甥がフェンタニルの過量摂取で急死 | 大野純司のブログ

甥がフェンタニルの過量摂取で急死

 フェンタニルと言っても、日本では知らない方が多いと思います。1960年頃、末期の癌患者などの痛み止めとして開発されました。モルヒネの100倍、ヘロインの50倍の効力を持ち、10年ほど前から乱用が急増しています。現在、フェンタニルの過剰摂取で亡くなるアメリカ人は1日200人以上。経済格差や人種に関係なく、多くの方々が犠牲になっていますが、特に多いのが若者です。

 フェンタニルの犠牲者が多い理由は二つあります。一つはほかの薬物より強力であり、致死量は2ミリグラムです。赤ちゃんが床に落ちていたフェンタニルの粉を舐めて死亡したというケースもあるくらいです。

 第二に、フェンタニルは人気のある処方薬の偽造バージョンを製造するために使用されます。これらの偽の錠剤は、ザナックス(精神安定剤)、アデロール(中枢神経刺激薬)、オキシコンチンやパーコセット(鎮痛薬)など、本物の錠剤そっくりです。外見や臭いで見分けることはできませんし、味見もできません。麻薬取締局(DEA)の捜査官でさえ、本物の錠剤と偽造錠剤の違いを見分けることはできないのです。

 そのため、フェンタニルで亡くなる多くの人は、自分がそれを飲んでいることさえ知らないのです。メッセージが匿名ですぐに消えてしまうため、麻薬販売で人気のソーシャルメディアアプリであるSnapchatを利用して購入する人が多いようです。オピオイド系の鎮痛剤を麻薬の代用品として、あるいは学生が試験前の一夜漬けのためにアデロールを購入する際など、処方箋が出ないので、このような危険な購入方法を使うのです。

 あるケースでは、高校卒業パーティーに行った二人の女子高生が、一錠のパーコセットを半分ずつ飲んで、一人が亡くなりました。偽造錠剤は非常にずさんに作られているため、致死量のフェンタニルが錠剤に万遍に含まれていないのです。一人だけ亡くなったのはそのためで、DEAによると、偽造錠剤で致死量が含まれているのは40-70%だそうです。

 これを米国に密輸しているのはメキシコの麻薬カルテル(犯罪組織)です。彼らは中国から輸入された化合物でフェンタニルを製造します。これらの錠剤は、国境を越えて全米のディーラーに運ばれるのです。

 なぜカルテルは多くの顧客を殺すような薬を作るのか、と疑問に思われるかもしれません。答えはお金です。カルテルが偽造錠剤を製造し、米国で、10ドルで販売するのにかかる費用は、わずか10セントです。その利益は莫大で、年間何人亡くなろうが、彼らにとっては問題ではありません。

 ですから、医師や薬剤師から出たものでなければ、どんな錠剤も飲むべきではありません。信頼できる人からもらったものでも、それにフェンタニルが含まれているかもしれないということは、本人でさえ知らないかもしれないのです。

 

 家内の甥がどのような経緯でフェンタニルを摂取したのかは分かりません。彼は、ある殺人事件に関わり、本人はその場にいただけで、殺したのは仲間だと言っていましたが、有罪になって、大人としての人生をほとんど刑務所で過ごしました。出所してからまだ1年も経っておらず、家内は会ったこともありません。

 ご両親は、彼のガールフレンドがわざとフェンタニルを含んだ偽造錠剤を与えて殺したのではないかと疑っています。ご両親が言っていることが本当かどうかは、知る由もありませんが、証拠を残さないように殺人に利用されることはあるそうです。

 家内は、お姉さんを精神的にサポートするために帰省しました。家内は、あまり良くない家庭環境で育ちましたが、高校生の時にクリスチャンになり、牧師家族宅でお世話になりました。家内も、信仰を持つまでは麻薬に手を出したことがあるそうです。神は家内の人生を変えてくれました。

 

 最後に、米国の政治で移民がよく問題になりますが、フェンタニルもその理由の一つです。難民の対処で国境警備がおろそかになっているのを利用して、メキシコのカルテルがフェンタニルを密輸しています。人身売買や密入国斡旋だけではありません。また、中国政府も、自国からフェンタニル製造に使われる薬品が輸出されていることを知っていながら、十分な対処をしていないと非難されています。