❏❏❏ 回顧録:2007年8月7日 東京・慈恵医大病院

 

ステロイド療法32日目

 

ラウンジから部屋に戻った。

 

私は個室に入っている。

 

以前は6人部屋にもいたが、私の性格上、どうしてもほかの人がいると気を使ってしまい、治療に専念できない。

 

6人部屋は無料だが、個室は有料だ。

 

東京の大きな病院の個室は、個室料金が高い。

 

まるで東京のホテル並みの金額だ。

 

私の調べた限り、東大病院で25,000円、慶応大学病院は、4万円以上だ。

 

ただ、これは東京の大きな病院だからという金額だ。

 

私の生まれ育った長野県の信州大学付属病院では8,800円。

 

しかし、それでも、長野県の地方でも8,800円だ。

 

いまの5yearsの活動をしていてわかる。

 

地方から上京して東京とかの大都市の大きな病院で、がん治療のために入院する患者さんたちは、まあまあいる。

 

やはり、がんという命が係わる病気だと、「この病院で治療を受けたい」と上京することは理解できる。

 

ただ、皆さん、個室に入ろうとすると「こんなに高いの?」と驚かれる。

 

個室に入る。

 

これは、何も、贅沢をしているわけではない。

 

私は骨折で1か月入院したが、その時は、個室と6人部屋の、心理的な違いはなかった。

 

しかし、「がん」という病気は、骨折と違い、命がかかわっている。

 

そんなとき、周囲の人に気を使うとか、精神的な負担が増すことはキツイと感じる人も少なくないだろう。

 

それは家族も同じだ。

 

私は、抗がん剤治療が始まることから、個室に移っていた。

 

 

ラウンジから部屋に戻るとき、気が付いたことがひとつあった。

 

3つ向こうの個室が空になって、掃除をしていた。

 

「えっ、、確かこの部屋は、ずっと同じ患者が入っていたはずなのに」

 

半年間にわたり、入退院をしていると、まるで、住んでいる学生寮のように、住人のことが解る。

 

3つ向こうの部屋は、男性の患者で、私が入院する前からいた。

 

見舞いの家族はほとんど来なくて、看護師だけが部屋を出入りしていた。

 

聞こえる声とか、雰囲気から高齢の患者だった。

 

その部屋が空になっていた。

 

もしかして、、

 

いや、もしかしてではなくて、恐らく、そういうことだ。

 

病院だから、亡くなる人がでるのは日常的にでるだろう。

 

ただ、今の今まで、自分のことで精いっぱいで、ほかの人のことまで気が回らなかった。

 

あの部屋の人が、亡くなった。。

 

三つ向こうだ。

 

死を身近に感じ、明日の手術を前に、急に恐ろしくなった。