妻を殺したと告白して死んだテリー・レノックス。彼をメキシコ国境まで送ったフィリップ・マーロウは、別の依頼でテリーの失踪の理由を探るうち、再度事件の渦中に巻き込まれていく。
村上春樹の翻訳と比べるつもりもなくて、大体小説を読み終わると時を経ずにきれいにストーリーを忘れてしまうという特殊な才能を、私は持っておりまして、とても新鮮にこの小説を読むことが出来ました。
翻訳は、リズムがあって、村上のより好きです。しかし、その当時に一般的でなかった訳語は、ちょっと変な表現もありました。
最初の頃に、"corn pipe"という言葉が出てくるのですが、なぜか「とうもろこしのパイプ」になっていて、とうもろこしに傍点が振られているのです。あの、マッカーサーが厚木に降り立った時に口にくわえていたコーン・パイプ。まだ、名前はしられていなかったのでしょうかね。
この小説のテーマって、「友を選ぶなら・・・」ということでしょうか・・・。テリー・レノックスがマーロウにメキシコまで連れて行ってくれと言って訪ねてくるまでに、2回しか会っていないのです。でも、この二人は、ある意味、同じタイプの人間。
そして、すみれ色の目をした美しいアイリーンは、その容姿だけで多くの男を虜にするだろうし、マーロウも彼女に恋しそうになるが、何かがおかしく怪しい。
テリー・レノックスの過去を調べていくうちに、彼の本名がポール・マーストンであり第二次大戦前にアイリーンと結婚していたことがわかる。
テリーは、現妻を殺した元妻をかばうために、メキシコに逃げた。事実関係はそうなのだが、テリーは、アイリーンを愛していたのだろうか・・・。
マーロウに再会したテリーは、アイリーンのことを「どうでもいい女」「あの女は狂った血が流れてた。」という。「誰も傷つけたくなかった。」
テリーが、マーロウと違うところは、弱いところ。
マーロウが、真実を新聞にぶちまけた理由は、テリーを呼び寄せるため・・・。そして、やってきたテリーに彼が送り付けてきた5000ドル紙幣(アメリカには、昔、異常なほどの高額紙幣があったんですよね。)を返す。
友情を金で買ったテリーは、マーロウに「長いお別れ」を言い渡される。