❏❏❏ 回顧録:2007年8月31日 東京・自宅
ステロイド療法56日目、3回目の手術から24日目
※後腹膜リンパ節郭清手術により、腹部から取り除いたリンパ節約50個は、がんの壊死組織だった(2007年8月13日)。
8月の終わりである。
まだまだ暑い。
私の両脚は、まるで大根のように膨らんでいた。
明らかに浮腫んでいるのだ。
痛いとまではいかないが、なんとも重くだるい感じがする。
友人の妹が外科医だったので、時々、メールで質問していた。
普通なら、医者は自分の患者でない場合、うかつなことを言えないからメールでの質問に答えるなんてしてくれない。
でも、彼女は兄の友人だということで快く質問に答えてくれていた。
脚がむくんで重くだるいと書いたら、こんなことを指摘された。
「手術=リンパ節郭清の影響かもしれません。時間がたてば自然に治りますから安心してください」
そんな内容だった。
どういうことかというと、がん医療の世界では、時々、「リンパに転移する」なんてことを言う。
これは、正確には「リンパ節」に転移する、である。
身体の中には無数のリンパ節があり、リンパ液のため池みたいな役目を果たしている。
がんが転移するとリンパ液に乗って身体中を移動することもある。
そうなると、ため池のリンパ節はがん組織となる。
それがリンパに転移した状態だ。
だから、リンパ節郭清術という、リンパ節をのこそぎ剥ぎ取る手術をする。
そうなると、身体の一部分にリンパ節がなく、リンパ液などの体液がだだ洩れになって
重力により脚のほうにたまる。
それが、むくみとなって現れる。
私の両脚にそれが起きていた。
では、どうすればいいか?
よく医師が勧めるのは「ウォーキング」だ。
歩いて、溜まった液体を体の上部に戻す作業をすればいいということだ。
この日、私は運河沿いの歩道を、よたよたと1時間くらい歩いた。
夏の暑い日、がん患者の私は、ただひたすら運河沿いを行ったり来たりと歩いていた。