一言に「抗がん剤」と言っても、様々な薬がある。
多くは、毒性の強い薬だ。
だから、生きている癌細胞を殺す。
ただ、正常な細胞も傷つけるため、それが副作用となって現れる。
これは、私が当時、病院からもらった使用薬の簡単な説明だ。
一番上の「シスプラチン」、横に看護師が青ペンで投与する予定日を書きこんである。
読んでみると、副作用で「吐き気」「嘔吐」「食欲不振」と似たような症状が書いてある。
そして「骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板の抑制)」とあるが、これが怖い。
血液の卵である骨髄にも影響するため、新しい血液細胞ができてこず、自然減により、血液中の細胞が減っていく。
結果、身体の抵抗力が弱まり、インフルエンザなどの感染症になると治りにくいとなる。
更に肝機能障害とあり、怖い表現が続く。
2つ目の薬、ラステッドとは「エトポシド」のことだ。
シスプラチン同様の副作用が並べられているが、脱毛も書かれている。
私は、最初の頃、「髪の毛なんて、また生えてくるんでしょ」くらいにとらえていたが、
まさか、全身の髪の毛が抜けるとは知らなかった。
つまり、眉毛も抜けるし、鼻毛も抜ける。陰毛もなくなる。
眉毛が無く、頭髪もない自分の顔は恐ろしかった。
女性が、精神的に傷つくのは良く解る。
男性の私でさえ、惨めの極みだった。
そして3つ目のブレオが「ブレオマイシン」のことだ。
説明にある「間質性肺炎」これが、がん治療の後半、恐ろしいことを引き起こす。
私は、今でも当時の間質性肺炎の影響で、肺の1/3が死んでしまっている。
肺は致命的な機能で、1/3が動いていないのは、正直言って、普通の生活に支障があるレベルだ。
「なぜ、マラソンを走れるのか?」と医師達から聞かれる。
「歩いていて、息が切れるんじゃないですか?」とも言われたことがある。
なぜ、走れるのか?そんなこと私にわかるはずがない。
ただ、マラソンに戻りたくて長い年月必死にやってきたら、なんとかなった。
ただ、がん前よりはスピードが落ちたし、登り坂はキツイ。
55歳を超えてからは、強烈に呼吸機能が落ちている気がする。
今でも呼吸器内科を1~2ヵ月ごとに訪れ、血液中のマーカーを計ってもらっている。
でも、どんなにハンディキャップを負っていても、やりたいことに挑戦し続けていたら、何か光が見えてくる、そういうものではないかと信じている。