レイプの犠牲者
半年ほど前、家内が数年前働いていた店の上司から電話がありました。妹夫婦がアメリカ本土から引っ越してきたのだが、当てにしていたところに住めなくなったので、しばらく泊めてあげてくれないかというのです。妹さんのご主人は、建築労働者でしたが、不況で解雇され、妹さんの里のハワイに引っ越してきたわけです。今、アメリカの建築業は失業率がほかのどの業界よりも高いので、仕事が見つかるまでには相当かかるでしょう。妹さんは一見普通の人でしたので、なぜ働かないのかなと思っていました。お姉さんの店で働こうと思えば、雇ってもらえるはずだと思っていたのですが、こちらから根掘り葉掘り聞くことはしませんでした。
ある日、二人をバーベキューに招いてあげて、一緒に食事をしていたら、妹さんが身の上話を始めました。以前、レイプされてから、不安発作で、外に一人で出ることができないのだそうです。誰か知っている人がそばにいないと、不安で仕方がないのです。知らない人の中にいると、自分は大丈夫なのだろうかという不安ばかりがつのって、まともに会話をすることもできません。教会の礼拝にも、出たい気持ちはあるのですが、今はまだ難しいと言うことでした。もちろん仕事などできる状態ではありません。
レイプ自体は、気を失って、何も覚えていないそうですが、心に相当深い傷を残してしまいました。今、精神病医の指示で、少しずつ知っている人から離れた場所に行ったり、それほど良く知らない人と一緒にいたりする訓練をしています。3年ほど前ガンになり、もう数年しか持たないかもしれないと言われたのが治ったので、残りの人生を有意義に生きたいと思って、一生懸命がんばっているのだそうです。
ほんのつかの間の楽しみのために彼女の人生を狂わせてしまった犯人は、彼女が長い間どれほど苦しんでいるのか、きっと知らないでいるのでしょう。しかし、同時に、そんな犯人を恨む気持ちは、彼女を被害者意識に閉じ込めてしまいます。被害者でありながら、被害者としての自分にとどまる限り、痛みは続くだけだというジレンマがあります。でも、彼女のポジティブな態度を見ていると、この不安を克服できる日は、そう遠くないような気もします。心から応援をしたい気持ちです。