❏❏❏ 回顧録:2007年5月5日 東京・慈恵医大病院

 

第2クール5日目(Day-5)

 

全身化学療法BEP療法は、最初の5日間、抗がん剤(シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシン)を連続投与する。

 

ブレオマイシンは、1回だけだが他の2剤は毎日だ。

 

だから最初の5日間は、点滴チューブにつながれたまま終日を送る。

 

私は、それが嫌で仕方がなかった。

 

シャワーを浴びるのにも点滴のルートがついているし、

 

寝るときは、点滴をつけて、水分を取り入れて寝る。

 

抗がん剤は、効果的な薬だが、毒性も強い。

 

血液に乗せて体を巡った後は、おしっこで体外に出す。

 

この作業をさっさとやらねばならない。

 

だから、輸液という水分点滴を一日中送り、しかも、利尿剤をつかって、おしっこを誘発する。

 

この繰り返しで、効果的に治療を行うメカニズムだ。

 

だが、私は一日中、点滴につながれているのが嫌でたまらない。

 

以前も書いたが、点滴アレルギーになる患者が一部いるという。

 

精神的なものだが、体の中に針が留置され続けることで過度に嫌悪感を抱く。

 

まさに私がそれで、針の刺さっている腕は上がらない、見ているだけで吐き気すらした。

 

昔、渡辺淳一の医学小説を好んで読んでいた時期があり、あまりのリアルな描写を恐れた。

 

その影響かもしれない。

 

5日目のこの日、無事、シスプラチンとエトポシドを投与し終えた。

 

通常、点滴が外れるのは7日目か、8日目だ。

 

医師の判断でそうなる。

 

だが私は待てない。

 

夜9時過ぎ、消灯の時間にナースステーションに行き、点滴を外してほしいとお願いした。

 

なんと、夜勤なのか残業なのか?讃岐先生が病室に来てくれた。

 

「大久保さん、朝までに水3,000㏄を飲めるのであれば、点滴外しますよ」

 

そういわれ、約束した。

 

水分3リットルくらい何でもない。

 

マラソン練習の後は、平気でポカリスウェットを2リットル一気飲みする。

 

約束して外してもらった。

 

このときは、まるで手錠が外されたような解放感だった。