❏❏❏ 回顧録:2007年6月27日 千葉・柏の葉キャンパス
がんセンター東病院のセカンドオピニオンが終わった。
私と妻は、くたくたに疲れていた。
真剣な話し合いは疲れる。
しかも、命がかかわる話し合いだ。
私は、一昨日、がんセンター中央病院で「後腹膜リンパ節郭清手術」を受けるべき、というオピニオンを貰ったので、「またか、、」そんな残念な想いだったが、
一方の妻は、東京警察病院のオピニオンとは正反対の意見にビックリしていた。
これで3病院に意見を聞いたが、手術を受けるべきは「2つ」。
手術は受けず、今後は経過観察でいいが「1つ」。
2:1に、分かれている。
別に多数決で決めるわけではないが、それぞれの言い分は、納得できる。
なぜ、私がここまで「後腹膜リンパ節手術」に抵抗を示すかというと、
患者にとって損失が大きいからだ。
特に男性には。
腹部を切ると、筋膜などの下に、単純に言えば、「胃」「小腸」「大腸」という消化器がぎゅうぎゅうに埋め込まれている。
この手術では、リンパ液のため池にあたる「リンパ節」を50個前後、切除するのだが、
リンパ節は、「胃、小腸、大腸」の裏にある。
だから、医師は、一旦、「胃」「小腸」「大腸」をお腹から外に出して、
その裏にある、リンパ節をはぎ取っていく。
リンパ節は、身体の中にぶらぶらしているのではなく、
いわゆる、内臓脂肪の中に沢山埋め込まれている。
まるで、粘土の中にビー玉が、いくつも埋め込まれているようなイメージだ。
それを、ひとうひとつ、メスで、切り取っていくのが「後腹膜リンパ節郭清手術」だ。
問題は、その内臓脂肪層の中には、紙を束ねるように、さまざまな「神経網」が重なり合っている。
リンパ節を切除するには、どうしても、幾つかの「神経網」を切除しなくてはならず、
その結果、患者は、後遺症が残る。
例えば、排尿にかかる神経網を誤って切ってしまうと、おしっこを自然にできなくなる。
今回確実に切除しなければならない神経網の一つに、生殖にかかる神経網もある。
だから、独身男性の場合、子供が出来ない身体になってしまいかねない。
私は、既に6歳と9歳の子供がいるから、まだいいとしても、手術により、子供が埋めない身体になるのは残酷だ。
がんの治療で、仕方なく、切除するのであれば、まだ理解できるが(いや、理解できない人もいると思う)、
今回の手術は、10人に8人は、活動性のがんが無いのに、みんな、その手術を受けることで後遺症となる。
私には、それがどうしても受け入れがたかった。
なぜ、2割しかいないリスクに対して、10人が生殖の後遺症を被るのか、、
この日、がんセンター東病院を後にして、柏の葉キャンパス駅に着くころ、
私は、発作のような「咳」がでた。
ケンケンケンケン、、ケンケンケンケン、、
乾いた咳が止まらない。
涙を流し、顔が真っ赤になった。
妻も私もビックリして、私はベンチで横たわり、水をいっぱい飲んだ。
少ししたら、治まったので、ほっとしたが、あまりにも不気味な咳だった。
そのご、2人で中華料理屋に入った。
この日は、午後3時まで、何も食べていなかったのだ。
妻も私も暗かった。
手術を選ぶべきと言われ、一方、咳が止まらない。
さっきの発作みたいな咳は恐ろしかった。
なんなんだろう、、私の身体の中で、いったい何が起こっているのだろう、、
極度の不安が続き、精神的に参っていた。