眠りから意識が戻った。
目の前を見据え据えると、カーテンから陽が漏れてる。
一瞬ここがどこだか分からない。
あ、そっか
帰ってきたんだったな
頭の痛みが遅れてきて、薬を間違えて飲んだ事に追って気付く。
やれやれ
まだ若干怠いけど、眠気は殆んど失せた。
変な夢見ちゃいそうで、眠るのが怖くなってんのかもな
ナカタはタバコを出してくわえた。
何時なんだろ
携帯を開いて見ると、液晶の時計はまだ午前七時をさしていた。
もう昔みたいに半日寝たりとか出来ねぇな
まぁ、年取ったせいかもな
ナカタは伸びをした。
冷房が消えていた。
多分寝ながら寒くて消したんだろうな
部屋の中が夏の温かみを帯びつつあった。
ナカタは転がったリモコンを取り上げると、テレビを点けてみた。
テレビから朝っぱらのニュース番組が流れる。
昨夜の大騒ぎが挙って取りあげられていた。
そりゃそうだよな
あんなの聞いた事ねぇもん
一連の騒ぎで人の命がいくつも失われた。
とんでもな一大事だよな
あの後遺体はどうなったんだろ
素人目にも危険は十分伝わってる。
また出くわすんだろうな
しかもそれはそんなに先の事じゃあねぇ
何故かナカタはそういう風に思った。
とりあえず今日をどう過ごすかだよな
やっぱり会社にはきちんと連絡するべきだよな
昨日あんな事に出会して尚、ナカタはそれを気に病んだ。
「おい、起きろよ」
声がして、肩を揺さぶられる。
「触んじゃねぇよ!」
トヨマキはその人影を突き飛ばした。
交代の同僚だった。
チッ
うっぜぇ
「あ、わり」
横になった姿勢からベッドの上で胡座の姿勢になると、申し訳なさそうにクシャッと顔を歪ませ、タバコをくわえた。
突き飛ばされた同僚は呆れた顔をしている。
こいつ全然申し訳ないなんて思ってねぇじゃん
誰が見ても分かる事だった。
「お前、ここで吸うなって言われたろ」
「あ?関係ないっしょ」
紫煙をプカプカさせる。
こいつほんとにイカれてるよ
「会社戻れってよ」
「え?」
「トヨマキ早く出してこいってから、朝っぱらから来たんじゃねぇか」
さすがに家に帰れるんだろうなぁ
「結構仕事入ってたから、どっか打ち合わせ飛ばされるんじゃね」
「ああ?マッジッかよっ!」
ガンッ!
この会社マジでイカれてる
トヨマキは叫びながらロッカーにパンチした。
「引き継ぎは?」
「何にもねぇよ」
トヨマキはそう吐き捨てた。
実際は段取りしていない故人が二人安置されていたが、トヨマキはそれを同僚に言わなかった。
「マジで有り得ねぇだろっ!」
霊安室に叫びが響き、ガコンッ!とゴミ箱が蹴られる音がした。
遺族は衝立の向こうにいたが、トヨマキにはもはやどうでも良かった。
まだ八時だぞ
しかもあんな目に遭ったのに、まだ働かせんのかよ
マジでイカれてる
トヨマキのような人間がいられる会社なんて、そんなもんだった。
地下から地上に出る。
搬入搬出で使うスペースになっている。
昨日トヨマキがネダを見送ったところだ。
会社のハイエースが停まっている。
運転席に入ると、同僚がコンビニで買った食い散らかしが座席に置いてあった。
「くそったれが!」
トヨマキはそれを掴むと、勢いよく車外に投げ捨てた。
あいつら、俺が何を持ってるか知らねぇんだな
トヨマキはどさくさに紛れて、とある物を病院から持ち出していた。
※上記一切は創作につきフィクションです。