「………智…………
………智………………
俺………………
お前を一人では……………
…………行かせないから…………」
東京に戻ってからの智は
体調の悪い日が多くなった。
『体力が落ちましたね。』
『痛みは薬で散らしますね。』
『ご飯は食べれますか?』
『点滴をしましょう。』
と、緩和治療の先生が処置をしていく
2時間ほどの点滴をして
やっと少し動けるようになる。
そんな智を見ていると
俺は苦しくなる。
俺は選択を間違えたんじゃないかって……
ちゃんと治療してたら
もう少しは元気でいられたんじゃないかって……
無理いって田舎に帰ったのも
よくなかったのかもしれない。
俺は、智の"死"と言うものが
あからさまに目の前に見えてきて
怖くなる。
『やっほー。』
って、突然やって来たのは雅紀と二宮。
なんだかいろんなものを両手に持って
夕方やって来た。
智もその頃には顔色を戻し
二人の突然の訪問に驚きながらも喜んでいた。
『どうしたの突然?』
俺が二人を招き入れると
『忘れてるでしょ。』
と、ニノがニヤニヤしながら入ってくる。
『絶対忘れてるわけないって
俺が言ったんだけどでね。
お祝いは大勢の方がいいでしょ。』
と、雅紀。
『お祝い?』
俺と智は意味がわからずにキョトンとしてたら
『やっぱり忘れてた?
ここ。
なんの日?』
と、ニノがカレンダーの11月26日を指差した。
『あっ!!』
今日は、智の生まれた日。
すっかり忘れてた。
毎日がいっぱいいっぱいで
余裕がなかったってことを思い知った。
ニノがやっぱりって顔をして
『はいこれ。
ケーキね。
それからお総菜とワイン。』
と、テーブルに並べていく。
『美味しそうでしょ。
このスパゲティは俺が作ったの。
食べて食べて。』
と、雅紀。
食べきれないほどテーブルに乗せて
『さとぴ、
26才おめでとう。』
と、グラスにワインを注いで乾杯をした。
あと、どれくらい生きられるんだろう………
あと、どれくらい一緒にいられるんだろう………
あと、どれくらい智の笑顔を見れるんだろう……
そんなことを考えてたら
『翔さん。
暗いですよ。
なんですかその顔?
ほら、笑って笑って』
と、ニノが俺と智の写真を撮ってくれた。
予期せぬ二人のお陰で
智の26才の誕生日を祝うことができた。