❏❏❏ 回顧録:2007年7月31日 東京・慈恵医大
ステロイド療法24日目
この日は1日中、慈恵医大病院の日だった。
妻の運転する車で、10時過ぎに泌尿器科を受診した。
待合室で待っていると「大久保さん、○○番のお部屋にお願いします」
アナウンスが流れ、部屋に入ると木村先生が穏やかな顔をして座っていた。
いよいよ入院が6日後、2度目の手術が8日後に迫り、その話を聞くために予定されていた。
セカンドオピニオンのたびに出た私が、手術を受ける覚悟を決めたため、先生は喜んでいた。
机の上で、リスクと期待される効果を説明していく。
いわゆる、インフォームドコンセントだ。
患者にとっては、理解を深め、不安が和らぐ。
ただ、実際には、様々なリスクと後遺症を説明されるので、理解は深まるが、不安が増えることも多い。
一方の医師は、説明責任を果たすことになる。
ただ、実際には、言った言わない、聞いてない、といった後々の患者トラブルを避けるための、病院側の保身術でもある。
もともと、私は、日ごろから質問して疑問は解消していたし、万が一のリスクが起きたとして、病院を訴えるなんて有り得ないから、いつもの儀式だと思ってサインした。
私が先生に一番聞きたかったのは、この手術の後、マラソンに復帰できる身体になるのか?だった。
木村先生は、「そうなるように、がんばりましょう」という表現で伝えた。
11時過ぎ、今度は呼吸器内科の皆川先生を受診した。
皆川先生は、明るい話と緊張する話をした。
明るい話とは、間質性肺炎の白い影が、一部和らいでいるという報告だった。
胸部レントゲン写真を見せられ、「ここです」と言われたが、いつものことながら、イマイチ理解できなかった。
後ろから透過光により照らされる壁掛けのスクリーンに、前回のレントゲンと今回のレントゲンを、比較のために並べてあるのだが、ここの白さが薄いと言われても、
「そういうもんなんだ」と思うしかなかった。
ただ、医者が判断しているのだから、そうなのだろう、良かった、と安どする。
一方の緊張する話は、こうた。
間質性肺炎の治療継続のため、合成副腎皮質ホルモン剤を投与しながら、手術を受けるという。
解りやすく言えば、薬で「免疫力を抑制して」、危険な手術を行うという事だ。
手術中は、出血もするし、感染症のリスクがある。
だから、「免疫力を上げたい」ところだが、間質性肺炎治療で「免疫力を低下させる」という、矛盾した状況を作ることになる。
「たぶん、プレドニン20㎎なら大丈夫でしょう」
そう先生は説明した。
この日、2人と医師と話し、大きな手術になると改めて理解した。
入院まで、あと、6日のことだった。