❏❏❏ 回顧録:2007年3月10日 東京 自宅
・・・・・
翌朝、久しぶりに、自宅のベッドで目が覚めた。
この1カ月間、慈恵医大病院の整形外科・入院病棟の患者用の硬いベッドだった。
病院のベッドは、清潔だが敷布団が無い。
ただ、スポンジマットの上に白いシーツがあるだけだ。
寝床としては物足りない。
朝、体温を測る。
38℃6分。
高熱がずっと続くのだからしんどい。
決して、インフルエンザでもないのに高い。
「やはり、がんなのかな、、、」と自然にそう思う。
嫌な気持ちだ。
投げやりな、ぐちょぐちょした気持ちだ。
精巣腫瘍の初期の特徴は、無痛性である。
睾丸が痛いわけではない。
どこも痛くない。
癌(がん)は体中が痛い病気と思い込んでいたので、自覚症状が無いのが良くない。
だって、がんなのに自覚症状が無いのだ。
しかし、この後、転移すると体中が痛くなり、こんな呑気な事は言ってられなくなる。
朝食を済ませ、自宅のコンピューターを立ち上げる。
がんの一つ、精巣腫瘍について詳しく調べるためだ。
隣の部屋では、子供達がアニメを観て、はしゃいでいる。
今は、ネット上に様々な情報がある。
正確なものから、いい加減なものまで。
精巣腫瘍について、ウィキペディア、国立がんセンターのウェブサイト、大学病院のホームページを調べる。
精巣腫瘍の診断には、超音波検査、血液検査(腫瘍マーカー)、そして転移すると画像検査(レントゲン、CT他)がある。
腫瘍マーカーとは、具体的には、蛋白、ホルモン、酵素等々で、血液中に含まれている量が基準値内かどうかを目安として、癌の可能性を測るものだ。
精巣腫瘍に特有な所要マーカーは、3つ。
LDH、AFP そして、HCG-β。
どれもこれも、聞きなれないが、昨日、木村先生から伝えられたAFP(アルファ・フェトロ・プロテイン)は、蛋白で、基準値は10以下。
しかし、私は23もあった。
これだけでも十分、癌を疑える。
心が締め付けられる。
窒息しそうなくらいに、締め付けられる。
ネット情報を観ていると、辛くてたまらなくなった。