❏❏❏ 回顧録:2007年5月24日 東京・慈恵医大病院
第3クール3日目(Day-3)
抗がん剤が、また蓄積している。
体の中にだ。
これだけ長く、抗がん剤治療をしていると、色んなことが解ってくる。
自分の体のどこかに「抗がん剤が残っている」ことが解るようになってきた。
抗がん剤全身化学療法の仕組みはこうだ。
「全身」というだけあって、まさに抗がん剤を、体の隅々まで行き渡せる。
腕の血管に点滴針を留置して、そこにぽとぽとと抗がん剤を入れていく。
そうすると静脈血の中に抗がん剤が入り、全身をくまなく抗がん剤が回っていくのだ。
抗がん剤は、肺にも行くし、脳みそ、心臓にだって行く。
血液が通っているところすべてに、抗がん剤が回っていく。
脳とか、心臓とかにも抗がん剤が行くかと思うと、ぞっとする。
しかし、こうすることで、身体のどこかにある「がん細胞」を叩いていける。
ただし、いつまでの強い薬が身体の中にあってはいけない。
だから、身体は、肝臓とか、腎臓とか、膀胱とか、いろんな臓器を通じて、身体の中にあって欲しくないものをろ過して、取り除き、尿とか、大便で、体外に吐き出す。
抗がん剤も、そうやって、身体の外に出ていく。
しかし、、人間の身体は、そんなに100%完ぺきというものではないのだろう。
薬の一部、例え微量でも、身体のどこかで滞留する。
まだ残っているうちに、翌日、抗がん剤治療を開始するから、また、微量が溜まる。
蓄積作用とはそういうものだ。
これが、患者には辛い。
これは、抗がん剤に限らない。
マラソンだって、走っているうちに老廃物が身体の中に溜まっていく。
それがきつくなって、脚が動かない、身体が重い、もう走れない、、みたいになっていく。
この日は、がんばって食べた。
食欲は低いのだが、ペヤングソース焼きそばなら食べられた。
不思議なものだ。
こんなとき、ジャンクフードが美味しく食べられるなんて。
木村先生が言っていた。
「大久保さん、食べられるものなら、何でもいいので食べてください。ポテチチップスでも、なんでもいいです」
がん患者は食欲低下から、体重は減るし、体力が落ちる。
それを少しでもなだらかにするには、ポテチだっていいというのだ。
この日、ペヤングを食べられたことで、精神的に救われた。