❏❏❏ 回顧録:2007年6月11日 東京・慈恵医大病院
第3クール21日目(Day-21)
この日、ついに抗がん剤第3クールの最終日がきた。
長かった。
ここまで本当に長かったと思う。
勿論、4クール、5クールと頑張る患者たちがいることは解っている。
でも、自分にはもうこれ以上の抗がん剤治療は無理だと感じていた。
それ程までに、精魂尽きていた。
最終日のこの日は、例によって「造影剤」を使ってのCT画像検査だった。
そのCTの結果で、決まる。
これでがん治療が終わるのか?
それとも、抗がん剤治療を続けるのか?
いや、2度目の手術を受けるのか? いずれかが決まる。
私は、「造影剤」を投与することを承諾する「インフォームドコンセント」にサインした。
結局これをOkしないと、検査が行われない。
造影剤を使うと、白黒のレントゲン画像がはっきり出る。
つまり、がんの組織が鮮明に映し出される。
促されて、近未来の宇宙船の内部のようなCT検査室に入った。
マスクをした検査技師は、承諾書を確認して、造影剤のボトルをCTにセットした。
私の腕には点滴のルートがあり、点滴棒に取り付けられた輸液から、ぽとぽとと、水分が落ちてチューブを伝わって腕の血管から私の身体に入っている。
その十字コックに、造影剤から伸びたチューブが取り付けられた。
承諾書を書くくらいだから、身体にとって良いものではないことくらいわかる。
私は、この造影剤CT検査が大嫌いだった。
腕に点滴針を通したまま、ドーム状のCTの中に入っていくし、造影剤を投与された瞬間は、テキーラを一気飲みしたような「カッー」としたほてりが生じる。
技師は、コントロール室に入り、私の寝ているベッドを遠隔操作で動かし始めた。
うぃんうぃんうぃんうぃん
ドーナツ状のドームの中を、レントゲン装置がフル回転している音がする。
「では、はじめますよ」
スピーカーから彼の声がした。
その時、造影剤のピストンがスライド仕出し、私の身体に、あの薬が入ってきた。
かぁ~、
身体が火照る。
なんだろう?
そんなに速く、薬が回るわけないだろうに、頭から、腕から、胸から、急激に暑くなっていく。
その最中も、うぃんうぃんと私の周りをレントゲン照射器気が回っている。
早く終わって欲しい。
そう感じていた時、「終わりました。大丈夫ですか?」
コントロール室から、彼がマイクで確認している。
コクリとう頷くとスライド式のベッドは、元の位置に戻っていった。