❏❏❏ 回顧録:2007年8月27日 東京・自宅

 

ステロイド療法52日目、3回目の手術から20日目

 

※後腹膜リンパ節郭清手術により、腹部から取り除いたリンパ節約50個は、がんの壊死組織だった(2007年8月13日)。

 

私は病院から自宅に戻った。

 

ちょうどこのタイミングで、妻と娘(9歳)息子(6歳)が温泉旅行に出かけた。

 

まだ小学生の子供達だが、父親が「がん」で入院していて8月の夏休み中、どこにも旅行に行けていない。

 

不憫でしょうがない妻と妻の親が、みんなで温泉旅行に行こうと誘ってくれたのだ。

 

ありがたかった。

 

私は既に普通の食事を取れていたし、退院したのだから大丈夫。

 

安心して言ってきて欲しい、と送り出した。

 

 

(初日)

体重計に乗ってみた。なんと入院前よりも3㎏減っていた。

 

オペ後に食事がとれていなかったのだから仕方がないが、それにしてもわずか3週間で3㎏も減っていたのには驚いた。

 

 

「運動しなきゃ!」

 

そう思って、近所のコンビニまで出かけた。

 

なんともよろよろと歩いて、家に戻ってきたときには、両脚の太ももが筋肉痛で痛い。

 

 

やはり、病院の外の世界は、病院の中とは大違いだ。

 

※病院内だと、ラウンジまで少し歩いて疲れると、看護師が車椅子を持ってきてくれて部屋に帰れた。しかし、いまは違う。実際のリアルの世界だから、家に帰るのに応援を呼ぶなんて出来ない。

 

 

夕方、夕食を取るために、行きつけのイタリア料理屋に行くことにした。

 

駅の反対側だ。

 

歩いて10分もかからないところにある。

 

いつもなら家族4人で歩いていく「近くのレストラン」だ。

 

 

だが、そこまで歩く自信が無かった。

 

道路で手を上げてタクシーを止めた。

 

 

場所を言うと、運転手の人は「えっ?いいんですか?」そう言った。

 

 

歩いて10分もかからない所まで、自分の脚で歩けない。

 

情けなかった。

 

 

レストランのウェイターは、ビックリした様子で、久しぶりに会えたことを喜んでくれた。

 

家族は旅行中だと説明し、一人分の夕食を作ってもらった。

 

 

レストランで食べる食事は本当に美味しかった。

 

病院の食事とは大違いだ。

 

リアルの世界に戻ってきたことを実感した。

 

地階にあるレストランだったので、階段の上り下りはきつかった。

 

 

帰りもタクシーで帰った。

 

乗車時間は2~3分だった。