『え?
帰った?
え……どうやって?』
俺は病院の受付で叫んでいた。
仕事をマッハのスピードで終わらせて
智が運ばれた病院に走ってきたのに
心配で心配で
眠れぬ夜を過ごし
嫌な夢まで見て
どんなに不安だったか
どんなに怖かったか
なのに
「帰った?」って…………
受付のおばさんが怪訝そうに
『兎に角、午前中に帰って行きましたから
。
もういいですか?』
と、言うと
「次の人」と俺の事を押しやった。
直ちに家に帰ると
玄関の灯火が着いていた。
『ただいま。』
勢いよく玄関の戸を開けたら
『おかえり。』
と、智が奥から顔を出した。
ホッとしたような
でも、なんだか裏切られたような
そんな複雑な心境で
『なんで?
何でいるの?
俺………病院行ったのよ。
そしたら帰ったって………
帰ってきていいの?
え?
どうゆうこと?
入院してないといけないんじゃないの?』
と、責めたてるように近づいていったら
『はい。
これもって
はい。
これも。』
と、俺にお盆を持たせて
夕食を運ばせようとする。
突っ立ってる俺に
『え?
お腹すいてないの?
俺、ペコペコなんだけど………
早く食べよう。
今日はなんと豚汁もあるんだよ。
翔くん好きでしょ。』
そう言って、
にこにこしながら俺の脇をする抜けて行く。
まるで昨日救急車で運ばれたなんて嘘みたいに
いつもの日常がそこにあった。
昨日の事は夢だったの?
ってぐらいいつもの日常。
TV見て笑って
自分で作った夕食を自画自賛して
楽しそうににこにこしてるのを
俺は不思議でならなかった。
でも、聞いたら聞いたで
この平凡な日常が消えてしまいそうで………
俺は何も言えずにいた。