『未華子と何しゃべってたの?』
翔くんが子どもたちと遊んでいる間
俺は未華子さんに病気の事を隠して手紙を渡した。
「俺が帰ったら読んで………」って
俺の感謝の気持ちを知ってほしくて
でも、翔くんには
『子どもたちの事聞いてたんだよ。
可愛いね。
なんかやっぱり翔くんに似てるね。』
と、誤魔化した。
『そうかなぁ?
そうは思わないけど……』
なんて言って、翔くんは否定してるけど
運転してる翔くんの横顔は
満更でもなさそうに見えるよ。
子どもたちと遊んでる翔くんは楽しそうで
子どもたちも覚えたての
"パパ"と言う言葉で翔くんを呼んでいた。
とろけそうな翔くんの顔。
やっぱり嬉しいんだろうな………
いつか……………
いつか……あの子たちにお父さんを返さなきゃね。
『あっ、おーちゃーん。
久しぶり…………
元気だった?』
俺の姿をいち早く見つけると走って来た相葉ちゃん。
俺を抱き締めて嬉しそうに
ピョンピョン跳ねてる。
その後で
『もうさ、
おーちゃーんまだかな。
っていって何度も出たり入ったりして
煩いったらないの。』
と、機嫌の悪い振りをするニノが立っていた。
『うるさいってなんだよ。
ニノだってやってたじゃん。
だいたいさ、
お前たちはいいよ。
すぐ会えるんだから
俺なんてほんと、久しぶりにも程がある。
だからぎゅーさせてー』
と、またも抱き付いてきた。
『もー、まーくんたら…………』
俺はまーくんの背中を撫でながら
『ニノもこっちに来てたの?
言ってくれたら一緒に来れたのに』
って、ニノに言うと
『そんな邪魔しねーよ。』
と、プイッとそっぽを向かれた。
『それより
おーちゃーん。
体調……………
悪いの?
なんだか熱いよ。
熱あるんじゃない?』
抱きついていたまーくんが心配そうに顔を上げたから
『そんなことないよ。』
と言って、まーくんの回していた腕を外した。
『だって、
ずいぶん……痩せたし…………』
まーくんは今にも泣きそうで
さっきほどまでの元気が萎んでいく
『それこそ
そんなことないって…………
ちゃんと食べてるし……』
と、俺は元気な振りをして見せる
俺たちのことを黙って見ている翔くんが
目の端に映ったとき
『…………再発…………したんだろ。』
と、ニノのドスの効いた声。
『え?』
ニノの顔を見ると
怒っているのか
それとも、悲しんでいるのか
わからない複雑な顔をしていて
俺は言葉が出なかった。
『本当は再発したんだろ。
って、言ってるの。
なんで隠すんだよ。
もー、隠したり嘘ついたりしないでくれよ。
俺たちに迷惑とか言うなよ。
知らなかった方が
ずっと辛いんだから……………』
ニノが捲し立てるように
早口で俺を攻め立てるから
思わず
『………ご…………ごめん。』
って、言ってしまった。
ニノは冷静さを取り戻し
『それで、
今治療の合間に来たの?』
って、言うから
『ち、治療は………しないんだ。』
と答えた。
するとまた怒ったような声で
『なんで?
なんで治療しないの?
だって………治療…………しなかったら……
………死…ぬ……………んだぞ……』
って、ニノの声が震えてる。
『…………うん。
わかってる。』
俺とニノの間でまーくんが
オロオロしながら
『え?
どうゆうこと?
俺にも分かるように説明してよ。』
と、訴えていた。
『……………ご…めん。
ごめん。
もう、苦しい治療はしたくないんだ。』
と言う俺の言葉に
『苦しくたって………
治療してくれよ。
治療すれば治るんだろ。』
って、ニノが俺にすがるように言う。
『治んねーよ。
治んねーんだよ。
ただ、ほんのすこし………
寿…命…………伸ばすだけで。
そのためにずっと入院して………』
と、今まで黙っていた翔くんが
俺を守るようにニノの前に立ちはだかった。
そして、
『俺たちで考えて結論出したんだよ。
治療しても…………
ほんの少し寿命を伸ばすだけだから
苦しい思いするよりも
好きなことをさせてやりたいんだ。
今回だって
もし、治療していたら
こうしてここには来れなかったんだから。』
と、言う。
『………それでも………』
ニノは諦めきれずに何かを言おうとするけど
それを翔くんが制して
『俺たちで決めたんだ。
ごめんな。
本当にごめん。
でも、俺たち…………
最後まで笑っていようって…………
そう決めたんだ。
だから、雅紀もニノも………
笑ってくれよ。
なっ。』
そう言ってる翔くんが泣いてりゃ世話ないよ。
『わかった。
いっぱい笑って………
病気吹き飛ばそうぜ。
なんか、マメリカの研究で
笑うとガン細胞が死ぬんだってさ。
そうゆう結果が出てるんだって
だから、いっぱい笑おう。
ねえ翔ちゃん。
笑おう。
ほら、
わははは………わははは…………』
と、まーくんが
態とらしく笑い始めた。
でも、その目には涙が溜まってた。