つづきです。

 

 

 

いま、現場検証をしているので

また後で電話をすると言って

電話は切れた。

 

 

受話器を持ちながら

 

こいつ、やりおった

 

そう思っていた。

 

 

夫は不注意からのケガや事故が多く

以前から心配していた。

しかし、まさか人を死なせてしまうとは

思ってもみないことだった。

 

 

電話を切ると

世界が変わっていた。

 

 

空気中の粒子が

針のように全身を刺すような

歩くたびに体を辛さが覆うような

酷い感覚だった。

 

 

T班長が

「なんでもなかった?」

声をかけてくる。

 

人に話せば気が紛れるかと

話してみようかと試みる。

「旦那が・・ぎょ、業務上・・か、かしつ・・・

ぎょ、ぎょうむじょう・・かし・・」

 

どうしても致死と言えなかった。

 

班長は

「え?業務上?

あ!横領??あー決算の時期だもんね」

 

横領するような仕事の内容でもないし

決算の時期でもない。

班長の言葉に

気持ちが和らいだが

それも一瞬のことだった。