❏❏❏ 回顧録:2007年5月21日 東京・慈恵医大病院

 

第2クール21日目(Day-21)

 

この日が第2クールの最終日である。

 

だから、このクール(=期)の抗がん剤治療の効果を医師が患者に知らせる日だ。

 

それをもって、治療スケジュールを立てていく。

 

だが、私の場合、もう1クールは必ず、行うことになっている。

 

 

なぜなら、私の場合の「精巣腫瘍(精巣がん)のステージ3B」では、BEP抗がん剤化学療法を最低でも3クール行うのが標準治療だからだ。

 

 

私のもとに、よく「がん治療を受けるけど、どこの病院にすればいいでしょうか?」というご質問が来る。

 

初めてがんを経験する人は、何もわからないから、自然な質問だと思う。

 

私は、まず、「標準治療」について説明する。

 

意外と、多くの人が知らない。

 

 

そう言う私も、自分ががんになるまで「標準治療」なんて言葉すら聞いたことが無かった。

 

標準治療とは、学会で決めたガイドラインのことだ。

 

お医者さん達は、消化器学会、泌尿器科学会、乳がん学会、という風に、診療科ごとに、あるいは、病気ごとに、専門的な「学会」を自主的に作っている。

 

例えば、私がかかった泌尿器学会は、全国の泌尿器科医師たちが、治療の発展を目指し、そこで意見交換しているわけだ。

 

そして、学会で「精巣腫瘍(精巣がん)」のステージ1の第一選択の治療は、外科手術で、ステージ3になると、外科手術、その後、抗がん剤治療を最低3クールというふうに、治療の「ガイドライン」を細かく決めてある。

 

※ものすごく細かく細分化されて治療方針が取り決められている、まるでルールブックに近い感じのものだ。

 

つまり、どこの病院でも「標準治療」を行う限り、同じ治療になる。

 

大雑把に言えば、どこでも同じ治療、ということだ。

 

それを(私を含め)一般人は知らない。

 

だから、A病院では、手術でがんを取っちゃって、一方、B病院では抗がん剤治療でがんを叩く、C病院では放射線治療でがんを死滅させる、とか言う風に、病院ごとに行われる治療が異なるのだろうと思っている人がいる。

 

もちろん、そういうケースも無いことは無いみたいだが、大抵の場合、王道は、学会で決めた「ガイドライン」に従って行われているはずだ。

 

長い歴史の中で、お医者さん達が、さまざまな臨床を行い、治療の優先順位をつけてきたからだ。

 

※昨今、個別化医療などと言い、みんなに同じ治療をするのとは異なる考えも出ているが、それは別の機会に触れる。

 

 

だから、学会のガイドラインを事前に読んでいた私は、

 

「どうせ、もう1クールの抗がん剤はやるんでしょ(嫌だけど)標準治療なんだから、、」

 

という気持ちで受け入れていた。

 

だから、目の前で説明されている今後の治療方針も、驚きもなく、淡々と話を聞いていた。