱唱。彼はそれ1曲でひとまず引っ込み、現MCのキタバヤシによる呼び込みで安藤登場。早々に「カッコイイから大丈夫」が投下され、たちまち生まれる一体感。「40肩」から「肩腰背中」へと歌詞的にも繋がる2曲が続いたあと、ここで桜川春子の再登場。流し台(シンク)の話からアレサの「シンク」へ。ド迫力のシャウトと表情芸に圧倒される。すげぇ…。それ、映画『ブルース・ブラザース』のあの場面の再現的なやつだが、歌詞は関西弁だ。続いてこれまたアレサで有名な「小さな願い」を秀逸な関西弁歌詞(♪もうあきまへんわ~)で歌い、そこからの安藤との濃厚な絡みはやがて小川知子&谷村新司「忘れていいの-愛の幕切れ-」(胸モミ)へ。爆笑を呼びつつも、なんか妙にグッとくるw。スバラシや、春子フランクリン。で、第一部はザ・たこさん「ケンタッキーの東」(マントショー)で締め。
ハーフタイムショーは、DJすうじぃと山口しんじとの絡みから、キチュウのラップへ。すうじぃも自身のラップと歌でそれに応え、そこからキチュウとすうじぃのラップバトル(?)へと展開。最高なり。続いてミッキー大畠、カルロス松田、アグリーニャ西田による偽メキシカン路上音楽トリオ、ドスタコスが客席からステージに登場。酒場で聴くのが合いそうな“いい湯加減”のメキシカン風味音楽でありながら、クレイジーキャッツ「ホンダラ行進曲」までもカヴァーする…つまりは和製メキシカン。ビールがすすむくん。途中、ミッキー大畠にフレディが憑依してライブエイドの女王よろしく「レ~ロ。レロ!」とやる場面もあり。
DJのすうじぃがブルース・ブラザース「シー・コート・ザ・ケティ」をかけると、それを合図にザ・たこさんの第2部がスタート。まずはキチュウが飛び出し、オーティス「シェイク」。続いて山口しんじがすうじぃを呼び込み、「『初期のRCサクセション』を聴きながら」をふたりで熱唱。これがよかった!
安藤が出てきてからは「ナイスミドルのテーマ」「ゴリラの息子」と続き(久々に聴いたゴリラは凄みがあった)、そのあと現・ドスタコスの松田健が再びステージに呼びこまれることに。「お豆ポンポンポン」と「うつぼ公園24歳、冬。」の2曲をマツケンさんのギターが加わる形で演奏されたのだが、マツケン在籍時代にザ・たこさんを知って追いかけるようになった自分にはその横並びの絵からしてグッときまくり。とりわけ「うつぼ公園」のギターは1stアルバム『蛸壺』のその曲のまさにあのギターの音で、クゥ~~。なんか泣けましたわ。で、本編の締めは「女風呂」(マントショー)。いろんな出し物・いろんな名場面ありで賑やかに進んでいったこういうショーの締め括りとあってか、このタイミングでの「女風呂」がいつものそれよりもドラマチックに感じられた。ある意味「我が人生、最良の日」の役割をこの夜は「女風呂」が担っていたというような。なんか感動的ですらあったのだな。「女風呂」なのに(笑)。そしてアンコールは全出演者がステージにあがっての「監獄ロック」で大団円。いやぁ、濃かった! すんげぇ~面白かった!
自分がザ・たこさんを初めて観て衝撃をくらってから約14年。これまで数えきれない回数彼らのライブを観てきたが、この夜のそれは初めて観たときの衝撃を思い出すくらいの「すごいもん観た感」があった。結成25年目にして新たな扉が開いた感。ビデオはまわってなかったので、この夜の凄さはこの日JIROKICHIに集まった限られた人たちの記憶にのみ残るものだが、しかしここに居合わせた人たちの間では間違いなく“伝説のライブ”として共有できるもの。観ることできた人たちはホント、ラッキー。願わくばいつかまた、今度はクアトロとかでもアレを観てみたい。
ところでこの日、先に会場に着いた𠮷永・オカウチ以外の面々は、渋滞に巻き込まれて遅れに遅れ、ほぼ開場時間にJIROKICHIに着いたらしい。既に客の待つ会場にギリギリ飛び込むように着いて演奏を始めるその様は、さながら映画『ブルース・ブラザース』。となれば、すうじぃのこの日のカッコや彼のかけた「シー・コート・ザ・ケティ」、または春子・フランクリンの「シンク」のそれも全てがひとつの物語として繋がってくるというもの。しかも話はそれに終わらず。打ち上げ終わって深夜に会場を出て大坂に帰る途中、なんと静岡あたりでタイヤがパンクして立往生するハメになったとのこと。映画かよ!!(笑)
いちいちドラマチックなザ・たこさん一座。それ、道中含めて映画化してほしかったくらい。おもろいなぁ。ホント、おもろいなぁ。これだから観るのやめられない。さあ、次は12月の無限大記念日6。そこでは果たして何が起きるのやら。