熱で魘され
朦朧としていたあの時………
確かに翔くんはこんな瞳をしてた。
不安で仕方がない………って顔。
今にも泣きそうな瞳。
また、そんな顔させちゃった………
……………ごめん。
ごめんね。
翔くん…………
俺はドアに背を向けて
翔くんが叩く音が聞こえないように
両手で耳を塞いだ。
『余命…は………………』
と、先生は言いながらも
『それでも、奇跡を………
人間の生命の奇跡を信じましょう。
余命以上に生きた人もいますから。
大野さんだって…………』
と、励ましてくれた。
「まだ、諦めちゃいけない」と………
でも……………
もういいんだ。
俺は十分…………
十分なんだよ。
これ以上……………
もう、これ以上………
翔くんを苦しめたくない。
俺は先生に今までのお礼を言うと
今後の緩和ケアを担当する
病院を紹介してもらって帰ってきた。
翔くんにご馳走を用意して
心配かけた事を謝らないと………
そして…………
ちゃんと………
泣かないで…………
タイミングを見て………
上手に…………
翔くんに話さなきゃ……………
……………って、思ってたのに
言うタイミングがわからない。
かといって、翔くんに聞かれるのも怖くて
俺は必死にTVを見て笑ってた。
大好きな志村けんなのに
なんも頭に入ってこない。
ただ、バカみたいに笑ってた。
翔くんが何か言おうとすると
それを遮って
無理矢理笑って…………
翔くん………………
……………………助けてよ………………
……………神様………………
……俺を…………………
助けてよ……………………