❏❏❏ 回顧録:2007年3月20日 東京・慈恵医大病院

 

「この壁に貼ってある写真がCTの結果で、大久保さんの身体の断面画像です」

 

木村先生は、丁寧に説明を始め、赤鉛筆で写真に記していく。

 

「これが、腫瘍の影です。これも、これも」

 

あっと言う間に、10個以上の赤丸が付けられた。

 

腹部、肺と、いろいろな場所に、腫瘍(=がん)がある。

 

「先生、こんな初めてみる写真を示されて、これが腫瘍です、と説明されても、私には、理解できないですよ」

 

CTというものの画像を睨みながら言った。

 

「私には、大動脈の断面の丸と、腫瘍の断面の丸と、同じ丸にしか見えないんですから」

 

木村先生は、困ったような顔をして、

 

「医者には、違いがわかります。画像診断分析チームの医師達が、まず見て、ジャッジしていますから、確かです」

 

なるほど、この検査画像は、既に何人ものドクター達に診られ、評価を下されていた。

 

驚きと意外さのあまり、私は何も言い出せない。

 

全身にがんが転移して、最終ステージまで進行しているなんて、本当に信じられない

 

このあと、木村先生が何を言い出すか、、怖かった。

 

それまであった私の人生設計は、がんによって滅茶苦茶にされていた。