❏❏❏ 回顧録:2007年3月15日 東京・慈恵医大病院

 

看護師から、パッチンと白い腕輪のようなバンドを左手に着けられた時、何とも悔しかった。

 

ここ(病院)を出られるまでは、身に着けていなくちゃならない。

まるで囚人のようでそれが嫌だった。

 

看護師は、作業を続ける。

 

体温を測り血圧を測り、持ってきた体重計で体重を測り。

 

カートの上にある「ノートパソコン」にデータを入力していった。

 

私という患者の今日のデータを、入力し終えた看護師は、

 

「では大久保さん、個室に移ったら、午後の検査と明日の手術について説明しますね」

 

そういって、隣に移った。

 

また、あのワゴンを「カタカタ」させて。

 

「〇〇さん、おはようございます。具合はいかがですか?お熱、測ってみましょうか」

 

その受け応えから、カーテンの向こうの患者は年寄りの男性とわかった。

 

個室への引越しまで、時間が空いたので、私と妻は、17階入り口のラウンジで暇をつぶすことにした。

相変わらず熱は38℃を超えている。

 

両松葉杖をつきながらラウンジに向かった。

 

そこは、南向きで明るく目の前が公園なので、とても見晴らしが良い。

私は、直ぐに気に入った。

 

そこには、丸テーブルが三つ、袖のあるチェアが四つ。

 

そしてテレビがあった。

 

60歳過ぎの初老の男性が車椅子に座り、テレビを見ていた。

 

どこに行ってもお年寄りが多い。

 

その車椅子にも「点滴棒」がついていて、彼は点滴治療中だ。

 

点滴針が刺さっている彼の左腕は、見るからにやせ細り青黒い血管が浮き出ている。

 

ただ、「ボー」っと、テレビを観ていて元気が無い。

 

入院病棟という所は、お年寄りが多い。

 

病院の外来のように、若い人から年配者までいるのではない。

 

泌尿器科の入院病棟は、不思議な場所だった。