『アハハ
志村けんって
なんでこんなに面白いんだろうね。』
TVを見ながら笑ってる智を見て
俺は何も言えずにいた。
聞きたいけど
怖くて…………聞けない。
でも、
聞かなきゃ…………
『あ、あのさ。
結局、どうだったの?
本当は入院してないと
いけないんじゃないの?』
俺の言葉に
笑ってた声がピタッと止まった。
『ちゃんと話してくれない。
隠さずに
俺、ちゃんと………
受け止めるからさ。』
「俺だって
怖いんだよ。
聞かなくてすむなら
聞きたくないんだよ。
俺の気持ちも分かってくれよ。」
と、そんな思いで問い尋ねた。
俺の目を見つめながら
『なんだよ。
その翔くんの瞳(め)』
と、言って
一瞬フッて笑ってから
大きく肩が上下して
『………俺……………
……………再発した。』
と言った。
『再……発………』
やっぱり……………
俺の恐れていたその言葉。
『じゃ、じゃあ………
入院しないといけないじゃん。
なんで帰ってきたの?
病院行こう。』
俺は智の手を掴んで立ち上がったのに
智が
『行かないよ。
俺……治療しないから。』
と、俺を見上げた。
智の瞳。
決意してるんだろう。
真っ直ぐ俺を見て
揺らぐことがない。
『なんで?
なんで治療しないの?
出来ないの?
したくないの?
どっち?』
俺の責めるような言葉に
『治療はしない。
ただそれだけ。』
そう言うと、俺を押しのけて
部屋を出ていった。
治療を………しない……
それって…………どういう意味…………
治療しなきゃ………治らないだろ………
もし、治らなければ…………
そう思ったら
背中がざわついて智の後を追い
『なんでだよ?
治療すれば治るんだろ。
もう一度、俺の骨髄移植すれば
治るんだろ。
治るんだから治療しようよ。
なあ、智!!』
と、懇願するように訴えた。
智は、アトリエのドアの前で立ち止まると
『翔くん。
俺、時間がないの
だから邪魔しないでね。』
そう言って、
ニコって笑ってドアを閉められ
鍵を掛けられた。
『おい。
おい、開けろよ。
ちゃんと、話そうよ。
なあ…………智。』
ドアの前で騒いでる俺に
『翔くん煩い。
仕事の邪魔しないで
大丈夫だから。
翔くんの言いたいことは分かってるから
…………時間がないんだよ。』
『時間がないんだよ。
……………………(俺には)』
翔くんの言いたいことは分かってる。
十分分かってる。
でも、結局それは、
俺の命をほんの少し伸ばすだけで
痛みや苦しみを増すだけで
結局、ラストは変わらないんだよ。
だったら
俺は治療したくない。
翔くんの側にいて
季節の移り変わりを肌で感じながら
大事に生きていたい。
そう………決めたんだ。
ごめんね。
翔くん………………
翔くんの瞳……………
不安で不安で仕方がない………って
そんな瞳をしてた。
翔くんって
怖がりなんだよね。
でも、その翔くんの瞳………
思い出したよ。
あの時も
そんな瞳をしてた。