従来の日本人論で、「日本人の特徴」とされていたことの大半はヒトの本性か農耕社会の行動文法(エートス)で、世界の至るところで見られるものだ。“日本人性”の謎を解く鍵は、巷間いわれているような「空気=世間」ではなく、「水=世俗」にこそある(本書「あとがき」より)

 

 この本の中にでてくる、図をコピペしたいですが、著作権侵害になると思うので控えます。それは、縦軸に伝統的価値と世俗的価値のグラデーションをとり、横軸に生存価値と自己表現価値のグラデーションをとり、各国がどういう価値観を大事にしているかの分布をあらわしたものです。

 その中で、日本はどうかというのが日本人である私には気になるのですが、日本は縦軸の一番高いところに位置しています。横軸については、真ん中より少し右。つまり、日本は世界で最も世俗的な国民であり、東アジアで最も自己表現価値を重視している。

 

 どおりで、日本人は、自分は無宗教だと思ってる人が多い筈ですね。宗教などの権威や伝統的権威を嫌うのですね。

 

 自己表現価値といえば、自由かどうかというこということでしょう。生存価値に重きをおくということであれば、経済的にまだまだ貧しく自由を謳歌できる状態ではないということになります。

 

 そして日本人論といえば、出てくるのが山本七平。橘は、山本の「空気の研究」は、三部作の一つだったが「空気」が有名になりすぎたため、他が忘れられたと言ってます。もう一つが「水=『通常性』の研究」だったのだそうです。“空気に水を差す”という表現があるように、空気を壊すものとしての「水」だったのですね。「空気」は共同幻想のことでしょうから、それを壊す「水」は現実のことでしょうね。

 つまりは、日本人の世界一の世俗性は、現実的、損得勘定に長けているということでしょうか…。橘は、例えとして、会社で数人が集まると会社立ち上げてこういう商売やろうという話で盛り上がるが、「先立つものがなあ…。」という水のひとことで、空気は立ち消えとなると言ってます。

 

 そして、外来の宗教を骨抜きにして、日本人の世界観に合わせて作り変えてしまう、その目的となる世界観とは、万葉集の和歌をひいて説明しています。

 

  この世にし 楽しくあらば 来む世には

       虫にも鳥にも われはなりなむ

                (大伴家持) 

  (歌意)今が楽しければ、来世はどうなったってかまわない

 

 この歌意だと、仏教の輪廻をコケにしてると言われても反論が難しいよなあ。

浄土真宗なんか、この思想へと仏教を作り変えたものですね。ほんと・・・ああ、困ったものだ・・・日本人って (*´ω`*)

 

 最後に日本人が目指すべき、社会の形。

 

 最初に示した図の横軸の一番右に来る国は、スウェーデンなのですが、日本もスウェーデンを超えるような自己表現価値を実現していけば、ユートピアのフレームワークを実現することができるのではないかと橘は結論しています。ユートピアの共同体の条件は「退出自由」ということ。

 そういわれてみれば、日本国への帰化条件には、国家に忠誠を誓わせるというのがないそうです。結構、指向性あるのかな。ユートピア。