3新日本昔話「河童の恩返し」

第三話


河童は自分のせいで推しの踊り子さんが契約解除になってしまったのでとてもショックを受けました。

「それでは、河童家に伝わる伝説の宝物である尻子玉で過去を消し去ろう!」

尻子玉とは名前はちょっと下品ですが、不思議な力を秘めている宝珠のことです。

普通は河童が相撲に勝つと人から奪うとされていますが、河童が使うとどんな願いもかなうと言われています。

「そうだ、スマホとLINEを21世紀まで消し去ろう。そうすればLINEで繋がったことがなかったことになる…
えいっ!」

すると不思議なことに、漠捨座の踊り子さんたちの名前が名簿に戻ってきて、いつものように舞台で歌ったり踊ったりする姿が現われました。

夏摘姫もなにごともなかったかのように舞台で歌ったり踊ったりしています。

しかし、河童が尻子玉を使うと、その前後の記憶もすべて消えてしまうのです。なぜなら記憶を消さないとあたしのスマホがなーい、LINEがこの世から消えた! と大騒ぎになってしまうからです。

もちろん、愛し合ったことすらも…

もう河童と夏摘姫が街ですれちがっても元の見知らぬふたりに戻ってしまいました。

しかし、夏摘姫のお腹の中にはふたりの赤ちゃんがいて、すくすくと育っていました…

めでたし、めで…たくない! ただの無責任なオッさんやないか、河童の奴!

新日本昔話「河童の恩返し」

第2話


今日は神田明神の祭礼の日です。

年に一度、祖先の霊が戻ってくる聖なる夜には不思議なことが起きると言われています。

河童は自分も妖怪なので幽霊とかはべつになんとも思いませんが、いつも賑やかな境内がさらに賑やかになるこの夜は夜店で明るく照らされた境内を歩いてみたくなりました。

もう漠捨座には行けなくなってずいぶんたちます。

LINEには夏摘姫からのメールもありません。メールを送っても未読のままです。

どうしたんでしょう? ひょっとして契約解除?

漠捨座では契約解除になると、名前が名簿から消え、店ではだれもその人の話をしなくなります。

しかし、年に一度の祭礼の夜には、契約解除の踊り子も戻ってくることがあると言われているので、ひょっとして夏摘姫に会えるのではという淡い期待もあったのかも知れません。

そして、伝説どうり不思議なことが起こりました。

あの大ヒット舞踊「プ露デュース」の中心位置(センター)だった桃姫、ついこの間の短盤(シングル)「おー!私の運命」の通常盤のセンターの華姫などなど漠捨座で活躍した姫君たちが大集合しています!

その中にはもう会えなくなった夏摘姫もいるではありませんか⁈

「夏摘姫! どうしたの? 契約解除になったの?」

「そうなの、LINEで河童と繋がってるのがバレて契約解除されちゃった」

「え? じゃ僕のせいで?」

河童はとてもショックでした。

(思いの外長くなってしまったので以下次号!)