❏❏❏ 回顧録:2007年5月22日 東京・慈恵医大病院

 

第3クール1日目(Day-1)

 

この日、私は会社にメールで近況報告(アップデート)をしていた。

 

働いているのは、外資系証券会社だ。

 

ぼ~っとしていると自分の居場所がなくなる。

 

積極的に報告・連絡をしなくては、まずい。

 

 

それは、病気治療中の患者であっても変わりない。

 

 

私は、「治療が順調である」という内容の英文を上司たちに送っている。

 

これは、嘘ではない。

 

正しい。

 

しかし、嘘がある。

 

 

ブレオマイシンの合併症で間質性肺炎の兆候が見られているのに、そんなことは触れない。

 

変に心配されたり、誤解されたりするのが嫌なのだ。

 

 

5yearsの活動を運営していて、この心境は多くの患者たちに当てはまる。

 

患者によっては、離れて暮らす両親に「がんのことを隠す」人すらいる。

 

なぜなら、心配させたくないからだ。

 

私もその気持ちがよく解る。

 

 

私の場合は、親のことを思って「心配させたくない」のではなくて、

 

むしろ、親から心配されるのが面倒くさいのだ。

 

 

治療中の患者の自分は、ただでさえ心に余裕がない。

 

それなのに、心配する親のためを想って親の心のケアをする余裕なんて無かったからだ。

 

実際には、早い段階で報告していたが、その後、心配な親からの連絡に対応するのが面倒くさくて仕方がなかった。

 

 

同じことは、会社に対しても言える。

 

「あぶないのではないか?」とか誤解されるのは嫌だ。

 

実際には、命の危険があるのだが、もう会社に戻ってこない仮定のもと、上司たちが動くのは嫌だった。

 

がん患者にとって、会社とのコミュニケーションは大変だ。