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「…どう?」
『うまいよ!ハンバーグ食べたかったの!』
私が作った夜ご飯を2人で食べるのは、週に2、3回程度。
「雅紀、次来られるのいつ?」
『んー…、途中から仕事入るかもしれないけど…3日後かなぁ~…。』
3日…。
「…また、会えなくなるね。」
『…たったの3日だよ?今日は泊まるし…』
「ん…。」
『まぁまぁ、今日を楽しも!明日は明日。今日は今日でしょ!』
「…ん。…だね!ごめん。」
『よかった、元気出た?』
「うん。」
『ねっ、ご飯食べ終わったらさー、遊ぼ?』
「え~、何それ(笑)」
『ね?ね?いいでしょ!』
「いいけど~(笑)」
『よしっ!』
そう決めると、雅紀はハンバーグを一気に食べ終えて、私の腕を引っ張った。
「んっ!お皿洗いしなきゃ…、」
『遊ぼーよー』
「だめだよー、油は落ちないんだからー…。」
『う…、じゃあいいよ。そのかわり、早く終わらせてよ?』
「はーい。」
『俺お皿拭くよ』って言ってくれたけど、雅紀のケータイに電話がかかってきたみたいで。
『あ…、電話…。』
雅紀がチラッと私を見る。
「いいよいいよ、私やるから。仕事の電話でしょ?」
『うん、ほんとごめん。』
申し訳なさそうに電話に出ると、そのまま部屋から出て行ってしまった。
「ふぅ…。」
もしかしたら、これから仕事に行かなくちゃいけないことになっちゃったのかも…。
でも…お仕事だからしょうがない。
『ごめんごめん、お待たせ~。』
「今から、仕事…?」
『ううん!行かない行かない。』
雅紀はタオルを手に取ると、慣れない手つきでお皿を拭き始めた。
『なんかさー、なんか…、』
「ん?なに?」
『しりとりしたい気分だよね!』
「え?今?(笑)」
『うん!』
「お皿洗いながら?」
『うん!』
「ふふふ(笑)いいよ。」
『じゃあ、俺からね。り…、りす!』
「す…、水筒。」
『ううう…、歌!』
「た~?…短気!」
『短気(笑)き…き……、』
「き だよ?き なんかいっぱいあるじゃん!」
始めに“き”のつく言葉が思い浮かばないの?
どうせふざけてるんだ、なんて思って待っていたら…、
『…キス……してもいい?』
なんて思いもよらない発言をして、近付く雅紀の顔。
『…次、“い”だよ…?』
ずるいよ…
そんな顔で言われたら
「い…よ…、」
そう言うしかないじゃない。
『“よ”かった…。』
待っていたかのように唇を塞がれた。
「…ん、…水…出しっぱ…、」
唇を重ねたまま、雅紀が水を止める。
二人しかいない静かな部屋に、二人だけの小さな吐息が響く。
「もっ…、息…」
『…もう?早くない…?(笑)』
知ってるでしょ?
私がキス下手なの…。
上手な雅紀とは違うの。
『で、どこまでいったっけ?』
「え?何が?」
『しりとり!』
「続いてたの?」
『もちろん。…“よかった”…だから、“た”だよ。』
「た…タンス。」
『…酢豚。』
「タイ…」
『板。』
『また“た”?(笑)』
「頑張れ!」
それからしりとりを続けると、雅紀は最後に“た”のつくものしか言わなかった。
「もう!“た”ばっかり!」
“た”が嫌いになりそう…!
『何?もうネタ切れなの?』
「“だ”じゃ駄目?」
『そんな可愛い顔で言っても駄目~。』
「ケチ!」
『ヒントあげよっか?』
『流しそうめんする時に使うものといえば?』って意地悪そうな表情で尋ねる彼。
「…あっ!竹ー!」
『せいかーい(笑)け…け…け~…』
“け”なんていっぱいあるのに…、また分からないふりしてる?
雅紀が口を開いたと思ったら、耳を疑う言葉がとびでた。
『結婚したいな。』
え…?
まさか…ね。
「“な”んの冗談?………………あ、“ん”ついちゃった…」
あははって笑ってみたけど、雅紀の真剣な顔は変わらなくて…。
私に向けた真っ直ぐな視線で、こう呟いた。
『冗談じゃないよ…。』って。
これって…さ…
「…プロポーズ?」
『あちゃ…失敗?』
じゃあ、最初からその気でしりとりを…?
するといきなり立ち上がった雅紀は、自分の鞄から、ドラマとかでしか見た事がなかった手の平サイズの小さな箱を取り出した。
「嘘っ、ほんとに?」
『手ぇ、かして?』
雅紀に手を握られて、キラキラの指輪が目に入った。
けど…、
「雅紀…?それ、右手だよ?」
『あっ!間違えた!左こっちか!』
「もう…、ムード台無し…(笑)」
『ごめんごめんごめんね!ほんっとごめん!』
だけど、それがまた雅紀らしくて、嬉しいのか可笑しいのかわからない。
笑みと一緒に涙がこぼれる。
「嬉しい…。」
『よかった。喜んでもらえて。』
「ん…、大好き。」
『俺は“愛してる”だけど?』
そりゃ…もちろん、
「私も…愛してる…。」
しりとりから始まった、思いもよらないプロポーズ。
だけどそれは決して遊びなんかじゃなくて。
『しりとりはさ、』
「うん。」
『“ん”がついたらそこで終わりじゃん?』
「うん。」
『俺らは、どんな不幸がきたって絶対終わらないよね?』
「…うん。」
そう…。絶対…ね?
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sue.