同時生起
(シンクロニシティー)

---Synchro-ni-City---



ほづみ 宏志(ほづみ こうし) 
 
 
プロローグ
Prologue

 原始の世界。ビッグバンが起き、宇宙は拡大を続ける。自らが燃える『恒星』が誕生する。さらに広がり続け、超高温の宇宙から、密度が低くなり始めた頃、温度が下がり始め、『重力』、『電磁気力』、『強い力』、『弱い力』が組み合わさり、『系』が出来た。その端の方に、後に『太陽系』と呼ばれる小さい系(システム)が生まれた。その、太陽を中心とする系の中の第3惑星は『地球』と呼ばれる美しい星となった。


 この星が生まれた時、大きな意思があった。そして、高温の『混沌(カオス)』があった。少しずつ温度を下げながら、蒸気は水となり、とどまって行った。そして、大きな水溜りと1つの陸が存在した。その大きな水溜りは原始の海『コアセルベート』。アミノ基の充満した海。その後の『命』の誕生に向けて、様々な変化を繰り返していた。


 単細胞の原生動物が生まれる。陸も1か所に固まっているのはバランスが悪く、動いて分裂して行った。陸も生物の1つであった。この星の意思は『バランス』を大切にした。当初、生物にとって、最大の猛毒は『酸素』であった。体を老化させる活性酸素は体を破壊して行く魔の気体だった。海底火山がいつも爆発を繰り返していた頃、硫化水素を吸って生物は活動していた。しかし、過激な生命は安穏を求めた。その中で酸素を吸って生きて行ける生物が突然変異で誕生した。


 陸と海が動きながらバランスを模索していた頃、陸の上には『人』が誕生した。まだ猿のような生き物。しかし、大きな意思は、思いを伝える対象が欲しいと思った。猿のような生き物の脳の容積を増やした。モノを伝えるための『言葉』を司れる生き物。大きな意思は自分自身を『神』と名付けた。しかし、悠久の時間を持っている『神』と、生物としての期間:『寿命』を持って生まれて来た『人』とは、言葉の出発点が異なり、お互いに理解し合うことは難しかった。それを受信することが出来た『人』の数だけ、違うイメージが生まれた。1つの思いは、受け取った人の数だけイメージが拡散した。


 その真実に辿り着ける人が誕生するまで、神は記録しておくように文字を作った。しかしそれは、地域差や感受性によって、全く違うものとして受け取られた。本質は一緒であっても、語られる内容は地域ごとに全く異なるものとして記録された。同じ国でも時代によって受け取り方が違っていた。言葉は、地域、時間、概念によって、次々と伝えようとする内容を変えて行った。


 時代が進むにつれて、国が小さく分かれて行った。大きな意思は、伝えたいことを人間が理解するにはどうしたらいいかを考えた末、人間と同じサイズの神を送り込むことにした。そして、その「人間と同じサイズの神」と共に歩んだ者は、それを記録したくなるように仕向けた。「The Book(聖書)」が生まれた。それは、人間が神話とどのように付き合えば良いのかを記したノウハウの本である。まず、人が読むべき本として『The Book』と名付けられた唯一の本であった。


 神話は実在した。言葉にした時点で、大切な77%は消失した。言葉は「目に見える氷山」のようなものであった。23%しか見えなかった。あとは海の中に沈んでいた。思いを氷山とすると、言葉にすることで浮かんで見える23%の部分だけを伝えることになった。神は、この割合を海と陸との割合と同じようにした。


 そんな中で、日本語の言語文化史という科目を教える一人の男が居た。彼は、或る神話の登場人物の末裔であった。世界神話は絵本で見た程度。それが、神話の世界の出来事に巻き込まれて行くストーリーが、今、始まる・・・。




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