ロンドンの救貧院で暮らすオリバー・ツイストは食事のお代わりを要求したため、売られてしまう。売られた葬儀屋で、亡くなった母親の事で悪口を言われ喧嘩になり、地下室に閉じ込められるが窓から逃走する。
 たどり着いたのはロンドンの町。通りを歩いていると汚い子供(腕利きドジャー)に出会い、フェイギンという老人のところに連れていかれ、寝るところと食べ物を与えられるが、フェイギンは子供のスリの元締めだった。

 

 1968年のアカデミー賞作品賞。この年、『2001年宇宙の旅』があったんですが・・・。

 

 とりあえず豪華で素晴らしいミュージカルです。ミュージカルの全盛期の最後くらいの作品でしょうか。イギリスのミュージカル作品で、ハリウッドで作っているものとの違いがあります。音楽にジャズの要素がないし、傘を馬車の車輪とし見せるような小道具の“見立て”の要素があって面白いです。

 

 マーク・レスターは、大人の俳優になれなかった名子役の典型ですね。西洋の宗教画に出てくるような天使のような顔と上品な雰囲気。それが演技力による物だったならね。私が見た映画は『華氏451』『小さな恋のメロディ』とこの作品だけかな・・・。『華氏』なんか立ってるだけでしたものね。

 この映画では、終始一貫、天使。悪いことには一切手を染めてません。善を心に持つ周囲の人間はこの子を守りたくなる。悪役のビル・サイクスでさえもこの子を手放したら、身の破滅と思っている節がある。

 

 ドジャー役のジャック・ワイルドも『小さな恋のメロディ』に出てて、やんちゃな雰囲気が好きでした。ただ1952年生まれということは、この時16歳。とてもそんな年齢に見えないです。身長が164cmしかなく、ダンスも踊れたし演技力もあったと思うが、大人の役がやりにくかったようです。

 

 見せ場は、オリバーが金持ちの家に引き取られた翌朝の窓の外の物売りたちの歌とダンスのシーンかなと思います。町が大きなセットで作られていて豪華ですし、音楽も美しいです。

 

 クライマックスの、ビル・サイクスがナンシーを殺してオリバーを人質にして逃走し警察に追われるシーンは、ちょっと地味かな・・・。ディケンズの文学作品を意識した安っぽいサスペンスにならないようにした演出かなと思います。