❏❏❏ 回顧録:2007年7月20日 東京・ゴールドマン・サックス

 

ステロイド療法15日目

 

昨日、4回目の退院をした。

 

ただ、何も終わっていない。

 

3月に見つかった「精巣がん」は、手術、抗がん剤治療とこなしたが、まだ、2度目の手術が残っている。

 

それで、組織を取り出してみて、病理検査して、「がん」が見つからなければ、がん治療はいったん終わる。

 

もし、1つでもがん細胞が見つかれば、四たび抗がん剤治療が時開始される。

 

私の身体と精神は、限界状態にあった。

 

もう、これ以上の抗がん剤治療は嫌だし、

 

だらだらといつまでも続く「がん治療」にも闘う気力が無かった。

 

さらに、抗がん剤(=ブレオマイシン)の副作用で発症した「間質性肺炎」は、2週間前に治療が始まったばかりだ。

 

今日、15日目。

 

入院しての点滴で入れる治療から、経口薬に替わった。

 

わたしは、点滴で入れる液体の薬が、固体の「錠剤」で飲み込めるなんて知らなかった。

 

よく考えたら、ありそうなものだけど、

 

最初に点滴だったから、「はい、これがプレドニンです」と薬剤師から経口薬を渡された時、ビックリした。

 

それなら、「なぜ、最初から錠剤で行わず、入院して点滴行ったのか?」

 

呼吸器内科の先生に聞いたところ、

 

2週間前、私は結構危険な状態だったそうだ。

 

だから、頻繁にレントゲン検査と、聴診器による肺の音の検査、血液検査をしていたので、入院していたほうが病院としても安心できたのだという。

 

ではなぜ、入院して錠剤の経口薬でなくて、点滴にするのか?

 

そう聞くと、「相変わらず質問ばかりする人だなあ」という笑にも似た表情で、

 

点滴だとそのまま血液として身体を巡るので、効果が早く出ること、などを言われていた。

 

この日、朝起きて、初めてプレドニンを飲み薬として服用した。

 

30㎎

 

たったこれだけの薬で、難敵・間質性肺炎と向かい合えるのか?

 

後で知れば知るほど、有難い薬だが、厄介であると解る薬。

 

 

この日、私は、務めているゴールドマン・サックスに復帰した。

 

がんの治療は終わっていないのに、

 

間質性肺炎の治療は始まったばかりなのに、

 

ハゲ頭のがん患者の私が、スーツを着て、革靴を履いて、会社に向かった。

 

会社が私の「しばらく復職したい」というお願いを聞いてくれた。