❏❏❏ 回顧録:2007年8月2日 東京・会社と自宅

 

ステロイド療法26日目

 

この日、妻は、一人で長野県の私の実家に墓参りに行った。

 

彼女は、東京の人だが、私のがん手術が近づいてきたため、行った。

 

私は、とてもじゃないけど長野県まで移動する体力が無いし、

 

万が一にでも、体調を崩したら大変なので、やめた。

 

それに、私は手術の前にご先祖様にお願いするなんて、そんな迷信じみたことはしない。

 

妻はどちらかと言うと、そういうことを気にするので、実家の母と一緒に日帰りの墓参りに行った。

 

それに、私は、このころ両親とギクシャクしていた。

 

がん患者にはそういうことがよくある。

 

家族が心配し過ぎるので、関係がこじれるのだ。

 

私の場合、両親が「抗がん剤治療なんて、怖い治療はやめてほしい、、」というとんでもないことを言うので、関係がギクシャクした。

 

患者本人が選び、良いと思っている治療に、家族が口を出す、、

 

仲が悪くなるに決まっている。

 

5yearsの活動をしていると、それがよく見える。

 

ある人は、手術を受け入れたのに、

 

家族が、週刊誌で読んだ「手術の名人??」の医師のいる病院に転院させようとしてけんかになる。

 

ある人は、自分ががんだと両親に言ったら、毎日、連絡をよこしてくるだろうから、

 

面倒くさいので、両親に言わなかったら、それが許せないと言われ、大けんかになる。

 

更に、ある人は、両親が、がんに効く水だとkさ、がんに効く壺だとか、とんでもないものを買いだして、ついには、しょ-もない新興宗教の罠に両親が入りだし、

 

家族で大けんかになり、患者が不憫でしかたなかった。

 

この日、私は、普通に会社に行った。

 

そして、会社の中にいる、がんをしたアメリカ人と会った。

 

彼女は乳がん経験者で、本人が公開していたので、みんなが知っていた。

 

彼女の部屋に行くと、歓迎してくれた。

 

私が、後腹膜リンパ節郭清手術を、嫌だけど受けると言ったら、

 

事情を聴いてくれた。

 

つまり、今の自分の状況だと、アメリカの論文では、がんが残っている可能性は20%だが、

 

10人の内、誰がその2割か?解らないから、10人ともお腹を切る大手術で受け入れられない気持ちだけど、受け入れる、その心情を告げた。

 

すると、彼女は、自分の話しをし出した。

 

彼女の乳がんは、遺伝性のものと言われ、

 

私と同じく、再発の可能性は2割くらい。

 

再発する場合は、別の乳房、卵巣、そんな順位になるという。

 

しかし、再発して、また人生を止められ、ごちゃごちゃにされるのが嫌だから、

 

再発もしていないのに、反対の乳房と卵巣を切除したという。

 

まさに、ナンジャリーナジョリーと同じ選択を、ずっと以前に行っていた。

 

「オクボサン、人生はすべて、トレードオフでしょ。何かを得ようとしたら、何かを失う、それはしかたがないことでしょ。私は受け入れました」

 

彼女の話を聞き、妙に納得した。

 

それまで、なぜ、8割の人が対象外なのに、こんな大きな手術を受けなきゃいけないんだと抵抗していたが、

 

お腹の中にまだ、活動性のがんがあるかどうか、切ってみて、はっきりさせることは大事なんだ、と思うようになった。

 

彼女の話は本当にありがたかった。