16日目。
このクールのすべての抗がん剤投与が終わっていた。
だから、身体への蓄積負荷は一番大きいときだった。
抗がん剤治療中、私も先生たちも、特に気にしていたのが「骨髄抑制」だった。
これは、当時渡された説明資料の1枚目だが、トップに「骨髄抑制」がある。
この副作用に痛みはない。
また、外見として現れない。
だから、私という患者は、実感がない副作用だった。
しかし、最も恐ろしいものの一つだ。
別に、骨髄抑制自体が恐ろしいのではなく、その結果、起こりうるリスクが怖いのだ。
血小板も同時に減少するので、怪我をして出血したら、血が止まりにくくなる。
そんなの冗談ではない。
白血球数が少ないから、ウィルスや菌に対して抵抗性がない。
これも冗談じゃない、勘弁して欲しいリスクだ。
「ノイアップ」という皮下注射を、日々打たれていた。
これをすると血液中の好中球数の増加促進があるという。
ただ、令和2年で製造販売が中止されている。
何があったのだろうか?
私は、がんと向き合う中で、薬により命を助けられ、薬により身体を壊された。
肉を切らせて骨を断つ、とは、まさに薬物治療のことだと思った。