5、カフェ救世主(かふぇメシア)
Cafe Messiah



 大学を出て、駅に向かう坂の手前にある喫茶店に歩いて

行った。


通いなれた喫茶店『カフェ救世主』。救世主と書いて、メシア

と読む。マスターは「メシヤ」と読ませたかったんだそうだが、

スペルがMessiahなので、メシヤとは読まないって、昔、

お得意様だった時事英語の先生にたしなめられて、カタカナ
表記はやめたんだそうだ。 


 カランカラン♪。カウベルの音。ドアを開けるとカウンター
越しに美子の顔が見える。こっちを見ながらにっこり微笑ん

で、「いらっしゃいませ。」と言う。隣にはサイフォンでコーヒー
を落としてるマスター。はじめてこの店に入った時から、マス
ターって歴史の教科書に出て来るフランシスコ・ザビエルに

似てるなあ、と俺は思ってる。小声で「ザビエル・マスター」

って言ってみる。


 「イエス様と言いなさい。イエス・キリスト様と!」

 「あは、聞こえちゃった?。Yes(イエス)。」

 「バカ。」 


 俺を見ながら笑ってる。ここに来ると落ち着くんだよなあ。


 「ご注文は?」


 カウンターから出て来て、オーダーをとる美子。綺麗な足

だなあ、といつも嬉しくなってしまう。いい女だなあ。美子。

 

「えっ?、山門先生の彼女なんですか?」


 突然、大黒君が言う。


 「!」


 美子は驚いたような顔をする。


 《どうしてこの人、そんなことわかるの?》


 あ、美子の思いがテレパシーのように伝わって来た。

俺も、念じてみる。


 《テレパシーみたいにわかっちゃうからだよ。俺も今日、

こんなコトができるようになったみたいなんだ。》
《いいえ。あなたはもっと前から出来てたわ。気付いていた

かどうかは別だけど・・・》


 「ほらね。やっぱりドク太は出来てたんだよ。」

今度は突然、根本が言う。こいつらとは周波数さえ有って

れば言葉は要らないってコトなのか・・・。


「俺、コーヒー。」
「僕はクリームソーダ。」
「俺はアイスコーヒー。」


 柴田、大黒くん、根本の順に言う。


「ヒロシは?」
「俺はピラフとブレンド。みんなは食べないの?。」

「うん、今はいい。後で頼むかも知れないけど。」
 柴田が言って、ほかの2人もうなづいた。


 美子がオーダーを取り終わってカウンターの中に入って
マスターに注文を伝えてると、柴田が言った。


「綺麗だなあ、彼女。美子ちゃんて言うんだ?。
苗字は?。」
「みなと。『みなとみこ』って言うんだ。ミナトは水門っ
て書くんだ。」
「山門と水門か。それじゃまるで日本だな。」


 根本が
「瀬臼が次の国産み(くにうみ)にドク太は必要だって
言ってたのは、これと何か関係あるのかもよ?。」
と 意味不明なことを言った。


「そうだなあ。それ、あるかも知れねーな。」
 柴田が相槌を打った。


「何だ?、くにうみって。」

「元々、日本はイザナギノミコト、イザナミノミコトが国を

産んでいったとされている。大八洲(おおやしま)って
言うんだけど、それを治めたのがニニギノミコトってこ

とになる。」


「ふーん。でも、日本はもうあるじゃん?。何でまた、
国産みが必要なんだよ?。」


「国産みって、神様がえっちして子供として産んで行くん
だよ。大洪水の後で兄妹だけが生き残り陸地にたどり着いて
山や樹木のような高い物の周りを回ってのちにに交わるもの
の交わり方が正しくなかったために最初は肉塊や動物が生ま
れちゃう。その後、神々から適切な交わり方を教えられて、
ようやく男児や女児が生まれるという話だ。その頃の話なの
に対馬や五島列島や、小豆島とかまで産んで行くんだ。記述
上よくわからない島もあるが、大島の1つが北海道だとすれ
ば佐渡島や比較的小さな島まで詳しくわかっていたことにな
る。それよりも不思議なことは・・・」


 柴田は、いったん、そこで間をおいた。


 「世界中で神話に必ず含まれているのが『大洪水』の話
なんだ。必ず出て来る。そして、その時、必ず神も現れる。
現人神(あらひとがみ)の形をとってね。」


 柴田は、何か考えてるようだった。俺の顔を見ているよ
うで焦点は壁を突き抜けた辺りに合ってるようだ。


 根本が、

 「ドク太は日本神話は詳しいの?。」

と言った。


 「いや、詳しくない。むしろ知らない方かも・・・。
国産みの話も何となくは知ってたけど、どの島を産んだと
か全然知らなかった。なんか、大洪水って言うと、聖書の
ノアの方舟の話かな?とか思っちゃうんだけど・・・。」


 柴田が、さっきの姿勢のまま、独り言のように呟いた。


 「ドク太は恨みを感じていないんだから、ここから先は
話すべきなんだろうか?。」


 恨み?。全く意味のわからないことをまた言われた。


 その時、美子がみんなのオーダーを持って来た。それぞ
れの前に注文した飲み物と、俺のところにはピラフ。


 「美子ちゃんも一緒に聞いてくれないか?。」

 柴田が言った。


 「私はテレパシーも使ってくれれば、仕事しながらでも
問題なく聞けますけど・・・。」
「あ、そうだね。キミの祖先は誰?。」
「両道入姫皇女(ふたじのいりひめのひめみこ)だって、
聞いてます。でも、どうしてだかわかんないんですけど、
自分では弟橘媛(おとたちばなひめ)の気持ちが
わかるような気がしてるんです。」
「ん~。やっぱり一緒に聞いて欲しい。」


「マスター、悪いんだけど美子をしばらくこっちに居さ
せてもいい?。」


 俺がマスターに声を掛けた。 


「ああ、いいよ。ただし、皆さんで何か一品頼んでくれ
たら、って言うのはどう?」
「しっかりしてるなあ。でも、ここのは本当に美味しい
んだぜ。何か頼めよ。メシアって名前だけど、本当は、
メシヤ(飯屋)って名前にしたかったほど、喫茶店なの
に美味しい料理を出してくれるぜ。インド神話の世界の
住人のキミ達には種類の豊富なカレーはどうかな?。」


 柴田は、ポークカレー、根本はビーフカレー、大黒く
んはチキンキーマカレーを頼んでるのを聞いて、ピラフ
はすぐ終わってしまいそうだから、俺もポークカレーを
追加した。美子はアイスミルクのピンク(イチゴ・シロ
ップ入り)と俺のピラフを少しちょうだいって言った。


 例によって柴田は、要点をまとめて話すから、各論や
質問は後ほどってコトでいいか?と訊いた。俺は、それ
がいい、頼むって答えた。



 恨みがあって怨霊化する。ドク太には、幸か不幸か、
ヤマトタケルが自分の祖先だという自覚はない。でも
いつか覚醒した時のために、日本の神の流れをくむド
ク太は今から話す内容は覚えておいてくれ。


 怨霊化する恨みとは、自分の子孫を根絶やしにされ
て霊を祀ってくれる子孫が居なくなることなんだ。自
分でゲイになった人や、何かあって子孫が出来ない人
は現世では力を持つが怨霊化することはない。でも、
ヤマトタケルノミコトは仲哀天皇の父と言われている
し、仲哀天皇の母親は両道入姫皇女と言われている。
つまり、ドク太と美子さんということになる。


 そこで仲哀天皇を見ると、奥さんの神功皇后が神が
かりになり、新羅を討てといわれた時、それを信じず
に国内で動いた。そして、神の祟りで崩御(ほうぎょ
)することになる。その後、神功皇后は武内宿禰との
子という噂の応神天皇を立てるため、仲哀天皇の子を
全て葬り去る。このことから、仲哀天皇も殺されたと
考えるのが妥当と考えられる。


 つまり、日本の歴史には、天皇の系図の中に神話が
入り込んでいるんだ。歴史と現存する事実の間にステ
ータスが入り込んでいる国なんだ。血統を重んじるの
は正当性をどう伝えるかに掛かっている国だからだ。
もっと言うと、時の権力者が神の時代にこういう系図
があったから、この継承方法は正しい、と後付けで、
改ざんして来た歴史があるってことなんだ。


 ヤマトタケルは「日本武尊」と表記される。しかし、
元々は「倭建命」と書いた。漢字の研究が進み、大き
な和、つまり「大和」を、小さくて卑しいものという
意味の「倭」という字を当てられていたことがわかり、
表記そのものも変わって行ったらしい。中華思想の奢
り高ぶりを示す一例だよね。でも、そっちではなく、
タケルの方に注目した場合、日本建国の神、という意
味になるとは思わないか?。


 そこで、よく考えてみてくれ。本来なら血筋は根絶や

しにされた筈のドク太がなぜ今、ここに居るのか?。


美子さんがなぜ存在するのか?。


 神々はその後も人間と交わり続けているってことな
んだ。だから、ドク太も美子さんも居る。そして、そ
れが神々の意志なんだ。


 もう少し戻って考えてみる。日本最大の怨霊として
考えられているのは誰だ?。大国主命(おおくにぬし
のみこと)だといわれている。だから出雲大社で、今
も祀られているし、世間が神無月という時、出雲だけ
は神在月ということでもわかるように、神々が国譲り
の儀式を行う時は、神々が一斉に出雲に集まってしま
う。各地域の神々はみんな留守になってしまう。そこ
でその留守番として恵比寿講といわれるお祭りをして
留守神をおくようになった地方もたくさん出て来た。


 つまり、日本人は外来の神も認めるようになってい
った。国内の神が居ない時は留守神として外来の神も
お祭りしよう、ということになって行った。その結果、
葦原中国(あしはらのなかつくに)つまり「日本」は、
天津神(高天原に降臨した天の神々)が国津神(日本
固有の神々)から国譲りを受ける神話を残したにも関
わらず、日本をニニギノミコトに譲った大国主命は、
海に消えて怨霊と化したということになる。子孫が、
本来活躍できる場を天津神達が奪ったからだ。自分を
祀ってくれる子孫が或る意味、違う世界に行ってしま
えば大国主のような大怨霊になっても不思議はない。


 だからこそ、1番大きな社殿は出雲大社なんだよ。
日本を治めていた大怨霊を鎮めるための社だからね。

 また大国主の大国が「だいこく」と読めることから
大黒天とする民間信仰も普及している。


 例を挙げれば「七福神」だ。日本の神様は恵比寿様
だけだと言われている。だけど、夷、戎、胡、蛭子、
恵比須、恵比寿、恵美須・・・と様々な表記をされて
いるように北方由来の神であるとする説もあるし、外
来神としての可能性が高いとする説も多い。


 ここでつながったと思うが、俺達インド由来の神々
も、日本では日本の居心地があって、それはそれで
暮らしやすい面もある。もっとも沙羅のように、イン
ドではとても尊敬される神なのに、日本ではヤキモチ
妬きの神にされて暮らしにくい神もいるけどね。


 授業の最後の時間に瀬臼が言ったんだ。もし今後、
神々に動きが出てきた時は、ヤマトと同じ思いでつな
がっている大黒天の一族、つまり俺(柴田)が、ドク
太に神話クラスで学んだことを伝えてくれ、って。


 そこで、教授棟で話していた内容に戻りたいんだが
何で聖書の研究という名目で、神話クラスの一人一人
に自分が何者か気付かせるような授業が必要だ、と、
瀬臼は思ったのかが知りたいと思わないか?。


 瀬臼がした預言はこうだった。


「天地創造の元に戻って、新たな秩序を地球が求めて
いる。人間が伝えている神話の世界は表層に過ぎない。
本当は人間の営みはもっと前からあった。なぜなら、
聖書にもあるように、神は人を『神の似姿』で作った
からだ。体も心も神と人間を区別するのが難しいくら
いに、神は人間を神と同じように作った。1つだけ、
神と人間を明確に分ける基準がある。元々、人間は、
土から作られた。だから寿命が短い。神は神として、
作られている。だから寿命が長い。違いが有るとす
れば、その1点だけなのだ!。」


 ドク太はこの意味がわかるかい?。俺達も当時、
聞いてすぐに、この意味がわかったやつは一人もい
なかった。クラスで1番頭の良かった家巣ですら、
わかったって言ったのは、3週間後だった。俺達は、
1ヶ月以上わからなかった。さっき言った恋愛に関
する授業が多かったって話。霧亀瞬と伊寿樽美里手
をくっつけようとしてるとしか思えない、瀬臼の下
手な恋愛話を繰り返し聞いて、1ヵ月後に瀬臼が言
ったのは、


「人間や英雄は生に限りがある。だから恋愛に様々
なモノを求める。しかし、神の世界には信じられな
いほどの時間がある。その結果、神の世界の恋愛は
順番という程度の概念でしか有り得ない。誰と、い
つからいつまで付き合っていた。下手をすれば同時
に付き合っていたって大した問題ではない。ゼウス
には15人の子供を設けた異性がいる。インド神話
のクリシュナは1万6千人の妻を満足させたという
信じられない絶倫系の神だし、このクラスにもその
血統が居るメソポタミアのイシュタルは女神ながら
120人を超える愛人を従えていた。それほど魅力
的な女神だと言えよう。神の世界で恋愛が問題を起
こすのは、誇り高い神々のプライドを傷付けてしま
った時に限られる。」


 っていうことだった。これは、神と人間を知る上
ですごく役に立った。何で神はそんなにいろんな異
性を愛するのか?と考えていた俺達に、それこそが、
人間や英雄の生まれながらに持った宿命なんだって
ことを教えてくれた。つまり神は人間が考えるより
時間から自由だったんだ。だから、瀬臼はこんなこ
とも言ってた。


「人間にわかるように言い換えられた諺がある。
『英雄、色を好む』。本当は『神、色を好む』だっ
たんだ。この「色」は『変化』を表す。」


 だんだん、普段親やテレビや本から得ていた知識
にとらわれない発想法が身に付いて来た。自分の中
にある神性と人間性のバランスを考えた思考法が身

に付いて行った・・・。


 そして、瀬臼はみんなに課題を出したんだ。


「自分達が神話でどのように語られているかを調べ
なさい。それを踏まえて、もし同じ状況が自分の前
に現れた時、今の時代の中で自分が選ぶ生き方は、
過去の歴史とはどんな変化をもたらすことが予測さ
れるか、考えなさい。」


 むずかしい課題だろ?。何が困ったかって、自分
が出て来る神話が地域によっても時代によっても、
本当にたくさんあって、「こう言われてる!」って
言えないんだ。


 俺なんかインドでは苦みばしったイイ男の代名詞
みたいな存在なんだよ。顔が4つで顔立ちは端正。
猛々しくもつれた長髪が特徴的で、手が4本あって
体に毒蛇が巻き付いてて腰にはトラの皮をまとって
る。「恐ろしい者」の意味を持つ「ルドラ神」とし
て知られてる。今だってこの格好ならモデルみたい
なイイ女は放っておかないってファッションだったり

するんだよ。俺達の姿を像にしてそれを拝んでた
から「偶像」をアイドルって言って、今もキャアキ
ャア騒がれる人気者をアイドルっていうのも、うな
づける話だと思うんだ。


 ところが日本じゃ大黒天とか大自在天だよ。どち
らかというとプックリしたイメージでしょう?。全然

違い過ぎて、自分がどのように語られているかを
特定できないってくらい大変だった。ただ、破壊神
であると同時に復活の神でもある。沙羅と同じ苗字
なのに何の関係もない馬蹄波瑠(ばていはる)。

あいつはパールヴァティーの血統なんだよ。つまり、
シヴァの嫁さん。俺は他にもパールヴァティーの
血統の女がいる筈だと思って、探した。2人見つけ
た。それぞれにいいところがあって、誰か一人にっ
て決まらないんだよね?。そっちが神の世界。人間
の世界には「国」っていう訳のわからない存在があ
るだろう?。戸籍を管理しますとか言うくせに、何
にも責任は取らないで金取るクセにやっちゃ行けな
いことだけいっぱい法律にしてる存在。だから結婚
するなら一人って。


 さっき2人見つけたって言ったじゃない?。一人
はインドで、一人はドバイで見つけたんだ。アラブに
行こうかと思ったよ。嫁さんが3人居たら文句ない
かなあ、とか思って(^^)。でもね。時間に限りがあ
る俺達は死ぬ。死んだら相続なんかがあって、誰に
何を渡す、とか決めることになる。神様は死ぬ時に
はものすごく長生きしてるだろうから何人にでも渡
すものは作れるだろうけど、俺達にそれが出来るの
か?、とか考えたねー。まだ高校生になったばっか
りだったし。神様はずるいって本当に考えちゃった
よ。でも、人間にとって、1番大切なのは時間をあ
げることだなって、今は思う。1番限られてるのは
時間だから。それで満足しないのは、相手のプライ
ドを傷付けてる時なんだってね、今は思う。


 波瑠がそういうことに気付かせてくれた。だから
俺の嫁さんになると思う。

 

 そこまで聞いた時、美子が俺の手をギューッて、
握ってるのに気付いた。きっとさっきから握ってた
と思うんだけど、今、俺が気付いた。美子も、無意
識にそうしてたんだと思う。根本が


「2人は神の系統として付き合い始めた訳じゃなさ
そうだよね?。ドク太はさっき、自分がヤマトタケ
ルの子孫だって初めて知ったんだから。」


「ええ、私は気付いてましたけど、ヒロシは気付い
てなかったんじゃないかなあ・・・。」
「えっ?、気付いてたの?。そんな話、したことな
かったじゃん!。」
「わかってればいいことだってあるよお。言葉にし
なくても・・・。」


 そう言って手の力を緩めた美子。柴田も根本も、
それに大黒くんまでニヤニヤ笑いを浮かべてる。


「付き合い始めたのはいつから?。」
 また根本が訊く。


「ヒロシが大学入って来て2年目だったよね?。」
「うん、2年目の夏休みにこの店で。」
 俺が答える。


「俺達のことは置いといて、まずは柴田から聞く
べきことを聞いておかないとなあ。柴田がうまく
話してくれるおかげで『神話クラス』の2学期分
くらいは来ただろう?。あと1学期分くらい?。」


「そうだねー。」
 柴田が言う。


「1つだけ訊いていい?。波瑠の他に2人見つけ
たのはいつの話?。」
と、俺。


「ああ、それはその授業をやってた1年の夏休み
の話だよ。」


「えーっ?。その頃から一夫多妻制の国なんて考
えてたのかよ?。」


「そりゃね。だってあゆみちゃんの件とかを経験
してたし。」


 ・・・。大人だったんだ。俺も『神話クラス』の
授業、出ておけば良かったなあ・・・。


「今日は、国産みの話を詳しく話すと今まで以上に
時間が掛かるかも知れないから、要点だけ話すよ。
実は瀬臼の預言はまだあるんだ。」


 柴田が言った。


「3学期の最後の授業で、『2010年を過ぎたら
地球のカウントダウンが始まる。それから先、何が
起きても不思議じゃない時代に突入する。キミ達は
授業で歴史を習うが学校の授業で勉強するのは、人
類に証拠を残させた時代以降のことになる。本当は
15000年以上の文化が人類にはあったんだ。大
洪水で全て沈んでしまった歴史がね。この歴史は現
代よりも科学は進んでいた。もっともその時代は科
学という言葉は使わずに錬金術と言った。それゆえ
にその奥義を知るのは、それを金に変えられた一族
だけのものであった。2010年以降、キミ達が一
致団結しない限り、後の世に受け継ぐ文化は、また
ゼロからのやり直しになる。人類の文化は6666
年しかもたなかった。これからの世代を守れるか否
かはキミ達に掛かっている。しかし、もし、大洪水
が来たとしても、日本は山門が居る限り、再生する。
その時には、国産みをする相手も必要だが・・・』」


「俺達は、それが伊佐波だと思ってたんだ。伊佐波
奈美。でも、今日こうして顔を合わせたら、山門と
水門のカップルに会って、その方がピッタリだと思
った。」

 根本が言った。


 俺達が国産みをする?。でも、日本はあるじゃな
いか?。どういうことなんだろう?。




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