❏❏❏ 回顧録:2007年9月18日 東京・自宅

 

ステロイド療法74日目、3回目の手術から41日目

 

午前10時半、慈恵医大・呼吸器内科の待合室。

 

自分の名前が呼ばれるのを待っていた。

 

退院したが、呼吸器内科を2週間おきに受診していたので、病院にはたびたび来ていた。

 

呼吸器内科の待合の雰囲気が好きではなかった。

 

なぜなら、常に咳をしている患者が何人かいるからだ。

 

私も咳をするときはあるが、他人の咳は近くで聞きたくないものだ。

 

みんなどんな病気なのだろうか?

 

車いすに乗っている患者、

 

酸素ボンベからチューブを鼻に入れ、ボンベ車を引いている患者、

 

明らかに具合が悪そうな患者、

 

呼吸器内科の患者はみんな辛そうだ。

 

「大久保さん、32番にお願いします」

 

皆川先生の声が聞こえた。

 

中に入ると、いつもの通り画用紙ほどの大きさの胸部レントゲン写真を2枚見ている。

 

一つは前回のもの。

 

もう一つは先ほど撮影した写真だ。

 

私はいつもこの時間が嫌だった。

 

私には左右の胸部レントゲン写真の違いが判らないが、先生はわかる。

 

何を言われるのか?不安な時だ。

 

「あまり変わらないですね」そう言った。

 

つまり、改善が見られないということだ。

 

逆に言うと「悪化していない」ということでもある。

 

私は、この微妙なニュアンスが、長い間わからなかった。

 

だが、保守的なお医者さんたちからすると、悪くないということだ。

 

なぜなら、がんから発症した間質性肺炎は、自然に進行してしまうことがある。

 

変わらない=悪化していていない、

 

だから薬の量を減らしましょうということになる。

 

不思議なものだ。

 

だから薬の量を増やすのではない。

 

この治療に使う「プレドニン」は長く服用すべきものではない。

 

だから、早く薬治療を終わりにしたいと医師は考えているのだ。

 

「大久保さん、明日から10㎎に減らしましょう」

 

そういわれ、診察室を出た。

 

よかった、減薬だ。

 

患者にとって、うれしい知らせだ。

 

確実に治療の出口に向かっている、この時はそう思った。