❏❏❏ 回顧録:2007年4月9日 東京・慈恵医大病院
全ての検査を済ませ、病室に戻った時には、心身くたくたになっていた。
それから、病室に来た看護師にカンファレンス室に来るよう伝えられた。
今から検査結果の報告を受ける。
私は、法廷に立ち判決を聞く“被告”のような心境だった。
肉体的にも辛いが、精神的には厳しい。
「でも、癌なんかに負けるわけにはいかない。全てを乗り越えるんだ」
そう自分を鼓舞した。
妻と一緒にカンファレンス室に入ると木村先生が座っていた。
まず、先生の表情をチラリと見たが、意外と暗くはない。
「大久保さん、結論から言うと、骨への転移はありませんよ。本当に良かったです」
この瞬間、崩れそうになった。
椅子にすら座ってられないとはこういうことだ。
身体の緊張感が一気に抜けて、骨と肉を支える「チカラ」が入らなくなった瞬間だった。
「そして、CTの画像診断結果ですが、、、」
前回同様、壁一面に貼ってある“人体輪切りの画像”写真について、説明が始まった。
「この丸いものが、リンパ節ですが、通常、豆粒くらいの大きさが、こんなに大きくなっています。がんにより肥大しています」
「・・・・、どれ位の大きさなんですか?」
「多分、これくらい」
先生が、指で丸をつくった。
ゴルフボールくらいの大きさだった。
ただし転移部位は、腹部、肺、首に変わりない。
改めて最終ステージIII-2Bに変わりないと評価された。
「大久保さん、予定通り、明日から化学療法(抗がん剤治療)を開始します。骨へ転移もないし、腰の痛みの理由がわかりましたから」
それを聞き、もの凄い闘志が湧き上がってきた。
心の中で「やってやる。癌をやっつけてやる」
再び、闘志むき出しの自分に戻っていた。