大学三回生の「私」は、薔薇色のキャンパスライフを夢見ながらも無意義な2年間を過ごしてきた。
入学した時に数あるサークルの中からテニスサークルを選ぶが、会話も出来ずに居場所を失くしていく。そこで同じ様な境遇の小津と出会い、サークル内外で人の恋路を邪魔をする「黒いキューピット」の悪名を轟かせることに。
小津と出会わなければ黒髪の乙女と薔薇色の人生を送っていたに違いない! もしあの時違うサークルを選んでいたならば……。
森見登美彦原作の小説をアニメ化。2010年にテレビアニメ化。全11話。
小説が原作のアニメなので、キャラクターが漫画調ではなくて、そこが気に入って見始めました。
そうなんですよね・・・。最近の漫画が原作のアニメって、「進撃の巨人」も、「鬼滅の刃」も、登場人物の形相がいやで、見たくない。
閑話休題。
最初の1話目で、小津が出てきたとき、キャラクターデザインで、「私」の分身かなと思いましたが、最終話で実在の別人格だということがわかりました。
1話目で、「私」が明石さんに惚れているのは明らかなんですけど、拾った白いモチグマンのぬいぐるみを部屋の電灯のスイッチ紐に括り付けたまま、彼女にそれを口実にしてアタックしようともしない。
毎回出てくる、占いの老婆も同じことを言い続ける。「好機は目の前にある。つかめば良い。」と。明石さんとの恋は、きっと上手くいくと予想できる。大して面白味のない恋らしいけど。
この話は、それがメイン・テーマではないらしい。
1話と11話のあらすじがほぼ同じです。語り手の「私」の人柄が変わっている。
パラレルワールドを何回も繰り返すのを観てると、なんか馬鹿馬鹿しい気もする。けれども、10話目の「四畳半主義者」を観て、少しずつ違う同じ部屋に次々移動するののが、パラレルワールドの比喩になっていて、自分で自分を四畳半に閉じ込めていることに気づいていく。四畳半を出たい。そして、どんな嫌いな奴でもいいから、人と話をしたいと思う。
そう。出たい、人と会いたい、と思いさえすれば、四畳半から出られるのだ。
四畳半から出た「私」は、1話目に戻り、結末の橋の欄干に上った窮地の小津を助ける。
実は、この物語は、悪友の小津との友情物語のようだ。嫌な奴だと思いながらもその相手と付き合い続けると、自分を受け入れていったときに、その相手の嫌な側面も受け入れることになる。相手の嫌だと思っていたところとは、自分にもそういう側面があることを拒否しているところだったりする。
それが、最後の病院の場面に描かれている。
漫画原作でもないし、大ヒットみたいなことは望めないけど、優れた佳品というべき作品でとても気に入りました。
