宇野選手の「僕が言うことではないけど、選考基準がどういったものか僕にはよく分からない。あまりうれしく思えない部分もある」のせいで、フィギュアのチャンピオンシップ代表選出についてかなりバズってます。

 

 これに対して、竹内洋輔強化部長(43)は「選考基準はシーズンが始まる前に掲示して、年内の競技会で公平性を保ちながら全日本後に決める。世界ランキング、シーズンベスト、技術点など、すべて加味した上で選考した」と説明。厳然なる選考を行ったと強調したが、どこかすっきりとしない印象を残した。

 

 スッキリしない理由は、選考基準に、この文言「総合的に判断して」が入っているせいです。以下に、「2022-2023シーズン フィギュアスケート国際競技会 派遣選手選考基準」のリンクを張ります。

 

https://www.skatingjapan.or.jp/common/img/info/20220901_fs_senkokijun.pdf

 

 「総合的に判断して」が入っていたら、どんなに厳正に見える選考基準を作ったとしても、選考当事者の話し合いの段階で、どうなるかわからないのです。

 

 だから、全日本フィギュアの前に確定してる代表候補者は、シングル競技の全日本の優勝者だけなのです。

 

 2番手、3番手を決める3つの基準の優先順位を定めずに「総合的に判断して」を入れると、基準を多く満たした方なのか、一番傑出した1つの結果を出した方がいいのか、人の判断がどうしても入ってきます。

 

 昨年、アイスダンスの五輪代表でもめたのが、いい例です。昨年のアイスダンスの基準は、4つありました。そして、それらが相互に矛盾する可能性をはらんでいた。

 

A) 全日本選手権大会最上位組
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング最上位組
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング最上位組
D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコアの最上位組 

 

A)とC)やD)が違うペアだったら、どっちを優先するのかと基準が決まってなかった。

 

今回は、

A) 全日本選手権大会優勝組、2位、3位の組
B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング最上位組
C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコアの最上位組 

 

とりあえず、前の年のスコアが影響するワールドスタンディングを外し、A)に3位までを加えて、前年の矛盾をなくそうということですね。そして相変わらず、「総合的に判断」。

 

 

 「総合的に判断」という言葉の問題に気付かない方多いのかなと思います。これ、根深いんですよ・・・。

 

 聖徳太子の「17条の憲法」の第一条と第十七条

一・・・。然れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理おのずから通ず。何事か成らざらん。

 

 上の者も和やかに、下の者も睦まじく、物事を議論して内容を整えていけば、自然と物事の道理に適うようになるし、何事も成し遂げられるようになる。

 

十七に曰く、夫れ事独り断むべからず。必ず衆(もろもろ)とともに宜しく論(あげつら)ふべし。

 

 物事は独断で行ってはならない。必ず皆で適切に議論しなくてはならない。(とはいえ)些細な案件に関しては必ずしも皆で議論する必要は無いが、重大な案件については判断に過失・誤りが無いか疑い、慎重にならなくてはいけないので、皆で議論する必要があるし、そうしていれば(自ずと)道理に適った結論を得ることができる。

 

 最初と最後の条文で同じこと(物事は、話し合って決めなさい。そうすれば、なんでも上手くいく。)を言っているので、この事が一番重要なことだとわかりますよね。

 

 ここに書かれた条文は、長らく日本人の信仰対象でした。現実には、話し合ったからって、上手くいかない事って、山とあるじゃないですか?

 

 最近あまり言わなくなりましたが、「なぜ日本では不透明な談合がなくならないのか?」と私が若いころ、マスコミを賑わせたんです。談合が違法であることも公共事業の入札などが不公正だとアメリカなどに言われて「え?」となって、いろいろ改善されていったんです。

 

 日本人が作る契約書にも、最後に「問題が起こった時には、契約当事者の話し合いで決める。」のような一文が入っていることが多い。

 

 とにかく、何でも「話し合い(談合)」の文言を文書に入れておかないと日本人は落ち着けないんです。

 

 フィギュアの選考基準なんて、お金の直接的に絡まない場面でも、選考基準を明確化しないと気が済まない人々が出てきたようです。時代が変わったよなと思います。

 

 段々に、基準が紙に書かれたルール通りになっていくのかなと思います。