一年が過ぎ………



二年が過ぎ………



三年四年と過ぎて……………



気が付いたら智が亡くなって十年…………




忘れたことは無かったけど

色々なことが薄れていく………




十年一昔と言うが

辺りはすっかり変わってしまい

田んぼだった所に家が建ち

田舎の風景も様変わりしてきた。

それとともに

俺たちもいい歳のおっさんになってしまい

髪には白髪もちらほら混じり

顔にはシワも増えてきた。




中学時代の同窓会があると言うので

久しぶりに田舎に帰って

友人たちと酒を酌み交わす。

お互いの家庭の事や子どもの事

そして、

昔話に花が咲き

俺たちはいつのまにか中学生に戻ってた。




『あれからもう10年なんだな。』

と、相葉がボソッと呟いたことで

俺たちは現実に引き戻された。

『…………そうだな。』

と、返事をしたのは二宮。

遠い目でどこかを見つめる二人。

彼らは、今はいない智を思い出し

感傷に浸っているんだろう

俺たちの大切な思い出のなかには

いつも忘れられない存在として智がいたんだ。




『なあ………

神社…………行ってみねえ?』

と、俺。


俺たちが子どもの頃

よく遊んだ神社。


智と待ち合わせをしていた

あの神社の銀杏の木が………

なんだか俺たちを待ってるような気がして

二人を誘ってみた。



同窓会を抜け出して神社に向かう俺たち。

大きな銀杏の木が月に照らされて

変わらずそこに立っていた。

そして、その隣にある水銀灯。

今でも変わらない風景に俺の目頭が熱くなる。


二人は「神社にお参りしてくる」と言って

俺を一人残して参道の方に

俺はそのまま銀杏の木に向かった。




『そこに………居たんだ。』

「ふふふっ」

水銀灯の隣に中学生の智が立って

俺を見て笑うから

俺の目が滲んでしまった。

「……翔…くん……?」

優しく俺を呼ぶ声が懐かしくて

目から涙が溢れてしまった。

それを手で拭いながら

『……親父に……なったろ。』

って、照れ隠しの笑みを返すと

「ふふふっ

渋いよ。」

と、返ってきた。

『そうかな………ハハハ………

智は…………

智は、変わらないな。』

「ふふふっ

そりゃそうでしょ。」

そう言って、智は銀杏の木を見上げた。

「俺ね。

ここでこうして銀杏を見上げながら

翔くんが来るのを待ってたんだよ。

"まだかなまだかな"………って

待ってるのが楽しかったんだ。」

『そ、そっか…………

いつも………

待たせてばかりだったよな…………ごめん。』

「そのおかげで

いいもの描けたからおあいこだよ。」

『そ、そっか。

おあいこか………』

「うん。

おあいこ。」

智は、無邪気な笑顔を俺に向ける。

中学生だった智は

いつの間にか大人の智になっていて

俺の胸は苦しくなる。


『………あっ………

…あ………さ、智………

………智……

…智………………

どんなに時間が経っても………

どんなに記憶が薄れていっても……

お前を思い出すと

苦しくて、悲しくて、寂しくて…………

辛い……………

俺……

俺は……………』

俺は思わず泣いてしまった。

「なに言ってるのさ。

翔くん………お父さんなんだよ。

俺なんか忘れて

幸せになってくれないと困るよ。

幸せになって。

俺の分も……………幸せになってね。」

智は、いつもそう言って笑う。

『……………ハハハ………

ごめん。

笑っているって………

約束だったのにな…………』

「ふふっ

そうだよ。

約束。」

『うん。

約束だ。

俺は………幸せだよ。

幸せだから……………』

俺が涙を拭い智を見つめると

「うん。」

と、笑顔で頷いて

智はゆっくり消えていった。




その頃には、相葉も二宮も俺の隣に来て

一緒に銀杏の木を見上げてた。