❏❏❏ 回顧録:20077年4月21日 東京・慈恵医大病院

 

Day-12(12日目)

 

朝、7時前、看護師が部屋に来た。

 

入院病棟では、毎朝、看護師が来て各人の検査を行う。

 

血圧、体温、体重、、

 

この日は採血もされた。

 

私は2~3日に1度、血液を採取され血中の腫瘍マーカーを計られた。

 

看護師には注射が上手な人とそうでない人がいる。

 

へたくそな人に採取されるとき、私は緊張した。

 

この日は、腰の痛みが更に緩和していた。

 

図の通り、一カ所に強くあった痛みが、広い範囲に弱い痛みとなって表れていた。

 

 

私の体の中で、いったい何が起こっているのだろうか?

 

怖いような、楽しみのような、ごちゃっとした気持ちだった。

 

この日は、土曜日。

 

妻から連絡があり、子供たちがどうしても映画を観に行きたいというので、連れて行ってくるという。

嬉しかった。

 

父親が病気で入院して、暗くなっているのではなく、普通に楽しんでいる感じがして嬉しかった。

 

映画「ナイト・ミュージアム」の宣伝がテレビで流れているのを見て連れて行って欲しいとねだったのだという。

 

この日もリカバリーデイ。

 

治療は行われない。

 

私は、浜松町の本屋さんに行き、漫画本を買った。

 

そしてその足で、山手線に乗った。

 

経った一駅だったが、新鮮だった。

 

親子、カップル、若い人、お年寄り、山手線にはいろんな人が乗っている。

 

当たり前のことだが、新鮮だった。

 

がんになると、どうしても健康な人たちと、患者の自分を区別する。

 

まるで国境線が引かれた外国の人たちのようだ。

 

少し前はあちらの国にいたのに、いまは、こっちにいる。

 

山手線の電車の中で、私は孤独だった。