昭和には廃墟と化していた運河は、観光の目玉として生まれ変わり、観光船も出帆をするようになりました。今回は、そんな運河の周辺にある、歴史的価値の高い建造物、中でも商家に絞って、めぐってみます。

 

田中酒造・本社

明治32年(1899年)創業、小樽運河のそばにある、造り酒屋。清酒「寶川」で知られ、ここ

でしか買えない地酒もあります。本店の家屋は昭和2年築、木造の2階建て。酒蔵の亀甲蔵は無料見学ができます。

 

  

 

田中酒造・亀甲蔵]

1号棟は明治38(1905)年、2・3号棟は明治39(1906)年創建。木骨石造1階で、一部2階建となっています。明治初期、小樽で初めて市街地が形成された地区にあります。

海側の倉庫1号棟は、臨港線の拡幅工事で一部が切除されているのが見た目にも判ります。たる木を棟から軒桁に架けるだけの「たる木小屋」で、3棟とも基礎は、土台と柱の腐朽を防ぐため、下部に煉瓦を積み、その上に軟石を重ねた構造になっています。

 

 

事前の予約で無料の見学が出来ます。もちろん、試飲付き。ここは年中通して仕込みを行う温度管理の出来る装置を備え、訪れた9月初旬も、仕込みの真っ最中。

 

 

[魁陽亭]

明治29(1896)年頃の建築で、木造2階建。名称は創業期の魁陽亭から開陽亭、海陽亭と変更され、建物も大方は大正期に増築されたものですが、2階の大広間「明石の間」は、竣工当時のままと推定されています。明治39年には、日露戦争による樺太国境画定会議後の大宴会がここで開かれ、日本史の舞台にも登場し、その後も多くの著名人が訪問:アラン・ドロン、田中角栄、松本清張、岡本太郎、長嶋茂雄、石原兄弟など。

  

 

[旧・名取高三郎商店]

明治39(1906)年、山梨県出身の銅鉄金物商の名取氏が、明治37年の稲穂町の大火後に建てた店舗で、現在は工芸品店[大正ガラス館]として使用されています。

珍しい鉄の支柱による石造りで、外壁は札幌軟石が使われ、西南側に防火用の袖壁(うだつ)が設置されています。

 

[旧・久保商店]

メルヘン交差点に程近い、明治40(1907)年築の木造家屋です。小間物雑貨の卸屋「久保商店」として竣工、現在は甘味処「くぼ家」として使われています。

 

[旧・近藤硝子店]

大正期初期の竣工、近藤ガラス店の工場兼店舗でした。円柱の間に、大きな硝子板をはめ込んだショーウィンドーがお洒落で、近藤商店だけでなく、正面両脇に板硝子、洋食器の看板二もモダンなセンスが漂います。小樽市都市景観賞を受賞、現在はダイニングCafeとして人気です。

 

 

まだまだ続く小樽のレトロ建築の旅‥ 商家篇2もご覧ください。