❏❏❏ 回顧録:2007年8月8日 東京・慈恵医大病院
ステロイド療法33日目
がん2度目の手術(後腹膜リンパ節郭清手術)の日。
朝6時頃に目が覚めた。
この年、手術を既に2回経験している。
でも、ここまで緊張はしていなかった。
1回目は、足首の骨折で運ばれた2月。
足首の手術だし、骨折だし、命の危険はない。
2回目は、がんの手術だったが、病巣の精巣の手術だから頭の位置より遠かった。
しかも、それで「がん」は終わると信じていた。
しかし、3回目の今回はお腹だ。
やはり、腹部を切るとなると今までとは全く違う。
しかも、もし手術でバイアブル(活動性の)がんが見つかれば、四たび抗がん剤治療が始まる。
更に、この手術はプレドニンを服用したまま免疫力を落として行う手術だ。
危険度がこれまでとは段違いに違う。
今日は朝食を取れない。
だって、直ぐに全身麻酔をかけられるんだから。
全身麻酔のときは、身体に力が入らない。
だから、全部垂れ流しになってしまう。
死んだ人の肛門から便がだらだらと出るのと同じだ。
便は、その人が生きているから、肛門が閉まり、尿道も制御されているから、小便・大便は垂れ流しにならない。
でも、数時間後に行う全身麻酔は、まるで仮死状態で自分でチカラを入れられない。
間もなくしたら浣腸をして大腸の中のものを出さなくてはいけない。
看護師が手伝うと言ったが、恥ずかしくて断った。
自分で四苦八苦してやってみたが、上手くできなかった。
入れる時に浣腸液が漏れたし、直ぐに便が出てしまい大腸の中が空になったのか解らない。
それを伝えると、まあいいでしょう、という答えだった。
その後、導尿チューブを入れるという。
これは過去2回のオペで経験した。
男の医師にされるのだが、それでも恥ずかしいし、痛い感じがした。
つまりペニスの先から、おしっこの出る出口からビニル製のチューブを入れ、点滴パックみたいなバッグに小便を垂れ流すものだ。
それも終わった。
この時、私は、身体から2本の管が出ている。
左腕の点滴。
そして、導尿チューブ。
なんか、ガリバーが小人たちに身体中をロープで繋がれたようで、なんとも不自由極まりない。
嫌だった。
体重は63㎏、血圧は、118/70、体温は36.6度
この数値だけなら、がん患者ではない。
だが、今から1時間半後に、長時間のがん手術を受ける。
その時が近づいていた。